第20話「辺境の花嫁と幸せの種」
あれから、数ヶ月の時が流れた。
魔狼の森は、リリアと住民たちの努力によって、以前にも増して美しく、豊かな土地となっていた。
独立した自治領として王国との交易も始まり、活気に満ち溢れている。
そして今日、その豊かな土地の中心で、カイルとリリアの結婚式が執り行われようとしていた。
集落中の人々が集まり、二人を祝福している。
会場は、リリアが咲かせた色とりどりの花々で埋め尽くされ、甘い香りに満ちていた。
ミントとバジルは、花びらを振りまきながら二人の周りを嬉しそうに飛び回っている。
純白のドレスに身を包んだリリアは、これまでで一番美しく輝いていた。
彼女の手を握るカイルも、いつもの無骨な表情ではなく、柔らかな、幸せに満ちた笑みを浮かべている。
ロウェンが神父役を務め、二人の前で誓いの言葉を述べる。
「汝、カイル・ファングクラウは、リリア・ヴァーミリオンを妻とし、健やかなる時も、病める時も、彼女を愛し、敬い、慈しむことを誓いますか」
「ああ、誓う」
カイルの即答に、会場から温かい笑いが起こる。
「汝、リリア・ヴァーミリオンは、カイル・ファングクラウを夫とし……」
「はい、誓います!」
ロウェンの言葉を遮るように、リリアは満面の笑みで答えた。
誓いの口づけを交わす二人を、割れんばかりの拍手と歓声が包み込んだ。
式の後、王都から一通の書状が届く。
差出人は、新たに国王として即位したユリウスからだった。
そこには、二人の結婚を祝う心からの言葉と、これからの両国の友好を願う言葉が綴られていた。
リリアは、その手紙を静かに受け取った。
過去は消えないが、未来は作っていける。
祝宴の席で、リリアはカイルの隣に寄り添い、幸せそうに微笑んだ。
「カイル」
「なんだ?」
「これから、もっともっと、この土地に幸せの種を蒔いていこうね。たくさんの花と、笑顔でいっぱいになるように」
その言葉に、カイルは愛おしそうにリリアの髪を撫でた。
「お前がいれば、ここはもう楽園だ」
悪役令嬢と呼ばれ、すべてを失って追放された少女。
しかし彼女は、最果ての辺境で、真実の愛と、かけがえのない居場所を見つけた。
彼女が蒔いた優しさと希望の種は、見事に花開き、多くの人々を幸せにしている。
リリア・ファングクラウの、新しい物語。
それは、幸せな笑顔と共に、今まさに始まろうとしていた。




