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第369話 鋭意準備中ですわよ!

 現代に於ける探索者達の能力と比較して、異世界産の魔物は脅威度が高すぎる。

 クリスが協会に対して説明したこの理由は、正直に言えば割とどうでもいい類のものである。

 

 一番の問題点はやはり、聖女と女神の存在だろう。

 彼女らの目的は未だ定かではないが、さりとてこれまで聖女が行ってきた数々の悪行を考えれば、よもや健全な企てであろうはずもない。そんな相手に管理されている転移門など、危険でなくてなんだというのか。この国の未来――――ひいては世界のためにも、破壊する以外の選択肢などあり得ない。


 といった旨の説明を長々と迂遠に、話せる部分だけを掻い摘んで説明したのが昨日のこと。

 そうして今、アーデルハイトはリスナー達に向けて配信を行っていた。内容はもちろん、今後のことについてである。

 

「というわけで、門の破壊許可が降りましてよ!」


:あ、やっぱり壊しちゃうんだ

:よく許可降りたなw

:それを壊すなんてとんでもない!

:いや実際、デメリットのほうが大きいって判断でしょ

:どっちの世界も知ってるアデ公が言うなら、まぁそうなんでしょうよ

:異世界産魔物云々の問題もあるって言ってたもんね


「繋がっている先はほぼ間違いなく聖女(ビッチ)の国ですわ。ならばリスクこそあれ、メリットなんて微塵もありませんわよ」

 

 仮に帝国や王国に通じる門であれば、国交を開く事も可能であったかもしれない。

 しかし勇者が出てきたことからも、繋がる先が教国であることは間違いなかった。


 教国の民は皆が、女神と聖女を崇拝する狂信者達――少なくともアーデルハイトから見れば――だ。

 頭が固く、融通は利かず、話もまともに通じない。布教と囲い込みにしか興味のない変人の集まり、それが教国である。話が通じないばかりか、邪神を崇め奉るような者たちを相手に、一体どうして国交など開けようか。つまりは門を残しておいたところで、こちら側の世界にとっては何の利点もないということだ。


 正式に破壊許可が降りたのはいいが、しかし問題はまだ残っていた。


:でも実際どうやって壊すの?

:そらノーブルキックよ

:クリスパンチ

:オルガンブルドーザー

:一人だけ技じゃなくて重機なの草


運営さん(オルヴィス)が言うには、ただあの門を破壊すればいい、というわけでもないそうですわ」


 大阪ダンジョン最深部で発見した件の転移門は、アーデルハイト達が知る()()とも少し異なるものであった。

 あちらの世界で一般的に転移門と呼ばれているものは、古代エルフが生み出した遺産――――要するに『魔導具』の一種である。故に門を破壊してしまえば、それで使えなくすることが出来る。そのため各国の転移門は厳重に管理され、ゲートキーパーなる門番が常に見張りを行っているのだ。


 一方、聖女が作り出したと思われる例の門。

 運営さん(オルヴィス)曰く、あれは神力によって生み出された『門』と、それを囲う『枠』で構成されているとのこと。

 枠はあくまでもただの枠であり、それ自体に大した意味はない。固定化された神力を『門』としてのテイで収めるための、謂わば装飾に過ぎず、『枠』を破壊したところで『門』はその場に残ってしまう。消滅させる為には、術者の方をどうにかする他ないらしい。


「つまりは聖女をぶちのめすため、一度はあちらの世界に赴かなくてはならない――――ということですわね」


 アーデルハイトにすれば、これは願ったり叶ったりの展開であると言える。

 もう関わるのは御免だと、既に積極的な復讐をするつもりは失せていたが、しかし理由があるなら話は別だ。

 これ以上の聖女による干渉は、如何に温厚(?)なアーデルハイトといえど我慢の限界。『こちらの世界でスローライフ』という目標を叶えるために必要な事であれば、喜んでボコボコにしてやろうではないか、と。


 となると、ここでもうひとつの問題が浮上する。

 

「聖女をボコるのは問題ありせんわ。ですが、今のままでは片道切符ですのよ」


:アデ公帰ってまうんか!?

:断固異議を申し立てます!

:ヤダの! いやあああああ!

:ちょとsYレならんしょこれは

:ていうかボコるのは決定事項なのかw

:バイオレンス令嬢で草

:当たり前だよなぁ?


