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第145話 歳はいくつですの?(雑談枠)

『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!』

『アーッ!!』

『んぁぁぁー!!』

『っしゃああああああああ』

『声可愛い!!!ぶひぃ!』

『どういう……どういう!?』

『マジでマジなんか!?信じて良いのか!?』

『ガチ耳!?作り物とかじゃなくて!?』

『生きてて良かった……いやマジで』

『とんでもねぇ爆弾持ってきたわ。さすアデ』


 アーデルハイトが前かがみになり、カメラの隣に設置されたコメント閲覧用のノートPCを覗き込む。尋常ではない速度で流れる大量のコメント達は、その一つ一つが殆ど意味を為さない、もはや魂の叫びのようなものばかりであった。


「大袈裟ですわねー……」


「くるしゅうない」


 確かに、初めてオルガンを見た時の(みぎわ)月姫(かぐや)、レベッカも似たような反応ではあった。だが異世界出身のアーデルハイトにしてみれば、エルフとはそこまで珍しい存在ではない。基本的には森の奥深くでひっそりと暮らす彼らだが、何も人間の生活領域にまったく姿を見せない訳ではないのだ。

 それどころか、エルフの住まう森の近くでは交易すら行われていたりする。珍しいといえば珍しいが、滅多に見ないというほどでもない。人間の街へとエルフが買い出しにやって来ることも無くはない為、地球人が想像しているほど神秘的な存在ではないのだ。


 一口にエルフ種といっても、その種族はいくつかに分かれている。そもそもエルフとは、乱暴な言い方をすれば人間と妖精の中間にあたる存在、或いは妖精そのものだと言われている。より自然に近しいほどエルフ種としての力が強く、魔力との親和性も高いとされている。地球的な呼び方をするのであれば、ハイエルフ等がそれにあたる。また、ウッドエルフやダークエルフなどと呼ばれる種族も存在するが、得意分野が少々異なるだけで、基本的には普通のエルフ種とそう変わりはない。


 彼ら彼女らの生態は、こちらの世界でのイメージ通りで概ね間違いない。森を愛し、森に生きる。弓や魔法が得意であり、長寿で美しい容姿を持つ。これらは全エルフ種に共通して言えることであり、まさにこちらの世界の者達が求めていた通りの種族といえるだろう。


 そんなエルフという種族の中でも、オルガンは特別な存在だった。彼女は妖精というよりも、もはや精霊に近い存在だと言われている。精霊とはすなわち自然そのもの。故に魔力への適性は他のエルフの比ではなく、寿命も永遠に近いとさえ言われている。肉体年齢は彼女の天才的頭脳にとっての全盛期で固定され、それ以降変化することは無かった。


 これだけであったならば、チートの塊とも言えるアーデルハイトよりも強いのではないか、などという風に聞こえるかも知れない。だが残念なことに、オルガンには決定的かつ致命的な弱点があった。


 それが身体能力である。

 エルフの頭脳、その全盛期は早い。なにしろ長命な種族だ。幼少期には既に脳が成熟しており、それ以降は永きに渡って全盛期を維持することが出来る。人間の脳の全盛期は30歳前後などといわれているが、たかが30年など、長命なエルフにとってはまだまだ幼少期といってもいい。そんな全盛期の脳に合わせて肉体年齢が固定された結果が、今のオルガンのロリ姿だ。


 要するに、幼少期のままで身体の成長が止まってしまった為、身体能力が低いのだ。


 これはエルフ全般に共通する事象ではなく、オルガンにのみ見られる特徴だ。通常のエルフ種であれば肉体年齢が固定されるといったことはなく、速度こそ緩やかなものの、ちゃんと大人の姿へと成長してゆく。これは彼女が精霊に近い存在だからなのか、或いはただの突然変異なのか、それはオルガン自身にも分からない。確実に言えることがあるとするならば、この現象はオルガンにとっての幸運だったということだけだ。


 こうして『身体は子供、頭脳は大人』なスーパーエルフが誕生した。その天才的な頭脳は如何なく発揮され、運動音痴という欠点を抱えてなお、『六聖』に名を連ねることとなったのだ。


