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引き寄せられる記憶
翔太郎は、中古車販売店でひと際目立つ一台のジムニーに目を奪われた。錆びついたボディや傷ついたバンパーもどこか懐かしい。その瞬間、幼少期に父と一緒にドライブした記憶が脳裏をかすめた。
翔太郎はジムニーの周りを一周し、じっくりと観察した。エンジンフードを開け、内部を確認すると、エンジンナンバーが目に入った。その番号に見覚えがある気がして、翔太郎は心がざわついた。子供の頃、父が手入れをしていたジムニーのエンジンナンバーと同じだったのだ。
「まさか、こんな偶然があるのか?」
翔太郎は驚きと共に、そのジムニーに強く引き寄せられた。販売店のオーナーに話を聞くと、このジムニーは何度もオーナーが変わり、長い旅をしてきた車だということがわかった。
翔太郎はその場で購入を決意した。自分の手でこのジムニーを再び動かし、思い出を取り戻そうと心に決めたのだ。