うつけ
俺は生粋のうつけなんだ。生まれる前からそうだから、もうこれは変えられない。運命のようなものだ。
俺は、いたずら好きでよく家族を困らせた。叱る家族を見て楽しんで、そんな俺をみんな呆れて見ていた。でも、家の中はいつも暖かくて幸せな雰囲気に溢れていた。その中でイタズラをするのはまるで、パーティ会場でダンスをするように楽しかった。
俺はいつも笑って過ごしていた。
一昔前は、俺にとって暖かい家はない世界だった。俺が踊っても人々の冷たい目線が身体をまとわりつくだけだった。ああ、叱ってくれる人がいるというのはなんて幸せな世界の話だったんだろうって、一人泣いた。
そのあとは、俺よりひどい人たちが多くなって、俺をうつけだって言う人もいなくなった。俺がまともなように見えるなんてイカれてる。思わず笑っても、相変わらず冷たい風がずっと吹いていて、悲しくなる。涙は出なかった。