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6.2度目の初登校.T

今日はみやびさんの人生2度目の登校初日、なぜか俺が緊張してきた。


考えてみれば突然義理の妹が出てきて同じ学校に転入してくるのだから相当なレアケースと言える。

みやびさんは2度目の高校生活になるのか、性別は変わってるけど、まだ1年の6月が始まったばかりだし上手く馴染めると良いな。

そんな事を考えながら階段を降りてリビングへ行くとすでに朝ごはんの準備がされていた。


「あ、おはよう、もう準備出来てるからすぐにお味噌汁とご飯出すね」

「おはようございます、今日はいつもより早いですね」

「うん、緊張してか少し早起きしてしまってね、今日から朝の準備でする事も増えたから丁度良かった」


みやびさんは既に夏服のセーラー服を着ており身支度も終わっているようだった、これは相当早く起きたんじゃないだろうか。


「いただきます」

「君はいつも美味しそうに食べてくれて気持ちが良いね」


そんな事を言ってくる、いやいや、みやびさんの作るご飯が美味しいからなんですよこれは、少し恥ずかしい。


「いや、それは、みやびさんの作るご飯が美味しいからですよ」

「ふふ、そうなんだね、それは良かった、私も作り甲斐があって嬉しいよ」


その後の朝支度を済ませ出掛けるだけの状態までになって、やっとみやびさんをじっくりと見る事が出来た。

白い薄手のセーラー服に金髪というのが異様なまでに似合っている、顔なんかは言わずもがなで美少女な訳だし、なんか清楚で儚げでキラキラしてる気さえする、これは…俺が守らないと!と謎の使命感に燃えてきた、元おじさんでも今はか弱そうな女の子なんだ。


「みやびさん、一緒に登校しましょう」

「そうだね、元よりそのつもりだけど、誘ってくれるなんて嬉しいなあ」


くぅー、ドキドキする、その笑顔が眩しすぎる、中身はおじさんなのに!おじさんなのに!言動を見る限りは前と何も変わっていないというのに、従兄弟の若い子が構ってくれるという程度の認識なんだろうけど、儚げ美少女の言動としてハマりすぎている!


「じゃあ行こうか」

「はい、行きましょう」


そう言って2人で家を出た。

そこではたと気付く、そういえばお弁当作ってくれるって言ってたけど……忘れちゃったのかな?

しょうがない、今日は普段やり慣れない事が多くて忙しかっただろうし、ちょっと残念だけどしょうがない、楽しみだったけどしょうがない……うん。

かといってお弁当を催促するような俺ではない。いつもお世話になってるんだから、こちらが気を使わなければ。


学校が家から近いという事もあり、電車やバスなどの公共交通機関を使わず歩きで15分程度で学校に着く。

みやびさんは結構な注目を浴びている気がする、そりゃそうだ金髪儚げ美少女だぞ、俺だって見る。

隣を歩いている俺はなんだかドヤ顔をしてしまう。


「いやあ、緊張してきたよ、私にとっては2度目の高校生活だけどね、ちゃんとテストなんかも受けて合格をもらってるとはいえ、ついていけるかというのと、馴染めるか不安でね」

「あ、一応入学テストはあったんですね、でも受かったんなら大丈夫じゃないですか、それにまだ1年生始まったばかりだし友達作りだって大丈夫ですよ」

「ありがとう、それでね、勉強でも人付き合いでも、危なかったら助けてくれるかい?」

「いいですよ、喜んで」

「ふふ」


自慢じゃないが5月の中間テストでは学年一桁だったのだ、教えるくらいは出来るんじゃないかな?それに人付き合いは変なやつに絡まれないようにある程度見張るくらいは出来るさ。


