第15話「王都の陰謀と動き出す脅威」
王都に戻ったセレーネは、絶望の淵にいた。
ユリウスの態度は完全に硬化し、彼女の過去の行いに対する本格的な調査が始まっていた。
自分の立場が危ういことを悟った彼女は、恐怖から狂気じみた行動に出る。
このまま断罪されるくらいなら、いっそ全てを道連れにしてやる。
セレーネは、まだ自分を「聖女」として信奉する貴族派閥を扇動し、国王に直訴した。
「辺境の獣人領主カイルは、邪悪な魔女リリアに唆され、王国への反逆を企てています! 彼らは危険な魔術で軍備を整え、この国を脅かそうとしているのです! 神聖なる王国を守るため、今こそ反逆者たちに鉄槌を!」
ユリウスは、調査の過程でセレーネがリリアに仕掛けた罠の数々、さらには過去の寄付金の横領など、様々な不正の証拠を掴みつつあった。
彼は国王に「辺境との対立はセレーネの虚言が原因であり、武力行使は避けるべきだ」と必死に訴える。
しかし、長年「聖女」として崇められてきたセレーネの言葉と、彼女を支持する貴族たちの圧力は、老いた国王の判断を鈍らせた。
結果、国王は苦渋の決断を下す。
「辺境領主カイル・ファングクラウを王国への反逆者とみなし、追討軍を派遣する」
非情な決定だった。
平和的解決を望んだユリウスの願いは、セレーネの最後の悪あがきによって打ち砕かれた。
その情報は、ロウェンが王都に張り巡らせた情報網を通じて、即座に魔狼の森にもたらされた。
「国王が、追討軍の派遣を決定した、だと……!?」
領主館に、カイルの怒りに満ちた声が響く。
ロウェンの報告を聞き、リリアは血の気が引くのを感じた。
「そん、な……。どうして……」
ようやく手に入れた穏やかな日々。
愛する人々と、愛する場所。
それを、王都の人間たちが、またしても理不尽な理由で奪いに来ようとしている。
平和な日常に、突如として戦争の冷たい足音が忍び寄ってきた。
集落の住民たちに動揺が広がる。
「戦になるのか?」
「王国の軍隊と、俺たちだけで戦うのか……?」
不安の声が上がる中、カイルは民の前に立ち、決然と言い放った。
「怯むな! 我々は何も間違ったことはしていない。理不尽な暴力で我々の土地と誇りを踏みにじろうというのなら、受けて立つまでだ!」
彼の言葉に、獣人たちの目に闘志の火が宿る。
「戦う準備をせよ! 我々の楽園は、我々の手で守る!」
カイルの力強い宣言が、森に響き渡った。
それは、魔狼の森の存亡をかけた、決戦の始まりを告げる鬨の声だった。




