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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
27章 魔人と神人

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「カイル⋯⋯こいつら全然言うこと聞かないんだよ」


 なんだか疲れた雰囲気をまとっているグレイからの言葉だ。

 女神ナディアの愛し子の証である赤い髪の間から出ている三角の耳が力なく倒れてしまっている。


「は?殆ど魔物を倒せていないグレイに言われたくないな」


 文句を言っているオルクスは言葉の割には、地面に倒れてしまっている。


「ちょっと動かないでください。今、石化を解いている途中なのですから」


 いや、片足が石の様に硬直し動けないようだ。それをスーウェンが解呪している。そのスーウェンもなんだか疲れた雰囲気をまとっていた。


「それでリオンは先に行っているのか?」


 ここは一階層ごとにある休息が出来る神殿の間だ。この場には魔物は入ってこれず、神殿に供えられた供物のような食べ物を好きなだけ食べていい場所でもある。


 だから、リオンは休息を取らずに先に行っているのかとカイルは考えたのだ。しかし、三人はふいっと別の方向に視線を向ける。カイルが入ってきたところとは別の方向だ。


「あっちで暴れている」

「あいつ学習能力ってないよな」

「それ、オルクスに言われたくないと思いますよ」


 グレイが言った暴れているという意味がどういうことなのか確認するために、カイルは視線で示された方に向かった。


 ここは木々が密集した密林の階層だ。視界が悪くどこから敵が襲ってくるか、視覚で認識するのは困難な場所と言える。そんな場所の奥地から、木々を破壊する音が鳴り響いていた。その音が段々と近づいてくる。


 カイルは警戒しつつ近づいて行くと、目の前の大木が木っ端微塵に破壊され、青い刀身が目の前に迫ってきた。


 その刀身をカイルは手の甲でいなし、右手をまっすぐに突き出す。何かを掴むとそのまま地面に叩きつけ、とどめと言わんばかりに踵落としを叩き込む。


 土煙が去った後に残されたのは、バラバラになった大木の木くずと地面に顔面からダイブしたような白髪の人。いや頭から角が生えているので、鬼族のようだ。


 その者の首根っこを掴んで、引きずりながら、元来た道を戻るカイル。


 その表情は怒りに満ちていた。




「前から思っていたことを言っていいか?」


 魔眼持ちの魔物に操られ鬼化して暴れていたリオンを、打ち捨てるように投げたカイルは、三人に向かって言葉を放つ。


「君達を殺したい。常々思っていた」


 勇者ナオフミは間違っていなかった。これはカイルがずっと心の内に秘めていた言葉だ。

そう、他の番を排除して、己だけの番にすることをだ。


「あ?そんなこと俺も思っている」


 オルクスは未だに石化が解けないものの、殺気立って口答えをする。


「カイル。今までシェリーを一人占めしていてそれを言う?苛ついているのは俺も同じだ」


 グレイはふらりと立ち上がって、カイルに詰め寄る。少し目を離したときに、番の儀式を完遂させたカイルを許せないと言わんばかりに。


「本気で戦うなら相手になりますよ」


 オルクスの治療をやめて、長い杖を掲げるスーウェン。


「本当に君たちの愚かしさには反吐が出る。俺たちが弱いとシェリーが死ぬ。俺はそう言ったはずだ」


 これは決められた未来。シェリー一人の力ではたとえ魔王を倒せても、シェリーが生き残れる可能性は皆無。これが黒のエルフの未来視だ。

 今まで見聞きしてきたことから、黒のエルフであるアリスの予言は、ほぼ的中している。


 いや、エルフの王となるべく喚ばれた変革者のアリス能力は、白き神から与えられたもの。外す方がおかしいのだ。


「なに仲良しごっこをしているのだ?」


 仲良しごっこそれは、どういう意味だろうか。


「カイル。突然現れて何を言っている」


 リオンが復活したようだ。黒髪に戻ったリオンが、カイルを睨みつけながら立ち上がる。


「何を言っているといいたいのは、こっちのセリフだ。シェリーの情報では、魔眼を持つ魔物の数は少ないと言っていたはずだ。なのに、集団で行動して何になる」


 これは勇者ナオフミが、このダンジョンを使って魔眼の耐性を得ようとしたときの話だ。魔眼を持つ魔物が少ないので、耐性を得るのに一ヶ月もかかってしまったということだった。


 ならば、数が少ないということは一箇所で遭遇する魔眼持ちの魔物は1体ほど。それを四人で倒して耐性を得ることができるかという話だ。


「グレイ。君が魔眼の抵抗力を上げるのに魔眼持ちと一対一だったのではないのか?それでどれぐらいの月日を要した。俺はオーウィルディア大公代行に相手をしてもらって一日だったがな」


 カイルは皮肉めいた笑みを浮かべながら言う。一日で魔眼に対する抵抗力を上げたのに、お前たちは四日もかかって何をしていたのだという笑みだ。


「そうそう。それは私も思っていたことだよ」


 そこに、ここには居ないはずの声が、辺りに響き渡ったのだった。



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