―――


みやびさんと一緒に職員室まで行き、担任の先生に話をしたらHRで紹介するから先に教室に行きなさいと言われた。

話を聞く限りどうやら先生もみやびさんがTS病という事は知らないみたいだ、という事はTS病を知ってるのは親族関係者と病院絡みだけなのかな。


先生が教室に入ってきて直ぐに転入生がいるので紹介すると話し始めた。

みやびさんが教室のドアを開けて入ってくるとクラスのみんなが一斉にざわつき始めた。

先生が静かにさせて、みやびさんに自己紹介させる。


光野こうの みやびです、敏夫君の義理の妹になります。こんな時期の転入になりますがよろしくお願いします」


またしてもざわつき、可愛い、美人、敏夫の妹?という声が聞こえてくる、まあそういう感想になるよな、分かる。


「はい!趣味はなんですか?」

「えーとそうだね…料理…かな…」


先生はそこまで!と区切ってくれて助かった、あのまま放おっておいたら質問攻めになりそうだった。


みやびさんは俺の後ろの席に座る事に。

みやびさんは背筋を張ることを覚え、以前のような猫背気味になる事は無くなった、そのため丁寧で穏やかな雰囲気を纏った美少女そのもので、何処かお嬢様然としている。

そんなみやびさんが席の間を通り抜けていくのは少し近寄りがたい雰囲気を放っており、誰からも話しかけられなかった。

俺とは目で挨拶をして、そのまま席に座った。


休憩時間になったので後ろに振り向き、声を掛けようと思ったらみやびさんに女子達が声を掛けてきた。


「光野さん!今話とか大丈夫?」

「う、うん、大丈夫だけど…」

「すっごく綺麗だよね!もしかしてアイドルとかやってたりする?」

「、そういうのはやってないかな、全く興味も無いから…」


そんなやり取りが交わされている間に女子達に完全に囲まれてしまい、声をかけづらくなってしまった。

まあ女子なら大丈夫だろうという事で男友達の所へと向かう。


「敏夫~、光野さんお前の義理の妹なんだって~?紹介してくれよ~」


これは友達その1、前出まえで 智行ともゆき


「光野さんとどういう関係なんだよ、教えろよ」


こっちは友達その2、大鷹おおたか 哲平てっぺい


「いやいや、義理の妹だって、特に何かある訳じゃないからな、それと紹介については期待するな」


なんとなく智行や哲平に紹介したくない気分になっていた、なんとなく。


「なんでだよ~、妹なんだろ~、いいじゃんか紹介ぐらい」

「俺だってまだみやびさんと会ってそんなに経ってないんだから無理だ」

「何お前~妹なのに"みやびさん"呼びなの?」

「ちょっと考えてみろ、知り合って直ぐに同い年の義理の兄妹だって言われていきなり呼び捨てやちゃん付けできるか?」

「……うーん、確かに無理だな、それに光野さんくらい美人だとさらに難易度高い気がする」

「だろ」


嘘だ、本当は従兄弟で年上のおじさんだから"さん"付けなんだけど、それは言えないので適当にそれっぽい理由を付けて誤魔化した。みやびさんも俺の事を"敏夫君"と呼んでくれるから丁度良い。


「いや~俺ならするね、"ちゃん"付けで」

「智行お前そういう奴だったのか、義妹を"ちゃん"付け、て、流石にキモすぎないか」

「ひでえな~、義妹だからこそ"ちゃん"付けなんだろ~?でもあんだけ可愛けりゃ甘くしたくもなるだろ」

「実際頭1つどころか2つ以上は抜けて可愛いし美人だよな、敏夫が羨ましいよ」

「マジでそれな~」

「……そうだな」


あんまり乗っかりたくない気分なんだけどこの感情は一体なんなんだろう。


そんなこんなで休憩時間が終わり、心なしかぐったりしているみやびさんをチラ見しつつ、大丈夫?と声を掛けたら、うん、なんとか…と帰ってきた、一日もつかな?と思いながら授業に戻った。


次の休憩時間は直ぐに声を掛け、トイレや購買、体育館などの場所を案内した。

そういえばトイレは病院にいた頃から普通に女子トイレでしていたのである程度は慣れているらしい。

普通の女子の扱いで高校に入った訳だし、着替えも女子と同じだしそりゃそうなるか。

着替えは流石に慣れてないからできるだけ他の女子を見ないようにはするけどね、と言っていた。


以前なら羨ましいと思ったかも知れないけど、今なら見たいのは他の女子より……と思ってしまう自分がいる。出来るだけ顔には出さないようにした。

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