第174話 その頃地上では
諸事情により、今回は死ぬほど短いです。
詳しくはあとがきへ続きますので、是非ご一読頂ければと思います。
二組の救出部隊がダンジョン内で活動している頃。
地上で居残りをしていた汀とオルガンの二人が、机の上に顎を乗せて暇そうにしていた。
「そういえば……ミーちゃんの魔法で、木魚作れないんスか?」
「んー……」
「ありゃ?なんか駄目そう」
スペアの木魚を謎の護身用具へと魔改造したオルガンのことだ。ノーマルの木魚を作るくらいは簡単にやってのけるのではないか。汀はそう思っていたのだ。しかし、思いの外芳しくないオルガンの反応に、汀が怪訝そうな顔を向ける。
「錬金魔法は万能ではない。造形や特性等、その大部分は使い手によるところが大きい。形そのものに意味があるものは特に。『護身用魔導人形ちゃん』は私の専門分野である魔導具作りだからいい。けど───」
「楽器は専門外、と」
「そゆこと」
オルガンがその構造や原理を詳しく知っているものならばいい。或いは、装備や装飾品のように彼女が一から造形を行うものならば。だが木魚はそうではない。きちんと音が出るように作るには、しっかりと形を知り尽くしていなければならない。故に楽器はもちろんのこと、仏具などまるで知らないオルガンには、木魚のような形をした何かは作れても、木魚としてきちんと音が鳴るものは作れない。オルガンの言葉を要約すれば、つまりはこういうことだ。デザインそのものに意味があるもの、つまり楽器はその最たるものであった。
「はーん……魔法にもいろいろ制約があるんスねぇ」
「いろいろある」
「あれ、じゃあ回復薬とかはどうなんスか?」
「材料や込める魔力によって色と濃度が決まる。造形の必要はない」
「ははぁん……」
理解ったのか理解っていないのか。
なんとも気の抜けるような返事を返す汀。木魚を神戸に忘れてしまい無能の烙印を押されてからこちら、彼女はすっかり意気消沈してしまっていた。現在は人命救助という部分もあり、配信も行っていない。故に、機材担当の汀には出来ることがないのだ。
そしてそれはオルガンも同じである。
彼女の場合は、配信を行っていたとしても基本的にやることがない。汀の補助という役目を仰せつかってはいるものの、彼女の本職は魔導具作りなのだから。
そうして暇な二人はだらだらと駄弁り続ける。二人はアーデルハイトとクリスの実力も、ウーヴェやレベッカの実力も知っている。彼等彼女等であれば、対象が生存さえしていれば間違いなく連れて返ってくるだろう。そう確信しているからこそ、こと救助活動に関しては一切の心配をしていないのだ。
汀とオルガンの周囲では、いまなお職員たちが慌ただしく駆け回っている。居合わせた探索者達も、どこか緊迫した空気を醸し出しながら待機し続けている。そんな中にあって、二人の姿はひどく場違いに感じられる程であった。
「……暇っスね」
「ひま」
ダンジョン内に潜った彼等が、既に散り散りになっていることなど知らず。
仕事のない二人は、ただのんびりと救助隊の帰還を待ち続けていた。
というわけでですね…
この話が投稿されている時には既にご存知の方もおられるかもしれませんね。
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