27 外に出たけど·····何これ?
「外の空気は美味いなぁァァァ!!」
実に数ヶ月ぶりの外気に触れた俺は有頂天になっていた。
肌と衣服の間に吹き込む風が気持ちいい····。
太陽の柔らかな日差しもいつぶりか·····。
·····2、3度大きな深呼吸をして、肺の空気を取り替える。
深呼吸を終えて、ふと下を見ると─────
神社の境内らしき場所に、大勢の人が俺の顔を見ていた。
おわァァ!?!?
めっちゃ人いるんですけど!?
もしかして俺の独り言全部聞こえてた!?聞こえたよね!?
恥っず·····。
ってかどういう状況なの?·····これ?
なんでこんなに人集まってんの?
とりあえず1歩前に出る·····
今俺が立っているのは、厳かな祭壇の様で、境内一帯が全て見渡せる。
『なんでこんな妙な空気になってんの?·····怖すぎィ·····』
困惑した俺が、白けた空気に包まれる境内をぐるりと見渡していると、1人の男が祭壇に近づいてきた。
「で····君が協力者って事でいいのかな〜」
男は獣人だった·····
うおおぉっ!?猫耳だ!!
すげぇぇー!
す、す·····
「素晴らしい!」
「!?」
ズイっと近寄って、男の頭についている猫耳をモフる。
この手触り、モフモフ感!
素晴らしい!
いいな〜俺も獣人になりたーい!
····おろ?
耳をモフられた男が素早い身のこなしで俺から離れる。
どうやら警戒されているようだ。
まぁ猫だからな。
警戒心が強いんだろう。
「大丈夫だよー、そんな警戒しなくてもー···」
よしよし·····。
引っ掻かれたら大変だからね、ちゃんとご機嫌を取らないと。
獣人の男が、何故かこちらを睨んでくる。
あれ?
なんかめっちゃ睨まれてるけど·····。
あ、あれですか?
もしかして耳触るのってあんま良くなかったんですか?
「君はなんなんだ?」
「え?」
なんなんだい?
なんなんだい?って言われてもねぇ·····。
あ、そういえば、俺まだ名前無いんだった。
なんかいい名前ないかなぁ·····。
頭を振り絞って自分の名前を考えるが、大勢の人に見られてるせいか、いい名前が思いつかない。
「いやー····ていうか何でこんなに人集まってんの?」
「あ〜それは「私が話します」」
何とか狼狽を収めたらしい猫耳男に割り込んで、水色の髪をした少女が祭壇に上がってきた。
数分後─────·····
ズズズ·····と、音を立てて熱いお茶を呑む。
美味い····こりゃ玉露だぜ。
あとこの茶菓子も美味い····。
トレーの皿に乗せられたカステラの様な茶菓子を摘んで口に放る。
うん、美味い。
まんまカステラだ。
「お口に合いましたかな····?」
「はい、美味しくいただきました····」
話しかけてきたこの社の住職らしきおじいさんに手を合わせて感謝の意を表する。
美味い茶菓子を、ありがとう。
手を合わせたついでにもう一個摘む。
うん、美味い。
さて、なんで俺がこんな茶菓s·····接待を受けているのか説明しよう·····。
ここは、〝テルシ王国〟の西部に位置する由緒正しい神社、《椛》·····。
余談だが···この世界の神社は役割が特殊で、神や仏を祀る場所というより、結界魔法の修行場の面が強いそうだ。
そんな所に何故沢山の人が集まってたのかというと、どうやら俺のせいらしい·····。
つい最近、国の予知者が神のお告げを受けたらしく、内容は
《そろそろ魔王みたいなの来るから、神様として助っ人用意するね。
西の方の社に呼び出すからねー。》
····だそうだ。
まぁこれは俺の脳内翻訳で、実際のお告げはもっと厳かなものだったらしい····知らんけど。
とにかく、その〝協力者〟っていうのがどうも俺の様だ。
おじいさんに聞こえぬようにギリギリと歯ぎしりをする。
『ハゲ坊主めェェエッ!!』