 これがオルガンという少女の、大まかな概要である。


「ちなみにあなた、歳はいくつですの?」


「169歳になる。エルフとしてはまだまだ若輩」


「だそうですわよ」


 当然ながら、彼女は見た目通りの年齢ではない。

 勿論その言葉の真偽など、視聴者達には確かめる術がない。だがそれが嘘か真かなど、そんなことは彼らにとってあまりに些細なことだった。


『合法ロリ!!合法ロリですぞ!!』

『ロリババァ!ロリババァじゃないか!!』

『ロリババァ……完成していたのね……!』

『勝訴』

『我が方の大勝利である!!』

『感動したッ!!』

『流石に設定だろ』

『お、新参か?異世界へようこそ』

『俺達も最初は設定設定言ってたよね……』

『もはや懐かしいまである』


 そんな狂喜乱舞する視聴者達をじっとりと見つめつつ、コメントの中からアーデルハイトが一つの質問を抜き出した。


『何処で拾ってきたんですか??』


 そう、まだ肝心の部分が残っていた。

 異世界方面軍の新メンバーとして紹介されたまではいい。疑う者も当然居るが、それは今までと何も変わらない。信じる信じないは受け手の自由。それが異世界方面軍の基本スタンスなのだから。

 だがしかし、異世界設定を受け入れている団員達からしても今回の件は不可解だった。当たり前の話だが、ここは異世界ではない。モノ作りに特化したエルフが、都合よくそこらに転がっている筈はないのだ。ましてやそれがアーデルハイトと同じ『六聖』ともなれば、ここに至るまでの経緯が気になるのも当然といえるだろう。


 そんな視聴者達の疑問に対するアーデルハイトの答えは、酷く簡潔なものだった。


「話せば長くなるのですけれど……空から降ってきましたの。全裸で」


『!?』

『そんなわけないだろ!いい加減にしろ!!』

『親方!空から女の子が!!』

『空から全裸の親方が!?』

『誰が得するんだよそれw』

『ぜ、ぜぜぜぜ全裸ですかい!?』

『山賊の下っ端みたいな口調になってて草』

『どこから突っ込めばいい……教えてくれ団長』


「仕方がないので、一度海に叩き落としてから回収しましたわ。以上!」


『成程、わからん』

『意味分からんし長くもねぇw』

『マジで一ミリも理解できなくて草生い茂る』

『マジかよちょっと海行ってくる』

『何処の海に行けばロリエルフが降ってくるんですか』

『海、全裸、親方……そうか!わかったぞ!!』

『通報した』

『おまわりさんこっちです』

『親方は言ってねぇんだよw』


 エルフ登場による歓喜と、そしてアーデルハイトの意味不明な説明の所為か、訓練されている筈の団員達も困惑を隠せないでいる。だがそんな彼らを差し置いて、アーデルハイトは話を先に進めてゆく。今回はただの雑談枠であり、長時間配信の予定はないからだ。時間が押したところで別段問題は無かったが、しかし一々彼らの疑問に付き合っていては何時まで経っても終わらないのだ。


「というわけで、今後は彼女も配信に参加しますわ。ダンジョン配信に同行するかは───オルガン、あなたダンジョンに潜るつもりはありますの?」


「やだ」


「……というわけで、今後彼女はミギーと共に後方支援を担当しますわ。雑談枠や単発動画には出演させますので、今後は彼女のことも応援してあげてくださいな」


「よろ」


 相変わらずの棒立ちで、カメラへと向かって挨拶をするオルガン。やる気があるのか無いのか。しかしその抑揚のない平坦な声色は、一部の視聴者達のハートを鷲掴みにしていた。おかげで配信後の異世界方面軍スレが大変な賑わいを見せるのだが、それはまた別の話である。


 その後、アーデルハイトが細々とした質問にいくつか答えて配信は終わりを迎えた。グッズの再販情報に加え、二人の異世界人の紹介。三つの重要情報を引っ提げて行われた今回の配信は、現在急上昇中の人気と併せ、過去最大の同接数を記録した。


 特にオルガンが登場した際の最大瞬間風速は凄まじく、その数は15万に迫るものだったという。配信を始めた当初からは想像も出来ないような、異世界方面軍にとってはまさに未曾有の結果となった。


ロリババァっていいですよね

合法ロリやのじゃロリなど様々な派生がありますが、私は全部好きです


ちなみに滅茶苦茶どうでもいい話なんですが

実はオルガンの真名はシンダール語を少しもじったモノになっております。

長いので作中ではそうそう呼ばれることはないでしょうが……

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最後まで読んで頂き、ありがとうございます!

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[一言] 魔物改造なんてトチ狂った思考を持つ女だ。地球でもなにをしでかすか不安で仕方ない 飲めば動物の言葉がわかるとか、動物が言葉を喋るとかそんな薬を作ったりしないだろうな。ジジババの腰がシャッキリす…
[一言] トールキン先生語か 全く予想できないぜ!(すっとぼけ
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