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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
27章 魔人と神人

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「あ?」

「は?」

「喧嘩売ってるのか?カイル」

「はぁ……喧嘩は止めた方がいいですよ」


 カイルの独占欲丸出しの言葉に、リオンとグレイとオルクスは殺気立つ。その姿を見たスーウェンは一歩引いて、ため息を吐いていた。


 三人がカイルに噛みつく勢いで唸っている。


「ラース様。私だけ帰していただけます?もう、ここにいる必要はないですよね?」


 喧嘩をしだした彼らを排除するのではなく、自分を元いた場所に帰してくれるようにラースに頼む。

 いつもどおりに彼らを置いて去ろうとしているのだ。ただ、カイルに抱えられているため、それをここに連れてきた張本人に頼んだにすぎない。


「え?それは最悪なことになるからしないよ」


 ただでさえ、シェリーを隔離していた空間を力技で強引にこじ開けた竜人のカイルだ。もし、シェリーだけ何処かに飛ばそうものなら、ダンジョン自体を破壊されかねない。


 そして、シェリーが置いて帰ろうとしていることを察した五人のツガイたちは、瞬時に殺気を抑える。シェリーが置いて帰るといえば、待ったナシに帰ることは、この数ヶ月で理解できているからだ。


「さて、希望する力を言ってもらえるかな?叶えられるかどうかは、私が出した条件の達成率次第だよ」


 シェリーの無言の圧力を受け流すように、ラースは五人のツガイたちに望む力を言うように言葉にした。

 ラースが出した条件。それは複数の魔眼を持つモノを倒した数だ。


「俺は空を飛びたい!俺だけ飛べないなんて……いや……ちょっと待て……獣化すれば飛べるなら獣化したい!」


 オルクスが一番に己の要望を言った。確かに、オルクスは空を飛ぶことはできない。ただ、グレイは獣化することで空を自由に移動しているため、空を飛ぶ=獣化の思考になっていた。


「獣化しても飛べない種族は飛べないよ」

「え?」

「そもそも獣人は空を駆けているだけで、飛んではいない。それに私の条件を持った魔物を倒したのは1体のみ。それじゃ獣化を与えるほどの数ではないよ」

「何言っているんだ!五十体は倒したぞ!」

「それは魔眼を一つしか持っていないモノだよ。単眼の魔物は条件には、はいらない」


 そのラースの言葉にオルクスは苛立ちを露わにする。


「単眼を倒すなとは聞いてない」

「それは言っていないよ。私が言ったのは複数の魔眼持ちを倒すだよ。豹獣人君は、素早さUPが妥当かな」

「あ!そんなの詐欺だろうが!」

「そもそも素直に黒髪のダンジョンマスターの言うことを聞いておけば、一ヶ月ぐらいで獣化することはできたはずだよ」

「あ?ヨーコのことか?」

「え?それだけで獣化できたのか?」


 獣人であるオルクスとグレイにとっては衝撃の事実がラースから発せられた。陽子のダンジョンに潜って一ヶ月で獣化できるのであれば、シーラン王国では獣化できる獣人ばかりになっていたはずだ。


 だが、現実はそうではない。


「あれは獣人にとっての訓練というよりも試練と言い換えていいダンジョンだね。ここも同じなのだけど、ある目的をもって作られている」

「目的って『ぎみっく』を解除しろってやつだろう?」


 オルクスが嫌そうに答えた。

 一番陽子に攻略の仕方で怒られた回数が多いのはオルクスとリオンだろう。二人とも力任せに強引に行けばいいという考えをもっているからだ。


「違う。違う。本能の制御だよ。人族はそのあたりは長けているけど、獣人は本能というものが表に出やすい。本能を司るピュシス神の加護を得るには最適なダンジョンなんだよ」


 その名前は誰かの口から出てきたものだ。

 そう、黒狼クロードが獣王神フォルテの愚痴を聞いた後にでてきた神の名だ。


「本能の制御が出来れば、本能の解放もできる。それが獣化だよ」


 獣化の能力は本能の解放。クロードがピュシスの加護が必要だと言っていたのはこう言うことだったのだ。


 そして、獣王神フォルテから加護を得たにも関わらず、中型犬ぐらいの大きさから変わらないグレイ。

 これは、獣王神からの加護ではなくて、本能の神ピュシスの加護が必要だったからだ。


「ということで、理解できたかな?伊達に変革者のダンジョンじゃないんだよ。君たちは獣人が力を得るのに恵まれた環境にいたのに、獣化をする機会を棒に振っていた。愚かとしか言いようがない。だから豹獣人君の望みは自力で叶えることだね。それで他の者はどうかな?」


 陽子は陽子自身の理で動いているが、全ては獣人が力を得るために必要な要素を入れたダンジョンになっていたのだ。


 そして第六師団長であるクストが獣化と言うには中途半間な人狼と言っていい姿になったのは、結局攻略が私利私欲にまみれて中途半端だったからに過ぎなかった。


「あの……私は魔剣術を得ることは可能でしょうか?」


 次に望みを口にしたのはスーウェンだった。

 だが、その言葉にラースは顎に指を当てて考える素振りを見せる。

 今まで言葉を詰まらせてこなかったラースにしてみれば、おかしな行動だった。



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