 一度行けば戻ってこられない。

 そんなアーデルハイトの言葉に、コメント欄は阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。

 もちろん彼女にそんなつもりは毛頭ないが、早とちりは騎士団員のお家芸でもある。


 門を破壊するためには聖女をボコボコにしなけれならない。

 そのためにはもう一度、あちらの世界に向かわなければならない。

 そうして聖女を懲らしめることに成功したとして、しかしその際には当然、門は消滅してしまう。


 すっかりこちらの世界で余生を送るつもりでいるアーデルハイトにとって、これは由々しき問題であった。

 あちらの世界に行くのはいい。久しぶりに言葉を交わしたい相手も居る。だが今の生活を守るためにあちらの世界へ赴き、それで戻ってこれなくなっては本末転倒もいいところだ。


 故に、アーデルハイト達は対策を練った。

 もちろん対聖女戦などというどうでもよい方の話ではなく、帰路についての対策だ。


「もちろんそのあたりも、抜かりなく考えておりましてよ。聖女が作った門が使えなくなるのなら、別の門を作ってしまえばよいのですわ!」


:な、なんだってー!

:天才か?

:その手があったか!

:流石アデ公、かしこい

:ドヤ顔たすかる

:これもう煽りだろw


 先程まで悲嘆に暮れていたのはなんだったのか。

 隙を見つけた途端に団結し、すぐさま元気になる視聴者達。よくもまぁ訓練されたものである。


「なんだか無性に腹が立ちましたわ…………まぁそれはそれとして、ざっくり説明しますわよ」


 魔法的な理屈を説明したところで、視聴者に伝わるはずもない。故にアーデルハイトは言葉の通り、ひどく噛み砕いた説明を行った。

 転移門とは、つまり()()()()である。ふたつの世界に穴を穿ち、それを固定化する技術なのだ。


 では何故、それが聖女にしか出来ないことなのか。

 あちらの世界の魔法は既に技術として確立されており、ある種固定観念のようなものが存在してしまっている。『こうしなければ発動しない』或いは『こんなものは飛躍しすぎていて実現不可能だ』などといった具合に。これは魔法に限らず、また異世界・現代に関わらず、様々な既存技術に同じ事が言えるだろう。そうした固定観念からの脱却と逸脱、発想を飛躍させることは恐ろしく難易度の高い偉業だ。それを成し得たのは今も昔も、ほんの一握りの天才のみである。


 オルガンやシーリアほどの魔法的天才であれば、或いはあと数年、数十年もすればたどり着くのかもしれない。

 事実、彼女らの魔法技術は他と比べても数段先を行っている。

 

 だが今、この時に限って言えば――――この『逸脱』という偉業は、女神リーヴィスの力によってのみ成し得るものであった。

 つまりはそれこそが、聖女にのみ異世界転移を扱える、その最たる理由である。

 

 加えて前述の通り、トンネルというものは当然、片側から掘り進めたのでは時間も労力もかかってしまう。

 その労力とは努力や才能で簡単に埋められるようなものではない。世界を創造する女神の力があればこそ、聖女はそれを成せたのだ。


 これらをまとめると、こういうことになる。

 ふたつの世界に穴を開けるという馬鹿げた『イメージ』と、両方向から掘り進めるための『技術者』。

 このふたつを用意することが出来れば、『門』を作り出すことも不可能ではないということ。


「と、まぁ簡単に言えばそういうことですわ。賢い皆さんのことですから、ここまで言えばもうなんとなく予想はつきますわよね?」


 つまりは――――。


「出番ですわよ、ミギー!」


 アーデルハイトの言葉と共に、カメラがぐるりと真横に()()する。

 そこには無数のゲーミング木魚に囲まれ、あぐらをかいた状態で瞑想にふける(みぎわ)の姿があった。随分とわざとらしい、如何にも『修行中ですよ』といった風である。そんな彼女の頭の上では何故か肉がすやすやと眠っており、時折痙攣しながら足をしゃかしゃかと振っていた。


「というわけで――――世界初の『転移魔法』、ただいま鋭意準備中ですわよ!」


 そう言って破壊力抜群のウインクをひとつ、カメラに向けて送るアーデルハイト。

 なおこれは余談だが、もうひとりの『技術者』――――シーリアにはまだ、何も伝えてはいなかった。


というわけで、本年最後の更新となります!

最終話に向け来年もがんばって参りますので、これからも何卒よろしくお願いいたします!

 

それでは皆様、良いお年を!

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最後まで読んで頂き、ありがとうございます!

書籍情報です!

カドカワBOOKS様の作品紹介ページ

こちらはAmazon様の商品ページです
剣聖悪役令嬢、異世界から追放される 勇者や聖女より皆様のほうが、わたくしの強さをわかっていますわね!

― 新着の感想 ―
事後承諾の極みぃ!
今年ラスト更新お疲れ様です。 >転移魔法、鋭意製作中! なるほど完璧な作戦ッスねぇーーー、技術者に話を通してないというポカに目を瞑ればよォーーー(某スタンド使い並感 それでは今日はこの辺りで失礼致…
まさかの1.ミギーのお仲間(重度のオタク)召喚でなく、2.修行します捜さない(どこにも行ってない)で下さい、だった〜www
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