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 シェリーはそぉっと振り返る。シェリーの後ろにはカイル、グレイ、スーウェン、オルクスがいた。どうやら、青い鳥族の女性との話を聞いていたようだ。


「それで、シェリーどうなのかな?」


「ご、5人目です。」


 シェリーのその言葉を聞いた4人の目が座った。すっごく怖い。


「へー。そいつはシェリーから贈り物されるんだな。」


 グレイから唸るような低い声が漏れる。贈り物ではなく、あちらから催促されたので渋々、物を用意するだけだ。


「そう言えば、ご主人様から贈り物されたことないですよね。」


 スーウェンは笑顔でニコニコしているが、目が笑っていない。そもそも、シェリーのところに押し掛けて来て、一月も経っていないのだ、贈り物する程の仲ではないと思う。


「俺も何か欲しいな。」


 オルクスがなで声で言っているが、目がギラギラしている。人の部屋の結界を壊しておいておねだりをするなんて図々しい脳筋猫だ。


「ここにいない五人目はシェリーから貰えるのに、俺たちが貰えないってことはないよね。」


 寒い寒い。まだ、秋に入ったばかりなのに、真冬のようにここだけが寒い。これは、脅しじゃないか。


「はぁ。たいしたものは送りません。以前炎王からいただいた紙に守りのまじないを掛けた物を渡すだけです。」


 本当にその辺で売っているような、旅の安全祈願だとか、商売繁盛だとかいう物に毛が生えた様なものを渡すつもりだ。


「ズルイ。」

「聖女の守りのまじないって普通手に入れられないですよ。」

「欲しいな。」

「番から守りのまじないを送られる意味知ってる?」


 カイルがおかしな事を言った。番から守りのまじないを送られる意味?


「やっぱり知らなかった?『愛しています。』って意味だよ。」


 ・・・・は?シェリーの思考が停止した。


「もしかして贈った事あったりするのかな?」


 シェリーは頷く。確かに渡した記憶がある。

 あの夢の続きだ。昼食を共にするため、あちらが四阿(あずまや)に用意した昼食を食べる際も、王太子は離してくれず膝上で食べさせられた。

 あの時は子供だったからと思っていたが、今思えば、ツガイ行動だったような気がする。


 帰るときも離してもらえず、炎王がこれに守りのまじないをしてくれないかといきなり言ってきた。出されたのは、先程炎王が拾った折り鶴だった。それに『聖者の守り』を施した。そうすれば、あの小さな少女も紙風船にしてほしいと出してきた。王太子も欲しいと言われ、手持ちが先程食べたアイスの銀紙で作った折り鶴しかなく、まあ、子供がすることだし大目に見てもらおうと、銀紙の折り鶴に『聖者の守り』を施して渡したら、キラキラした笑顔で「一生大切にする。」と言われてしまった。

 そんな物を一生大切にせずに使い捨てにして欲しいとは言ったが、大切そうに懐に仕舞っている姿を見てしまったら、罪悪感が半端なく湧いてきてしまった。


「もしかして、炎王に嵌められた?」


 守りのまじないを施した折り鶴を渡したら、王太子も満足したようにシェリーを解放した。しかし、王太子からはツガイという言葉が出なかったので、魔道具は正常に機能していたと思われるが、所々王太子の行動がおかしなところがあるのもわかる。どういうことだろう?


「初代炎王は番持ちって有名だから、知っていただろうな。番からの守りのまじない欲しいなぁ。」


 それは、取引のある国だから、有名なのだと思うよ、オルクス。


「守りのまじないといえば、スピリトゥーリ聖女が猛将プラエフェクト将軍の帯剣ベルトに施して戦勝を祈願したことで有名ですよね。良いですよね。」


 また、スピリトゥーリ聖女とプラエフェクト将軍の名が上がってきた。そんな、恐ろしい人物に守りのまじないをしてしまったら一国ぐらい亡ぼしそうだ。


「ズルイ。ズルイ。」


 グレイ、何もずるくはない。


「シェリー、勿論俺たちの分も作ってくれるよね。」


 冷気が漏れているカイルを目の前にして、首を横に振る勇気はシェリーにはなかった。そして、シェリーは玄関の扉の取っ手に手を掛けながら言う。


「私は軍部に行かなければならなくなったので、付いて来ないでください。」


 逃げの一手を投じたが、玄関扉を開けた瞬間、閉められてしまった。4人に詰め寄られ、逃げ道を封じられてしまったのだ。


「シェリー、逃げる事ないよな。」

「ご主人様、一人で行くことはダメですよ。」

「シェリーが行くなら俺も行くから、見失ったらいけないしなぁ。」

「シェリー、現実逃避はダメだよね。」


 シェリーが頷くしか道は残されていなかったのだ。


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