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シェリーとシェリーのツガイである4人は第一層に入っていた。しかし場所は第6師団の詰所である。目の前には西第二層門でよく門兵をしている、第6師団長のクストと同じく第6副師団長のルジオーネがいた。部屋の中には二人の青狼獣人と数人の兵に囲まれてシェリーは尋問を受けていた。因みに目の前にいるルジオーネは本物である。
「ラースのお嬢ちゃん、陛下を殴り付けるとはどういうことだ!このまま牢屋に連行しようか?」
「サボって脱走していた人物を見つけてあげたので感謝して欲しいぐらいです。」
そう、国王は仕事に飽きて脱走していたのだ。それも、他人に成り済ましているので、見つけることは不可能なのだ。
「確かに陛下を見つけてくれたのは感謝するが、殴ることはないだろ!殴ることは!」
「九尾の狐である国王陛下が受けた小娘のパンチなんて蚊に刺されたぐらいのものでしょ。あの飄々として他人に成りすましている姿を見ていると、殴りたくなりますよね。」
「ならねーよ。」
「はぁ。わたしは忙しいので第2師団長さんのところに行きたいのですけど?」
「俺も忙しいわ。お前がやらかすから、休みなのに呼び出されたじゃないか!」
「ああ、それでいつもより機嫌が悪いと・・・では、これをお納めください。」
「俺は裏取引には応じないぞ。」
「奥様が喜ぶ物でも?」
第6師団長の表情が眉間にシワを寄せて威嚇モードから一転する。
シェリーが差し出した箱の中身を見た第6師団長は箱を抱え立ち上がり
「俺は帰るぞ。」
と部屋を出ていこうとしたろころ、副師団長に肩をガシリと捕まれ
「それはダメですよ。」
と引き留められてしまった。
「ただでさえ、そこの問題児だけでも危険なのに問題児が連れて来ている人物達が厄介過ぎるますよね。」
酷い言われようではあるが、正しい意見だ。
「ああ、確か報告に上がっていたな。嬢ちゃん、ギランの傭兵団長がいるのはなぜだ。アンディウムが質問に答えてくれなかったからわからんっと言っていたしな。」
オルクスがここにいることに軍部は危険視をしているようだ。
「一度、フェクトス総統閣下の元に送り返しましたが、今は勝手に家に居座っています。」
「その前だ!その前に嬢ちゃんが何かやらかしただろ!」
「何もしていませんよ。」
シェリーは確かに何もしていない。ギラン共和国に入って翌日に出ただけである。
シェリーが座っている後側に立っていたオルクスが会話に入ってきた。
「シェリーは何もしていないぞ。シェリーはお・・・ぐっ。」
『シェリーは俺の番だからな』とは、シェリーは最後まで言わせなかった。瞬時にオルクスの横に立ち、横腹にねじり混むようにお仕置きパンチを繰り出したのだ。そして、何事も無かったかのように元の位置に座った。
「おい、絶対に何か言おうとしてたよな。嬢ちゃん、何をしたのか正直に言え。」
その質問にシェリーは答えず、亜空間収納バッグから一つの小瓶を取り出した。何とも言えない毒々しい青色の液体が入っている。
その小瓶を見た第6師団長のクストは距離を取ろうと飛び退いた。
そして、シェリーは続けて同じような小瓶で、血のように赤い液体が入った物を取り出した。
「わたしはこの件で炎王に呼ばれているので、明日にはここを発つかどうかの返事をしなければならないのですよ。ですからアンディウム師団長に聖女候補に関してのことで、相談しなければならないので、わたしがここにいなければならないのなら、呼んで来て下さい。」
「ちょっと待て、なんでお嬢ちゃんが未だにそれを持っているのだ。」
クストは青い小瓶の方を指して尋ねた。
「ああ、これですか。確かこれは4年前に手にいれた物ですよ。もしかして、8年前に奥様がこっちの青い方だけでも人害が無いように入れ換えた件を言っていたりします?」
「ああ。」
「全部入れ換えましたか?予備も含めて」
「予備?」
「誰でも手に取れるところに一ヶ所だけに原盤は置かないですよね。普通なら大事な物は手元に置いて、予備を渡しますよね。8年前に色々頑張ったようでしたが、無駄でしたよね。」
「シェリー、それはなに?」
あまりにもおかしい色の液体が何か、カイルが聞いてきた。
「これですか?赤い液体が呪いの毒でスーウェンさんの妹さんの病の原因ですね。この青い液体が薬と称した呪いを治ったように見せ掛ける呪いでそのうち病が再発します。」
「どういうことですか!ご主人様。治っていないなんて。」
「8年前の一時だけ本当に治る薬でしたけど、直ぐに呪いの上に呪いを上掛けするという物に戻ってしまいました。この呪いを使用した者にとっては治ってしまうのは不都合だったのでしょうね。そういうことなので、炎王からの要請を無視する訳にはいかないと思いませんか?イーリスクロム国王陛下。」
「「「「は?」」」」




