あらたな
…周りの視線が突き刺さる
そりゃ、あんだけ大声出せばそうなるのは分かるよ…分かるけど…
立ち上がって辺りを見回す
「…やっぱ、イセカイってヤツなのか…」
焼いたパンの香ばしい匂い、果物の甘い香り、透き通るように澄んだ空気。
…お腹すいたな
つっても、今のオレには金が無いしココの言葉が日本語とは限らない…
『スキル:自動翻訳太郎 を獲得しました。』
…便利だなぁ
いやいや、それよりなんでいちいち「太郎」がつくんだよ
まあ…この世界で無双だとかチートとか出来るなら文句は言わないさ
さ〜て…どうしましょ…
「泥棒ーーーー!!!」
「…ん?」
泥棒とは、もちろんオレのことじゃない
恐らく、どっか誰かが何か盗んだんだろう
…とは言え、黙って見過ごすわけにはいかない
ちょうど、黒いマントを被った男がこっちに来てるしな
「チッ…邪魔だテメエ!」
なんと、マントの男がこちらを向いてナイフを持ってるではありませんか
しかし…今のオレにはスキルがある!
マントの男の前に立ち、右腕をマントの男に向ける
「ハア!?正気かテメエ!?」
「ッフ…この「賢者」の魔法を喰らいやがれ!」
賢者…は言いすぎたな
まあ、チートだしそこら辺を吹き飛ばす魔法くらいチョチョイのチョイだろう
「…ハン!バカかテメエ!」
「それはどうかな…?…喰らえ!ライトニングフラッシュバアアアアアスターアアああ……ア?」
何も出ない、困惑してる中、「アレ」が目の前に出てきた
『スキル:賢者太郎を獲得しました』
…ハアアアアア?
「…はあ?…キャッハハハハ!こりゃあいい!ライトニング?んん?ばああ?すたあ?」
「キエエエエエエエ!!ウルセエエエエエ!!バーストオオオオオ!!!」
やっと出た魔法はマントの男を吹き飛ばし、空に向かって飛んで行ってしまった…
「ありがとうございます!」
背後から声が…振り向くと、先ほど泥棒と叫んだ少女だった
「ああ、いえいえ…コレくらい、大したコトじゃないですよ」
「え…ああ、はい」
『スキル:…』
うるさい、今くらい静かにしていてくれ
「ああ、そうだ君…」
「あの…盗まれたモノは?」
…冷や汗が背筋を伝う
しまった…一緒に吹き飛ばしてしまった…
「それが…さっ」
「ああ…ならいいんです」
この娘…分かってて聞いただろ
「えと…それじゃあ…」
そう言うと少女は、パタパタと何処かへ消えてしまった。
…今の…フラグじゃないんだ…そうか…
とぼとぼと歩き出し、ここが街だと再認識し
今までのコトを住人に見られていたコトが分かって、かなり落ち込んだ。
ソレにトドメを刺すように、「アレ」が現れた…
『スキル:イキリ太郎 を獲得、スキルの効果で一日一回、イキらなければ
死にます 』
二話目でもう許されませんね