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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
27章 魔人と神人

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「カイル!てめぇ!何がじゃれ合いながらだ!」


 オルクスの怒りの声は誰もいない空間に向けて放たれ、虚しく響き渡る。


「ここから別れて進もう」


 その空間にグレイの落ち着いた声が聞こえてきた。カイルの意見に賛同したかのような言い方に、オルクスは苛立ちを顕にする。


「なぜだ!まだ魔眼に対する抵抗力もない状態なんだぞ!」


 まだ十分の一しか攻略は進んでいないが、オルクスは魔眼の危険性を感じ取り、ここで一人にされると、進むことも戻ることもままならなくなると感じ取っていた。


「たぶん、本当の意味で一階層から攻略していくと、徐々に魔眼に対する抵抗力が上がるようになっていると思う。段々と魔物が強くなっているから」

「確かに強くなってきていますね。デバフの解除に時間がかかるようになっていますし」


 スーウェンがグレイの言葉に同意をする。オルクスがすぐに突っ走り、先程も一部が化石化になっていた。


「それにここの魔物は魔眼の色で、何の魔眼かわかりやすくなっているから、苦手なタイプは逃げるというのもありだと思う」

「そうですね。やはり狂化と化石化は避けたいですね。それ以外なら、なんとか解除ができそうですから」

「え?魔眼に色なんてあったか?」

「なぜ、それをわかった時点で言わない」


 魔眼の色でどういう魔眼か、ダンジョンマスターは色分けをしていたようだ。それに気がついていたグレイは全て戦わずに逃げるという選択肢もあるという。それに同意するスーウェンだが、オルクスとリオンは全く気がついていなかった。


 いや、後先考えずに目の前の敵を倒そうと飛び出すオルクスは、魔眼持ちの魔物かどうかなど関係がなく、ただ突っ走って行っていた。


 そしてリオンは何故か操作系の魔眼に捕まり、味方に剣を振るったりしていた。だから、二人とも魔眼の色など気にしながら、攻略はしていなかった。


「神殿の祭壇で祈ると入り口に戻れる。だから、君たちは一階層からやり直すべきだ」

「は?ここまでやっと来たのにか?」

「その『君たち』にグレイは含まれていないってことだな。それでグレイはどうするつもりだ?」


 先程からオルクスとリオンはグレイに当たるように反論している。レベルも歳も一番下のグレイが、何を仕切っているのだという苛立ちか。いや、本来一番文句を言いたいカイルが居ない所為か。

 どちらにしろ、このまま集団行動をするには支障をきたす。


「俺は、この階層を周回する。ここにたどり着く前に、複数の魔眼持ちの魔物がいたから、それを追いかける」

「は?なんだ?複数の魔眼持ちって?」

「グレイ。自分だけ条件を満たそうとしていたのか!」


 オルクスは、何のことを言っているかわからないようだが、 そう、ミゲルロディアやオーウィルディアが、気軽に姿を顕した女神ナディアに驚きをみせたのだ。


「はいはい。ここで喧嘩は駄目ですよ」


 そこにスーウェンが止めに入る。


「オルクス。複数の魔眼を持つ魔物を倒した数によって、潜在能力をあのダンジョンマスターが引き出すと言ってくれたのですよ」

「潜在能力?」

「例えば、獣人の獣化とかですね。人から神に至ったものの特権のようなものらしいですよ」

「獣化できるようになるのか!その魔物をぶっ倒せばいいんだよな!ってグレイ一人占めか!」

「オルクス。一人占めもなにも、我々は一つの魔眼持ちにすら抵抗力がないのです。どうやって戦いうのですか?今まで魔眼のある魔物を倒したのは、グレイと私だけですよ」

「しょうがないだろう!手足が痺れて動けなくなったり、魔眼を見た瞬間に記憶がぶっ飛ぶし、身体が石のようになったりしたんだからな!」


 確かオルクスはグレイに対して『ほとんど魔物を倒せていない』とカイルに言っていなかっただろうか。スーウェンの話から推測すると、オルクスとリオンが普通の魔物を倒し、魔眼持ちをグレイとスーウェンが倒したということになる。


 ということはだ。我先にと駆け出すオルクスとリオンが居なければ、グレイとスーウェンは普通に進めていたとも言える。はっきり言って、足を引っ張っているのが、文句を言っている二人だったということだ。


「それから、ラースというダンジョンマスターの言葉を読み解くと、我々はここで強くならなければ、最終地点にたどり着けないということです。カイルは何か知っていたのでしょう。最終地点は百階層ではないという情報も渡してくれました」

「スーウェン。それがどうした」

「リオン。言い換えれば、何かしらの条件を満たせば、ここからでも最終地点に行けるとも捉えられる言葉です」


『そうよ』


 唐突に女性の声が聞こえてきた。それは先程ラースがいた神殿からだ。だが、姿は見えない。


『本当にいつまでグジグジと話をしているのかしら?竜人の彼は魔眼持ちの魔物を切り捨ているように進んで、既に三十階層まで到達したわよ』


 違う。声だけをこの場に届けているようだ。女神ナディアは普通は姿を見せずに、声だけを神官に伝えるのが一般的と思われている。

 そう、ミゲルロディアやオーウィルディアが気軽に姿を顕して女神ナディアが驚きをみせにだ。


『でも、竜人の彼が一番に最終地点にたどり着くとは限らないのよ。だから、そこのエルフと豹と鬼は最初からやり直しなさい!』


 ラースが言っていたように女神ナディアはかなりご立腹だったようだ。その言葉と共に、スーウェンとオルクスとリオンの姿が消え去っていた。


「条件ってなんだろう?」


 ただ一人残されたグレイの声が、虚しく響いてきたのだった。


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