第18話「聖女の落日と真実の光」
「その穢れた力、私の聖なる光で浄化してくれるわ!」
セレーネは怒りに任せ、最大の魔力を込めた光の槍をリリアに向かって放った。
しかし、リリアは慌てない。
彼女の前には、ガーディアン・プラントが巨大な盾となって立ちはだかる。
光の槍はガーディアンに命中し、その体を一部焼き焦がしたが、ガーディアンはびくともしない。
それどころか、焦げた部分から新たな若葉が芽吹き、セレーネの光の魔力を養分とするかのように、さらに勢いを増していく。
「そ、そんな……ありえない!」
自分の力が通用しないことに、セレーネは愕然とする。
彼女の力は、元々他者から信仰心や生命力を少しずつ奪って作り上げた、偽りの光。
対してリリアの力は、大地と生命そのものから無限のエネルギーを引き出す、根源的な力。
その差は歴然だった。
リリアの植物たちは、再生を繰り返し、セレーネの魔力をじわじわと吸収し、彼女を消耗させていく。
「これで……終わりよ!」
追い詰められたセレーネは、残る全ての魔力を振り絞り、リリア自身に狙いを定めて最後の攻撃を放とうとした。
その刹那。
「そこまでだ、セレーネ・ホワイト!」
戦場に、凛とした声が響き渡った。
馬を駆り、王国軍と獣人族の間に割って入ってきたのは、王家の紋章を掲げたユリウス王子その人だった。
「ユリウス様!? なぜここに……」
「お前の罪を、白日の下に晒すためだ!」
ユリウスは、セレーネの目の前に一枚の羊皮紙を突きつけた。
それは、国王の署名が入った、正式な勅命書だった。
「聖女セレーネ・ホワイト! 貴様を、前侯爵令嬢リリア・ヴァーミリオンへの冤罪工作、教会への寄付金の不正流用、貴族派閥との癒着による国政介入の罪で、聖女の位を剥奪の上、拘束する!」
ユリウスが、集まった全ての兵士たちに聞こえるよう、朗々と彼女の罪状を読み上げる。
リリアに仕掛けた罠の数々。
彼女を追放するために流した偽の噂。
そのすべてが、決定的な証拠と共に公の場で暴露されたのだ。
「う、嘘よ……そんなの、全部嘘……!」
セレーネは必死に否定するが、もはや誰も彼女の言葉を信じない。
味方だと思っていた王国軍の兵士たちも、騙されていたと知り、冷たい視線を彼女に向ける。
ユリウスの登場と真実の暴露により、王国軍の士気は完全に崩壊した。
「武器を収めよ! この戦いは、王国の過ちである!」
ユリウスの命令に、兵士たちは次々と武器を地面に置いた。
偽りの聖女の、落日の瞬間だった。
すべての力を失い、真実を暴かれたセレーネは、その場に崩れ落ち、駆けつけた王子の側近たちによって静かに拘束された。
リリアの力は、セレーネの偽りの光を打ち砕く、真実の生命の輝きだったのだ。
戦いは、一滴の血も流れることなく、こうして終結を迎えた。




