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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
7章 教会の聖女候補と世界の聖女

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 アンディウムがそもそもの疑問を呈する。なぜ、馬車を選択したのかと。


「はあ。我々も魔道馬車をおすすめしたのですが。聖女候補の方が馬車がいいと言われまして、此処までの長距離を走れるストルート鳥は王都でもなかなかいませんでしたからドードー鳥になってしまいました。」


 説明している間も「ちょっと助けなさいよ」と聖女候補の少女が地面に座り込んだまま叫んでいる。

 御者もここまで色々あったのだろう。全く助け起こそうとしない。


「アンディウムさまぁ。助けて欲しいですぅ。」


 御者が全くもって動かないので、アンディウムに標的を向けた。アンディウムの顔が一瞬歪んだが、広報担当者にどんなときでも笑顔でいるように言われ続けているため、すぐに、営業用の笑顔になり


「お手をどうぞ。」


 と手を差し出すのであった。その手が若干震えているように見えるのは気のせいだろう。


「ありがとうございますぅ。」


 シェリーは語尾を伸ばす言葉に内心イラッとしていた。そんな仕事のできない後輩がいたことを思い出す。『佐々木先輩わぁ出来るかもぉしれないですけどぉ。あたしわぁできないですぅ。』と言って仕事に手をつけず、そのまま仕事を押し付けてきたウエダ ハナ!


「アンディウムさまぁの他にもイケメンがいっぱいだぁ。どうしよう困っちゃうなぁ。」


 何も困ることはない。どちらかと言えばアンディウムがシェリーに向けて困った顔で助けを求めている。どう対応したらいいのか困っているみたいだ。


「聖女候補の人の自己紹介をお願いします。」


 シェリーが助けの言葉を言うと


「おばさんこそ誰?人の名前を聞くなら自分から言ってよね。」


 と返された。瞬間、シェリーの周りにいる4人が聖女候補に殺気を放つ。


「ヒィ!」


 その殺気を諸に受けた聖女は腰を抜かしてしまった。


「どなたか聖女候補の方の名前はご存じですか?」


「は、はい。」


 御者の人が知っているようだ。


「アイラ・クォード嬢です。クォード男爵の四女になります。」


 シェリーはアイラ・クォードと言う名の少女を視る。少女を視たシェリーは諦めた、この目の前にいる少女に対して全てのことに諦めた。名前の欄と称号の欄が全てをかたっていた。


 アイラ・クォード(ウエダ ハナ)

  称号 異界の魂をもつ者、世界のヒロインだと思い込んでいる者、世界の監視対象者

    ( )は世界から非認知項目


 なぜ、ウエダ ハナの魂を持つものがいるのか分からないが、これは白い謎の生命体がこの女の行動をみて、面白がっているに違いない。


「そうですか。聖女候補の方がこのような感じなので、毒の浄化だけお願いするのはどうですか?」


「スライムを倒したら聖女になれるって聞いてきたのよぉ。せめて、あたしが倒したようにしてもらわないと困るわぁ。」


「そのようなドレス姿で山道を歩くのですか?」


「こんなにいっぱいイケメンがいるならぁ、交代しながらあたしを抱っこしてくれればいいのよぉ。」


 ウエダ ハナの性格は断然悪化していた。なぜに大型スライム討伐で抱っこしながら移動しなければならないのか分からない。スライムがどのような状態で存在しているか確認していない状態で、行動を制限してまで、邪魔物を運んで行こうという酔狂な人物はいないだろう。


「御者の方。聖女候補は馬車の中で待っていただくのはどうでしょう。」


「あたしは行くって言ってるのよ。おばさん。」


「なあ、あのクソ餓鬼ぶん殴っていいか?」


 とうとうグレイが我慢できなくなったようだ。


「殴るなんてそんな甘いことダメですよ。せめてスライムを誘き寄せるエサぐらいにしましょう。」


 スーウェンが囮に使う提案をしてきた。


「さっさと胴と首を切り離せば済む話だ。」


 オルクスそれはもう生きていない。


「骨が残らないように火炙りにしたほうがいいと思うよ。」


 カイルが火炙りを提案してきたが、骨が残らないなんてどれ程高温の炎を使う気だ。


「ちょっと待ってください。」


 皆の本気度を感じたアンディウムが必死になって止めに4人の近くに来た。


「そもそも、今回はこの国から聖女を出すために国の上層部と教会幹部とで決めたことなのですよ。貴重な聖魔術の使い手を殺そうとしないでください。」


「じゃ、そいつは人を生き返せるのか?次元の悪魔と戦うことができるのか?聖女ビアンカの魔力はそいつの100倍はあるぞ。」


「聖女ビアンカ様の甥でもある、あなたから見れば心もとないのはわかりますが、これでも聖魔術を使えるのです。」


「ふーん。」


 グレイはそう言いながら聖女候補のもとへ歩いて行った。正確には近くの御者のもとへ。そして、胸に一本ナイフを突き刺した。御者の胸に衝撃もなくスッと差し込むように。

 御者は驚いた表情をしながら、膝を崩して横に倒れていった。


「聖女ならこの傷治せるよな。早く治さないと死んでしまうぞ。」



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