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1 ハゲ坊主のハゲ申す事には·····


「3・2・1·····」


·····ん?何だ?····


深い闇の底からゆっくりと意識が浮上する


パンパカパーン!!


「うわぁぁぁぁあ!?」


····ゆっくりじゃなかった。


「ウェルカムトゥ····仏ワールドォォォ!!イェェエエ!」


鼓膜を割るような爆音と共に最悪な目覚めが訪れた俺の目の前には、頭を丸刈りにしたお坊さんみたいな人がキレッキレのダンスを披露していた。


「誰だよあんた····」


「釈迦!」


「ウソだろ!?」


「嘘だよ。」


殺すぞテメェ····。


釈迦と偽証したハゲ坊主は、相変わらず体をクネクネさせて謎にハイレベルなダンスを繰り出し続けている····人間ってあんなにヌルヌル動けるんだな。


「····で、結局お前は誰なんだよ?」

「んー?」


何やら考え込むハゲ坊主。

やがてハゲ坊主は、ハッと顔を上げて答えた


「強いて言えば····神?」


「·····。」


やばい奴だ·····。

クソッ、クネクネダンスを人に見せようとする時点で察して逃げるべきだった·····。

いや、今からでも遅くない!


脱出····だ?

·····ここ、どこ?


見渡す限りに続く青い水面

空は太陽が無いのに明るく、ただ真っ白な奥行きの分からない雲が覆い尽くしていた


「ここが何処か分かっていないみたいだね····。」


ハゲ坊主が急に落ち着いた声で話しかけてくる


「君は死んだんだよ····」


死んだ·····俺が?


唐突に突きつけられた事実を受け入れられない俺に、無理もない、と続けるハゲ坊主。


「前世の記憶の大部分は消してあるからね。」


確かに言われてみれば、自分の顔や名前が思い出せない。

自分だけじゃなくて親の顔もだ。


死んだ事に対するショックは無い。

·····まぁ記憶が無いのでショックの受けようも無いが。


「何で···俺は死んだんだ?」


「んー、聞きたい?」


ハゲ坊主の問いかけに頷く


「君はね、琵琶湖に落ちたんだよ」


「琵琶湖!?何で····。」


「君は負けたのさ·····ナマズに····。」


ハゲ坊主曰く、俺は琵琶湖で釣りをしていた時に針に掛かったビワコオオナマズにパワーで押し負けて湖に引きずり込まれたんだそうだ。


クソッ、釣りたかった·····。


「そしてそのままポックリ、って訳か····。」


「そう、って事で·····」


ハゲ坊主が大きく息を吸い込む


「ウェルカムトゥー仏ワールドォォォ!!イェェエエイ!!」


う、うるせぇぇぇぇー!

ほんとに何なんだこのハゲぇぇ!!


叫んでいたハゲ坊主が唐突に真面目な顔をする


「ハゲとか良くない·····。」

「そこかよ!?」


ッ心が読めるのか!?不味い····。


「ほう、何が不味い?言ってみろ。」


こ、コイツ····ネタを分かってやがる!

もしかしたら思ったよりも悪い奴じゃ·····


「You dance, tooゥゥゥ!Oh yeah!!」


「死ねハゲ」

「ひっど!?」


顔で驚愕を表す自称神。

神なのに髪ねーんだな、プクク。


「こ、これは自分で刈ってんの!ファッションだからね!」

「どーだか。」


怪しげな自称ハゲ、じゃなくて髪、じゃなくて神。


「で?何で俺はこんな所に居るんだ?」


「そうそう、忘れてた!」


ハゲの説明によると、どうやら俺は"救済"されたらしい。

数多ある凡俗な魂から選ばれた栄えある幸運な人間····だそうだ。


「だから君は天界で永遠に暮らせるんだよ!」


そんな事言われてもなぁ····。


「天界で暮らすって何すればいいんだよ」


このハゲは信用できない。騙されて地獄で強制労働とかさせてきそう。


「そんな事しないって···でもそうだなぁ·····。」


考え込むハゲ坊主


「美味しい食べ物食べてぇ」


ほうほう?


「フカフカのベッドで寝てぇ」


ほうほう?


「綺麗な景色を眺めてぇ」


うんうん?


「·····。」


うーん?


「美味しい食べ物食べてぇ」


うーん?


「····偉い神様のお経を聞いてぇ」


ん?


「····。」


あれ?


「もしかしなくても天界って何もする事無いの?」


「ウッ····美味しい食べ物····」


いやもうそれはいいんだよ。

天界って要するに綺麗な景色見ながら美味しい食べ物食べて、フカフカのベッドで寝て、時々偉い人の説教を聞く世界な訳ね。


うーん·····なんかなぁ·····。

いやいいと思うよ?····生活としては。

ただなぁ····。


あ、そうだ。


「転生とかって出来ないの?」


「転生?」


そうだよ、神様なら転生させるくらい出来るでしょ。


「魔法有り、ケモ耳有り、エルフ有り、魔王・勇者有り、ドラゴン有りのファンタジー増し増しで!」


「そんなラーメンの注文みたいに言われても·····」


困った顔のハゲ坊主


「しょうがないなー·····」


お、いいのか!?

じゃぁ·····


「性別は男で、顔はイケメンで!あとは·····」


まじかぁー異世界行けるのか!

こりゃ勝ったぜ!


「転生させるの初めてだからなぁ····あ!できた。」

「へ?」


突如、俺の体が青く光り出す


「いってらしゃぁーい」


え、えぇ!?


脳みそがガクンと揺れ、体が"落ちる"。


「い、いってきまぁぁーすッ!?」


落ちる·····落ちる····。


俺の意識は、落ちていきながらゆっくりと遠ざかり····やがて消えた



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