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26 会場に放り出された男


「あ〜暇だ〜·····」


ハゲ坊主が去ってからはや3日、暇すぎて死にそうだ。


開通させるか?

·····いや、まだだ、まだその時ではない···。

でもやっぱり·····。


幾度となく開かれては先送りとなってきた脳内会議を再び開くが、どうやら今回も結論は保留の様だ。


ケッ、これだから上層部は·····。



もらったスキルは使ってみたが、なかなかに面白いものだった。


口からビームは洞窟の床をかなり抉ったし、特殊衝撃波で床を殴ったら周りにヒビが入った···。


あれだ、万葉千柳だ。



玉座に座ったまま、右手で空中を叩く


「グラララララ!」


ドォン という音と共に空間がひび割れる···。


ふへへっ、エフェクトかっけぇぇー!

これは嬉しい。


同時に雷出すやつも起動させれば·····ほらカッコイイ。

体の表面を小さな雷が駆け巡る····青と黄色の色彩がなんとも言えない神作画を思わせている。


ふ〜、こんぐらいでいいか·····。

あれ?髪の毛が逆だったまんまだぞ?


バリバリに立った髪の毛をほぐして撫で付ける。


しかし我ながら綺麗な銀髪だな〜·····。

顔もイケメンだし、こりゃ勝ち組確定ですな。

人生イージーモードだぜ☆!


「うげぇっ!?」


その時、頭に何か重い物ががぶつかってきた·····。


なんだこれ?


四角い木の箱が、玉座の横に落ちている。

そこそこデカい···大体加湿器位だ。


慎重に蓋を外すと、小さめサイズのダンジョンコアに似た発光体が入っていた。

底の方には何やら手紙のような物がへばりついている。


=====

君へ...


長く洞窟に閉じ込められて随分とストレスが溜まっている事と思う。

まぁ人をハゲ呼ばわりしたからには当然の報いだと思われるが、僕は鬼じゃない、神だ。


然るに、今回は助けるのも一興と思うことにする。


そのエネルギーコアは簡易的な転移陣になっていて、魔力を注ぐと地上に出る事が出来るようになっている。


ただし、何事にも代償というものがある···。

君を地上に解放する代わりに、一つだけ僕の〝お願い〟を聞いてもらうことにした。

·····悪い事にはならない筈だ。


では、君が楽しい異世界ライフを満喫出来ますように·····。



君の親愛なるハゲ坊主より


======



手紙はここで途切れている·····。


それにしても、地上への転移·····。



「よっしゃぁぁぁッッ!!」


手に取ったコアに、魔力を流し込む。

コアから紫のゲートが現れて、膨らんでいく。


周囲の空間が引き込まれる感覚を覚えながら、俺は迷いなく、紫に充ちた空間に助走をつけて飛び込んだ─────









△△△



山深い趣ある社の一角·····


平時なら静かで落ち着いているであろう広場が、今は人の頭で溢れている─────



「それにしても、人多いね〜」


頭のてっぺんに付いた猫耳をぴょこぴょこさせながら、黒髪の獣人の男が人混みの中で呟く。


「ギルド長、人混み嫌いですもんねー」


少し前に配られていたのか、すっかり冷めてぬるくなった水が入った紙コップを片手に持った少女が男に返答する。


「なんせ〝協力者〟の出現ですからなぁ····一目見たいのが皆の心ですよ」


「あ、辺境伯来てたんですね!」


口を挟んだ恰幅のいい男に、知り合いだったのか、少女が反応する。


旧友の仲を温めている辺境伯と少女を置いて、黒髪の獣人───ライルは、いつになく鋭い目で祭壇を見つめていた。


《 新月の翌日·····世界の均衡を保つ〝協力者〟が西の社に現れるであろう····· 》


お告げ通りの場所にはダンジョンコアに似た物体が浮かんでいた以上、神のお告げは本当なのだろう。


近年、世界のバランスがぐらついてきたのは、腕に覚えのある者なら皆感じていた·····。


恐らく、そう遠くない内に、何かが〝来る〟····強大で邪なる何か、が。

世界を混沌に堕とす魔王か、はたまた全てを滅ぼす邪龍王か·····。


立場上、自分が討伐隊に加わる可能性は高い。

パーティーを組む可能性のある者は確認せねばなるまい。



風が、捻じれた─────


今や、集まった人々は皆、祭壇の上にある物体に注目していた。


紫に光ったその物体は、小さな星空の様な空間を創り出していた。


竜巻の様に空気を放出しながら、空間が膨張して捻れる·····


「フフフ·····」


眩い銀髪がうねる風に靡いた·····


「ハハハハハハハッッ!!」


パキリと音を立てて、発光体が砕けた。

·····が、誰も見ていなかった。


今や皆の注意は祭壇に立ち高笑う男に注がれていた。

男の様子を見たライルが鋭く舌打ちする───


『神のお告げと聞いてきたが·····』




「フハハハッ!!久しぶりの外の空気は美味いなぁァァァァァァッッ!!」




ライルを含めた全ての人々は思った·····


『これ、ヤバい奴だ·····。』





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