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追放された悪役令嬢、辺境で植物魔法に目覚める。銀狼領主の溺愛と精霊の加護で幸せスローライフ!〜真の聖女は私でした〜  作者: 黒崎隼人


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第1話「追放の令嬢、辺境へ」

【登場人物紹介】


◆リリア・ヴァーミリオン

本作の主人公。現代日本からの転生者で元侯爵令嬢。聖女の策略で「悪役令嬢」の汚名を着せられ追放されるが、持ち前の明るさと植物を愛する心、そしてゲーム知識で逆境を乗り越えていく。触れた植物を癒やし、育てる不思議な力を持つ。


◆カイル・ファングクラウ

最果ての辺境「魔狼の森」を治める狼獣人の若き領主。銀髪に狼の耳と尻尾を持つ。寡黙で冷たい印象を与えるが、内には熱い情と深い愛情を秘めている。リリアの本質を見抜き、彼女の唯一無二の守り手となる。


◆セレーネ・ホワイト

表向きは万人に慈悲を注ぐ聖女。その実態は、強い野心と嫉妬心にまみれた策略家。リリアを陥れて王子と婚約者の地位を手に入れた。


◆ユリウス・レオンハート

この国の第一王子。セレーネの言葉を鵜呑みにし、リリアを追放するが、後に自らの過ちに気づき苦悩する。


◆ロウェン

カイルに絶対の忠誠を誓う副官。冷静沈着だが、リリアのことも温かく見守り、カイルとリリアの仲を応援している。


◆ミント&バジル

魔狼の森に棲む小さな植物の精霊。手のひらサイズの可愛らしい姿をしている。植物を心から愛するリリアに懐き、彼女の良き友であり協力者となる。

「リリア・ヴァーミリオン! 貴様との婚約を、本日をもって破棄する!」


 玉座の間を揺るがすような、かつての婚約者――ユリウス・レオンハート王子の声が響き渡る。


 彼の隣には、か弱げに寄り添う聖女セレーネ・ホワイト。


 その瞳の奥に、勝ち誇ったような光が宿っているのを、私は見逃さなかった。


「セレーネを虐げ、呪いをかけようとした悪女め! もはや貴様のような者は、王国の害悪でしかない! よって、貴様を王都から永久追放とする!」


 ああ、やっぱりこうなったか。


 周囲の貴族たちが向ける軽蔑と非難の視線を浴びながら、私は妙に冷静だった。


 ここは、前世で私が夢中になった乙女ゲーム『王宮のラピスラズリ』の世界。


 そして私は、ヒロインである聖女セレーネをいじめる、テンプレ通りの悪役令嬢リリア・ヴァーミリオン。


 ゲームでは、このイベントの後、悪役令嬢は修道院に送られるはずだった。


 けれど、現実のセレーネはゲームの彼女よりずっと巧妙で、陰湿だったらしい。


 私の罪状は「聖女への加害未遂」から「王国への害悪」にまで格上げされ、行き先は修道院よりもっと過酷な場所に変更された。


 護送用の、窓に鉄格子がはめられた馬車に揺られながら、私は兵士に告げられた行き先を反芻する。


「魔狼の森」


 それは、王国の北東の果て、魔物が闊歩し、人間を寄せ付けないと言われる広大な森。


 そこを根城にするのは、野蛮で好戦的と噂される獣人族。


 そんな場所に、貴族の令嬢がたった一人で放り込まれる。


 事実上の、死刑宣告だ。


 絶望、すべきなのだろう。


 けれど、馬車の揺れに合わせて私の頭に浮かんだのは、別の記憶だった。


(あれ? 魔狼の森って……)


 それは、前世で乙女ゲームと並行して遊んでいた、もう一つのゲーム。『フロンティア・ガーデナー ~辺境開拓シミュレーション~』。


 不毛の地を緑豊かな土地に変えていく、地味だけどやり込み要素の多いゲーム。


 その初期マップの一つに、確か「魔狼の森」があったはずだ。


 痩せた土地、少ない資源。


 だけど、固有のハーブや薬草、特定の条件下でしか育たない希少な作物が手に入る、玄人好みのマップ。


『よし、ここからスローライフを始めよう!』


 思わず口から飛び出した言葉に、向かいに座る護送の兵士が怪訝な顔を向けた。


 私は慌てて口をつぐむ。


 でも、心の中はもう決まっていた。


 悪役令嬢リリアとしての人生は、今日で終わり。


 これからは、ただのリリアとして、辺境の地で生きていく。


 花を育て、ハーブを摘み、自給自足の穏やかな毎日を。


 そう考えただけで、胸のつかえが少しだけ軽くなる気がした。


 何日も揺られた馬車が、ついに止まった。


 扉が開け放たれ、冷たく湿った空気が流れ込んでくる。


 目の前に広がっていたのは、どこまでも続く深い森と、その入り口に粗末な柵で囲われただけの小さな集落。


 ここが獣人族の村らしい。


 馬車から降り立つと、見張りの兵士たちの冷たい視線だけでなく、集落のあちこちから突き刺さるような警戒の眼差しを感じた。


 毛皮をまとった屈強な男たち。


 その頭には、ピンと立った狼の耳が見える。


「王命により、罪人リリア・ヴァーミリオンの身柄を引き渡す」


 護送兵の言葉に、集落の奥から一人の男がゆっくりと歩み出てきた。


 月光を溶かしたような銀の髪。


 鋭い金色の瞳。


 そして、髪の間から覗く銀色の狼の耳。


 他の者たちとは明らかに違う、圧倒的な存在感。


 彼が、この地の領主なのだろう。


 彼は私を一瞥すると、何の感情も浮かばない声で言った。


「……受け取った」


 こうして、私の辺境での新しい生活は、絶望と希望がないまぜになったまま、静かに幕を開けたのだった。

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