なんともいえない
僕は、日課となった散歩に出かけた。
月が変わって、一気に残暑が消えたようだ。
風が、涼しいと寒いの中間くらいの感じになった。
田んぼの稲は刈られているところと、これからのところがちらほらある。
依存気味になったスマホを、チラチラと眺めながら、田んぼ道を歩く。
しばらくして、やっとスマホをポケットにしまった。
今の季節ってなんとも言えない感じだな。
燃えるような、暑さと比べれば、確かに過ごしやすくはなった。
だけどなんとなく虚しいような、哀しいような。なんとも言えない感情が湧き上がってくる。
一歩一歩、足を進めていくごとに。
これといった特技、好きなもの、友達といえるもの。
何ひとつとして、パッとしない。
そう、今の季節のように。
田んぼ道を抜けると、住宅が立ち並んでいる。
その道を僕は今、歩いている。
家の前で遊ぶ子供とか、家に帰る子供たちとか、晩御飯の香りとか、生活感のある様子が伺える。
ここでもまた、羨ましいようななんとも言えないような。
僕は、今20歳だ。
この年も、僕にとっては、なんとも言えないものだ。
お酒とかも飲める年齢で、子供という制限が全てなくなった歳でもある。
だが、なんだろう、このやるせなさは。
僕はというと、年齢だけ20歳になっただけで、過去に囚われている状態だ。
子供を見ると、自分もあんなふうに、遊んで、汗を流して、みんなと一緒に喋りながら、家に帰るとか、
そんな人生を送りたかったものだ。
まあ、そうこう考えているうちに、あと少し歩けば、家に着くところに辿り着いた。
とりあえず、今日も、いつも通りでいようか、それができるだけでも、幸せなんだからな。
陽は落ち、夜の虫が鳴き始めた。
彼の心の虚しさを落ち着かせようとするかのように。