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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
27章 魔人と神人

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「そう、あるようにとは、どういうことだ?」


 ラースの言葉に反応したのはグレイではなく、カイルだった。それは気になることだろう。

 カイル自身、種族のあり様など何も聞かされていないのだから。


「そのままだよ。いい例がシュロス王だ。彼はやりすぎた故に、竜人から鉄槌をくだされて二度と竜人には歯向かおうとは思わなくなったよね」


 ラースはおかしなことを言っている。そもそもシュロスが竜人に戦いを仕掛けたのであって、竜人族自ら動いたことではないはずだ。


「シュロスは力を見せつけるために竜人族に戦いを挑んだのですよね?」


 その疑問をシェリーは口にする。きっかけは、神の神言を勘違いしたシュロスの行動から始まった。


 力を得たいシュロスが神々の言葉に従った結果。大敗し、竜人族が住まう空島から離れた北半球に拠点を構えることになったのだ。


 その話のどこにも竜人族の鉄槌の言葉は出てこない。


「戦いを挑んだ?違うね。シュロス王は世界を手中に収めようとした。空からの進軍。それは地上にいる者たちからすれば恐怖だっただろう」

「は?」

「まるで神の鉄槌のように地上に攻撃をしたのだよ」

「『天の火』!あれを実際に使っていたと?」


 シュロスは空島を人が空に浮かせたという某空島を真似て作っており、天の火なるモノも備え付けてあると言っていた。

 まさか、それを実際に使っていたとは驚きとはでは言い表せない衝撃の事実。


「あとで、締めておこう」


 シェリーは拳を握って何か心にきめたようだ。

 ラースはシェリーの言葉には何も返さずに、その続きを話し出す。


「それに反応したのが、世界の調停者たる竜人族だ。シュロス王の愚行を止めるべく彼らは動き、シュロス王を北側まで追いやることに成功した」

「それはおかしい。アーク族との戦いはアーク族が攻めてきたから始まったとある」

「それは認識の違いだ竜人君。セイルーン竜王国の領土はどこまでかという認識の違いだよ。私達からすれば、君達の領土は白き神が空に浮かべた大陸のみ。だけど君達の中では違ったのではないのかな?」

「空に浮かぶ大地と空と海が我々の領土だ」


 カイルははっきりと言いきった。空を統べる者である竜人族が空島どころか空も海も領土だと認識していると。


「そういうこと。海の上の小島にシュロス王が拠点を構えた。それを進軍と見做すかどうかだね。しかし神の威が動いたことには変わりない」


 カイルは確かに言っていた。海の上に空に浮いた小島があると。そこにはまだ稼働している魔導兵が存在していると。

 ということは、海の上にある小島にシュロスが魔導兵を置いただけで、竜人族からは敵が攻めてきたと捉えられるのだ。


「神の威?あの白き神がシュロス王を排除しようと?」


 シェリーの疑問はもっともだった。白き神は基本的に成り行きのまま任せるという感じで、己自身ではほとんど動かない。いや、わからない形では動いているのだろうが、直接関わるのは己が喚び寄せた変革者たちと聖女たちぐらいだ。


「ん?正義の神アトレスだよ」

「誰です?それ?」


 ラースは当たり前のように神の名を挙げたが、シェリーはさっぱりもって聞き覚えがないようだ。


「まぁ、シュロス王の糧になったけどね」

「いない神の名を当たり前のように挙げないでほしいです」


 どうやら、シュロス王に喚び出されて殺された神の一柱だったようだ。それはシェリーも首を傾げるだろう。


「あの……」


 そこにグレイの声が降ってきた。


「さっきから出ているシュロス王って、誰のことかさっぱりわからないのだけど……」


 グレイはシュロスとはまだ会ったことすら無く、初めて聞く名だが三人は旧知の中だと言わんばかりの態度に、話を折っていいのか迷いながら声をかけたのだろう。

 オドオドと視線を揺らしながら聞いてきた。


「ただの馬鹿だ」


 カイルは馬鹿だと口にする。


「うーん?影響力が強すぎるから取扱要注意かな?」


 ラースはシュロスをモノのように表現した。いや、今は甲冑が本体なので、それでいいのかもしれない。


「虫けら以下の物体です」


 シェリーのシュロスに対する評価は変わらなかった。そして、誰一人シュロスの正確な説明はしていなかった。


「全然わからない。初めて聞く王の名前だけど、どこの国の王?」


 一応、ラース公国の第二王子であっただけはあって、各国の王の名をグレイは把握していたようだ。だが、その中にはシュロスという名はなかったという。


「アーク族の王です」


 シュロスを一言で言い表すのであれば、これが一番しっくり来るだろう。だが、それだけではシュロスがどういう者かはわからない。


「神を神とたらしめた王。神殺しの王。最初の変革者。世界を混沌の渦に叩き落とした王」

「最悪じゃないか!神殺しってなんだ!」


 やはり、シュロスの話になると、誰もがこのような反応になってしまうのだろう。

 神殺しは流石に普通ではないと認識されるのであった。


「あ、そうそうナディアの愛し子。君の希望はナディアに言えばいい」

「今、言われるのか!」




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