21 俺、石像になる
熱帯雨林特有の土の匂いを吸い込みながら、検索に文字を打ち込む。
最初はボスではなく普通の蛇系魔物を何匹か森に放とうと思っていたが、品揃えを見て気が変わった。
どうも普通の魔物は迫力がなさそうなので、ボスモンスターを出す事にしよう。
【バジリスクは比較的温度の高い熱帯雨林に生息している大型の蛇系魔物である。コカトリスと同じく、目から石化の呪いを放つ事ができる。目は天然の魔眼として高く取引される。
頭部の形が特徴的で、王冠の様に見える事から、古くから蛇の王と例えられてきた。
冒険者ギルドでの危険度は A ランク】
熱帯雨林の生息なんてピッタリじゃん!
もうこれでいいんじゃね?·····と思ったが、一応他のも見る事にした。
【ヴリトラは、水魔法を得意とする蛇系魔物であり、その力と希少性から、有力な貴族の紋章にもなっている。
常時、腹部に水を溜めている為、その体は全体的に丸みを帯びている。
水魔法と闇魔法を得意とし、深い森の水源や湖に近い洞窟に住まう。
冒険者ギルドでの危険度は A ランク。】
【ヨルムンガンドは、毒を操る蛇型魔物。
沼等を毒沼に変えて住処とし、自らの成長に合わせて沼を拡大させる。
脱皮の直後は薄い黄緑だった体色は、やがて沼の猛毒が染み込んで鮮やかな濃い緑へと変化する。
過去に二度、禍々しい紫色に染まった神話クラスの異常個体が現れて、そのどちらもが国を滅ぼしている。
冒険者ギルドでの危険度は A+ ランク】
バジリスクかヨルムンガンドの二択だな。
選ぶとしたら·····
大きく息を吸って前奏を奏でる
デッデッデッデーデーン
「水のようにィィ優ァしくぅぅ〜花のように激しくゥゥ!」
両足をぐにゃぐにゃに交差させて腕を振り回す。
「ふーるえるゥゥやぁァいばで、つぅーらぬいてっっぇ!あ、なーたをっまぁぶーたが、覚えてるの〜·····」
·····。
「ハァハァ·····いでよ、バジリスクゥ!」
【ボス・バジリスク«36000P»を召喚します】
〈スキル〈呪術(石化)Lv10〉を獲得しました〉
残りポイント数[28000P]
ダンジョンコアから光の球が飛び出した。
球はどんどん膨張していき、大型バス程のサイズの蛇を象った。
全身を覆う薄茶色の鱗、がっしりとした大きな口からは、太く鋭い毒牙が覗いている。
そして説明の通り、頭部には特徴的な二列のトサカが王冠のように逆立っている。
·····デカいな。
鋭い縦長に切れた瞳が俺を捉える。
大きく息を吸い込んで緊張をほぐす。
···さすが蛇の王、威圧感が半端ない。
「あー·····」
オドオドしながら蛇に声をかける
もう森に入ってくれていいんですよ?
·····なんで睨むの?
「·····あぁなぁーたとぉぉたーゆーぅたうっかっくりぃよまでぇぇー!」
·····。
静寂が辺りを包む
バジリスクの両目がギラりと光り、目から出た光線が俺の肩を貫いた。
「く·····そがぁ·····な、何故だァァァ」
バジリスクの顔を前に、俺は最後の咆哮を上げる
ぴしりという音と共に、俺の体は石化した。