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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
27章 魔人と神人

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「剣術を……」


 グレイは納得していないのか、小声で望みを口にした。己には剣才などないのは、はじめからわかっていると言わんばかりだ。


「うーん?納得していないのならいいよ。突然強くなるわけではなく、それなりの鍛錬は必要だから、続けられないのであれば言葉にしなくていい」


 結局大事なのはグレイの意志だ。ヤル気がないことを願い出てもそれは無意味な行為となる。


「それに無理に願いを口にしなくてもいい。それでどうなのかな?鬼人君は?」


 グレイの願いを切り捨てて、ラースが望む願いを言わないのであれば、言葉にしなくていい。リオンはラースの態度からそう感じた。


「結局、貴様の思うようにさせたいだけだろう」


 そのリオンの言葉に、ラースは一瞬驚いたかのように目を開いたが、直ぐに細めてクスクスと笑い出した。


「まぁ、さっきも言ったけど、無理に言う必要はないよ。君は魔眼に対する抵抗力を得た。それでいいのなら、もうここから出ていっていいよ」

「は?」


 ラースの言葉に反応したのはシェリーだった。まさかと思いシェリーはリオンを視た。『真理の目』でだ。

 そしてそのままグレイ、スーウェン、オルクスへと視線が移る。


「三カ月と言っていましたが、遊んでいたのですか?」


 確かスーウェンは耐性を得たと言っていた。その言葉に偽りはない。

 元々魔眼に対する抵抗力を持っていたグレイも耐性を得ていた。


 問題はオルクスとリオンだ。スーウェンが彼らを援護したようだが、言葉の端から色々問題があったことは窺える。


「あのクソ勇者でも一ヶ月で耐性を得たのですよ?大目に見て三ヶ月かかったとしても、100階層まで到達して耐性を得られなかったなんて、ありえなくないですか?99階層の門番はどうしたのですか?」


 このドルロール遺跡のダンジョンは魔眼の耐性を得る為に作られた。だから必ず、耐性を得なければ攻略できない仕様になっている。


「あ……それは、私が倒しました」


 スーウェンだった。そう、魔眼に対する耐性を得ているスーウェンであれば、対処可能だろう。


「……それ、強引に三人が通過したのですか?99階層の門は一人ずつしか通れないはずですが?」

「やはりそのような仕様でしたか」


 スーウェンの困惑した顔と言葉から、シェリーの言葉が当たっていると窺わせた。


「そうだね。だから、はっきり言えば、君たちはダンジョンを攻略していない」


 ラースはオルクスとリオンを見て言った。


「私はきちんと攻略した竜人やグレイやエルフには未来の道を示した。だけど豹獣人と鬼人には示していない。だってヤル気がない者に力を与えても意味がないだろう?」


 そう、ラースはカイルには最強種である竜人だがオリバーに勝てるのかと尋ね、カイルの未熟さを指摘した。

 スーウェンには、望みを全否定したものの、魔術という概念を壊し、更なる高みがあることを示した。

 グレイには……グレイ自身は納得していないが、剣聖ロビンの戦い方がいいと教えた。


 だが、オルクスには己の過去の愚かしさを指摘し、ラースから付与する能力を口にした。リオンに至っては何も問答することなく、帰っていいという始末。


「特に鬼人の君は鬼人の覚醒の力を得たことで満足しているのだろうけど。それ、今のままだと一年も保たずに死ぬよ」

「どういうことだ?」

「ナディアは戯言のように言ったようだけど、人としての領域を超えるということは、簡単ではないということだよ」


 女神ナディアが戯言など、いつ言ったのだろうか。人としての領域を超えるということは、ラースのように人神になるということだろうか。


 確かウエール神がシェリーのツガイたちに『心蝕(しんしょく)穏守(おんしゅ)』を授けたときだったか。

 女神ナディアがシェリーに釘を差しに来ていたときのこと。

 女神ナディアが炎王のことを褒め『キジン』という意味深な言葉をリオンに呟いて去っていったことがあった。


『キジン』というのが『鬼神』という意味であるのならば、リオンの鬼化は人という領域を超えた力を持っているということになる。


 だが、ラースはナディアの戯言といい、人の領域を超えることは簡単ではないという。

 確かにカイルは超越者という者だが、人という範囲に入る。同じ超越者でもあるオリバーだが、特異者であり、聖人であり、女神ナディアの血族が故に、神人という範疇に入る。

 その差は世界最強種である竜人のカイルでさえ、己が弱者だと思わせるほどの強さを持っていた。


 そう、だからカイルは全てを破壊する力を望んだ。

 人という域を超えるための力を。

 竜人という種族を超える力を。

 神域に踏み込む力を。


 生まれながら神人であるシェリーの隣に立つ力を望んだのだ。


「自分から得た力ではなく、他人から与えられ得た力は簡単には自分のものにはできないもの」

「俺の力は俺自身で得た力だ。何も問題はない」


 リオンはラースの言葉になど聞く耳を持たないようだ。信用に値しない。それこそ戯言だと言わんばかりの態度だ。


「シェリー。君はこの鬼人をどう視ている?君が気づかないはずはないよね?わかっていて黙っている。そうじゃないのかな?」



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