表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/860

85

 オルクスが剣を片手に暴れ回っているのを横目にシェリーはアンディウムに近づいて行った。唖然としたアンディウムに呼びかける。


「アンディウム師団長。アンディウム師団長!」


 返事がない。周りの光景が余りにも非現実的なので受け入れられないようだ。シェリーは一発腹に拳を打ち込む。


「ぐふっ。」


「気がつきましたか?アンディウム師団長」


「いきなりなんですか。」


 攻撃が諸に入ったようだ。涙目で反論するアンディウム師団長を取り敢えず写真機に収めておく。


「今、撮る必要ありますか?」


 シェリーはそれには答えず


「アイラ嬢の確保をお願いします。丁度あそこでへばっていますので。」


 指された方向を見ると一人地面に座り込んでガタガタ震えているアイラ嬢がみえた。そう、一人だ。通常なら守るべき存在の令嬢を放置して獣人どもは戦いに夢中だったのだ。


 アンディウムがアイラ嬢を確保し、再び馬車の中に突っ込み終わったそのとき


「なんじゃこりゃー!」


 空間を震わすほどの怒声が響き渡った。

 声がした方向を見れば・・・。また、筋肉ウサギか。この国は筋肉ウサギが繁殖しすぎじゃないのか。と思わせるほど、どう見ても統括師団長閣下をトップとするグアトールの血筋の筋肉ウサギが、この死屍累々の惨状を見ていた。


「どこの者の襲撃だ。なんで、人族、多種族の獣人、魔物もいるじゃないか。なんだこれは、俺がサボっている間になんでテメェーらだけ楽しそうなことをしてるんだ。」


 やはり、脳筋ウサギだった。シェリーはオルクスに向かい言い放つ。

「もう終わりにしますので、キングを倒してください。」


「了解。」


 オルクスはオーガに向かっていき剣を一振りしたかと思えば、オーガの体が3つに別れながら倒れていき、そして亡者(ドール)達は何も存在しなかったように消えていった。


「ああ?なんで『ギランの豹』がいるんだ?」


 脳筋ウサギは死屍累々の屍となった第10師団の兵達を乗り越えて、こちら側にやってきた。


「ヴァン中隊長、上官に説明と報告をお願いします。」


 シェリーの言葉に『え、俺?』っと言いながらヴァンは脳筋ウサギの前に立ち


「第1中隊所属ヴァン・リヴィーニ。只今、帰還いたしました。」


「うむ。」


「この度、聖女候補であるアイラ・クォード嬢の補佐をすべく派遣されましたが、クォード嬢に少々問題が起き王都への護送をしようと我々より先に駐屯地へ帰ってもらいました。ここまでが、スライム討伐を依頼された第1中隊特殊班の知ることです。」


「で、なんでこんな状況になるんだ?そもそも何が問題だったか言ってみろ。」


「えー。」


 ヴァンの目が泳ぎ出した。そして、シェリーに目線を向ける。この状況を作り出した本人に言ってもらった方が納得してもらえると思ったのだ。

 脳筋ウサギはヴァンの目線を追い、シェリーに行きついた。


「うぉ。ラースの餓鬼がなんでいるんだ。この惨状はこの餓鬼の仕業か!」


 シェリーの噂は軍の上層部に行き渡っているようだ。シェリーは脳筋ウサギに近づき


「一つよろしいでしょうか?上官に馬車の外側の鍵を開けてはならないと言われているのに、中から助けを求められ勝手に開ける兵士はどうなのでしょう。そして、助けを求められて、助けると決めた令嬢を護衛しないで、我先に戦いを挑んでいく兵士はどうなのでしょう。ここの、兵士達の教育ができてないのか、それとも騎士養成学園の教育がなっていないのか。どちらなのでしょう?」


 瞳孔が開いた目で問い詰めて来るシェリーに何とも言えない恐怖を感じ脳筋ウサギが一歩さがる。


「いや。閉じ込められていて、助けを求められたら助けると思うぞ。」


「上官命令を破ってでも助けるのですか?悪党なんて口が回りますからね。言葉巧みに誘導されて上官命令に逆らう兵士は必要ですか?希代の悪女と言われたマリーアンナなんてその典型的ですよね。」


「ああ。」


 上官命令に逆らう兵士が必要かと問われればそれは否だ。正論だ。しかし、ここはイアール山脈の魔物どもを相手にしている脳筋集団である。考えるより体が動いてしまうのだ。

 固まってしまった筋肉ウサギをみたシェリーはこれはいけないと考え始めた。


「まさか、幹部候補生を育てるはずの教育機関が意味をなしていない。私は思い違いをしていた?」


 シェリーの雰囲気が段々悪くなっていった。


「そぉーか。この国は獣人の国だからかぁ。潰して一から作り直すかなぁ。」


 この状態のシェリーは危険だ。どこかで、ルークセンサーが働いたらしい。

 このことにいち早く気がついたカイルがシェリーの手を取り


「騎士養成学園を潰してしまうとルークが困ってしまうからダメだよ。」


「「「「ええ!そこー!」」」」


 シェリーのルーク愛を知らない者達の声が響いた。


 そして、後処理をしてシェリーが王都に帰って来ることができたのが2日後のことだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