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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
27章 魔人と神人

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「可能か不可能かの二択であれば、可能だと答える」

「では!」


 スーウェンは望みを口にしようとしたが、それを手を上げてラースは遮った。そして赤い目をシェリーに向ける。


「シェリー。君が出会った中で、最強と思う人物は誰かな?」


 また、ラースの悪いクセでもでたのか、全く違う話をしてきた。

 声をかけられたシェリーは死んだ魚の目をラースに返す。そんなことをこの場で言う必要があるのかと。


 そして、『最強』という言葉に反応した者が二人。オルクスとリオンである。二人とも興味津々の視線をシェリーに向けていた。


「誰とか別にいいではないですか。強者であっても何かしら弱点があるものです。一概に最強とか安易な言葉では言い表せられません」


 シェリーはふわっと発言するのを避ける。もし、その名を出せば『戦わせろ』と言われるのが目に見えているからだ。


「そうだね。誰しもが完璧ではない。でも、私は君の口から言って欲しいなぁ」

「……はぁ。馬鹿王を除外すると。剣聖ロビン様でしょう」


 ロビンはルークと話していた時に、己が使っている剣術の話をしていた。剣神レピダの加護が必要だという剣術。それは何だったか。


「さて、剣聖ロビンの剣術を使えるシェリーは何という剣術かな?」

「神剣術ですが、私は剣よりも斬る刀を使うので、あまりつかいませんよ。それに使いすぎると刀の方が保ちません」


 シェリーから答えを引き出したラースは再びスーウェンに視線を向けた。


「魔剣術を極めた者と神剣術を極めた者。どちらが強いかといえば、神剣術の方なんだよ。何故かわかるかな?」

「わかりません」


 スーウェンは素直に己の無知を晒す。スーウェンが知り得た情報はルークの師であるライターからの知識で、魔剣術のことだけだった。

 しかし、その内容と言えば、剣術と魔術を合わせた戦い方をするというもので、双方のいいとこ取りをしているものだった。どこも欠点などない。


「では、言い方を変えよう。剣……黒刀だったね。黒刀を使うシェリーは魔術も併用して戦っている。これは魔剣術かな?」


 そこまで言われてスーウェンはハッとする。そしてシェリーを見た。

 シェリーが刀を使い魔術らしきものを使っていた記憶に残る戦いは、炎王との一戦だった。


 千年間一国を治めてきた龍人の王と、たかが十数年生きた人族のシェリーが対等に戦っていたのだ。

 刀と刀。魔術創造とスキル創造の戦い。


 そこに己が割り込めるかとスーウェンが考えたが、それは否だとはっきり言える。

 天候にも影響を与える魔術など、普通は使えないからだ。


 そう考えると、スーウェン自身の未熟な部分が見えてくる。だが、ここでふと疑問が浮かび上がった。


「ご主人様。何故剣聖ロビン様なのでしょう?以前戦った、猛将プラエフェクト将軍の方が強いと私は感じたのですが?」


 猛将プラエフェクト将軍。彼もまた剣と魔術を使うエルフだった。

 そしてスーウェンは彼の戦い方を見て、魔剣術を使えればいいのでは、という考えに至ったのだ。


 するとシェリーは珍しくフッと笑った。嘲笑いの笑みではなく、微笑ましいという笑みだ。


「そうですね。大切な者を守ると決めたロビン様は最強だと思ったからです」


 魔人の大陸となった場所は、ラフテリアを守るために外部からの侵入者を尽く排除するところとなっていた。それも機能しているのは、大陸に現存するたけだろうという魔導兵を使ってだ。

 そして、未だに機能し続けている大魔女エリザベートの結界。


 おそらく、それらを3000年間以上の間、維持し続けているのはロビンだろう。


 大魔女エリザベートから魔術を受け継いだ最初にして最後の生き残り。


 初代聖女の守護者であり、剣聖。


 そして魔術に長けていた魔人マリートゥヴァの身体を用い、白き神から創られた神人。


 彼が最強でなければ、誰が最強なのかといいたくなるほどだ。

 だが、シェリーは馬鹿王を除いてと言ったように、全てを改変するシュロスが『世界の最凶』と言い切れるだろう。


 しかしスーウェンはシェリーの言葉に納得していなかった。


「それであれば、聖女スピリトゥーリ様がいらした、猛将プラエフェクト将軍も同じと言えるのではないのですか?」


 いや、エルフ族の英雄を崇めているところもあるのかもしれない。


 それに対してシェリーは真顔に戻り、淡々と答えた。


「全てを奪われた者は、次はどうすれば奪われないか考えるものです。剣聖として剣を極めながらも、剣を持てない身になったロビン様が魔術など、屈辱的だったでしょう」


 一度死に、再び目覚めれば首だけの存在となっていたロビン。剣聖という称号など無価値だと、地獄にでもに叩きつけられた気持ちだっただろう。


「しかしラフテリア様の守護者として、利用できるものは全て利用したのです。大魔女エリザベート様でも、アーク族の遺産でも、全てを利用し、ご自分の力にしていった結果。守護者としての役目を果たされている。今のロビン様は剣聖として剣術をつかい、大魔女エリザベート様から教えられた魔術も使えるのです」


 そしてシェリーはクソ虫でも見る目をして言葉を吐き出す。


「魔力食いの魔剣の力と、膨大な魔力で数を撃てばいいだろうという、猛将プラエフェクト将軍と比べるなどおこがましい。それであれば、暴君レイアルティス王の方が魔術への向上心がある分、マシというもの」


 シェリーの猛将プラエフェクト将軍嫌いは相当なもののようだった。



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