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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
27章 魔人と神人

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 レイアルティス王は身の丈ほどの杖を掲げ、杖の先に手のひら大の球状の光を灯す。


 見た目はただの光だが、その中には強大な力が渦巻いていることが空気を伝って感じられた。


「こ……これは、呪具の方が耐えきれない」


 ただの光にしか見えないが、それを支えている魔術を施行している杖の方が、ガタガタと震えだしている。まるで、今にも壊れそうなぐらいだ。


「なぁ、佐々木さん。あの杖って邪魔じゃないのか?」


 床に降り立ち、シェリーの斜め前で様子を見ているシュロスからの言葉だ。確かにシュロスの時代には、魔術の施行を補助する杖はなかっただろう。何故ならシュロスが基盤を作ったため、シュロスにとっては不要なものだった。


「さぁ?私は補助が必要なほどの魔術は使わないので、邪魔かどうかはわかりません」

「魔力を安定的に放出する道具だからね。魔力が多い人には特に必要だね」


 シェリーの言葉を補足するようにカイルが答える。レイアルティス王は色々逸話がある人物だ。だがこの慌てようをみると、エルフの王とやり合ってもこのようなことはなかったのだろう。流石に世界を覆う術の発動には耐えきれないようだ。


「赤目の王様。呪具は自分自身だ。杖は必要ない。ってその目を使えよ!それどこかの神さんの目だろう?」


 レイアルティス王の赤い瞳。王族である条件の一つである赤い瞳。

 それは女神ナディアの子孫であることを示すラースの神眼。


「この目は使わないことを決められている」


 そう言ってレイアルティス王は杖を持っていない方の左手で赤い目を覆う。それは女神ナディアの祝福の否定を意味していた。


 オリバーが言うグローリア国の祖は大魔女エリザベートとされているが、初代の国王はアレクオールディア・ラース。ラースの大公になる者だった。


 その時代から女神ナディアの力を頼らずに、他の神々を信仰し女神ナディアの力の代わりにしようとしていた。


「決められているって、生きているときの話だろう?俺もそうだが、一度身が滅びたのだから関係なくないか?」


 シュロスの言葉にレイアルティス王はハッとして、シュロスの方に視線を向ける。


「そうだな。確かに今の私には王族としての誓約を守る必要はない」


 何かに吹っ切れたレイアルティス王は、右手に持っていた身の丈ほどの杖を手放した。


「『封印の解除』……」


 するとレイアルティス王の纏う魔力が、爆発的に上昇する。レイアルティス王に施されていた封印はシェリーに施されているような簡易的なものではなく、一部の魔力を使って厳重に封印されていたようだ。


「死した身で初めて言葉にするのもなんだが、女神ナディアに願おう。力をと」


 初めて女神ナディアに願う。女神ナディアとラースの子孫であるが、四千年前から信仰を途絶えさせた一族の言葉だ。その言葉に女神ナディアが応えるかどうか。


『私の愛しい子供たちの願いを叶えてあげましょう』


 どこからともなく聞こえた鈴が転がるような声と共に、光の玉が一気に巨大化し世界を覆い尽くした。

 女神ナディアにとって大切なことは、己とラースの子であること。ただそれだけなのだ。


 そして冬の空に風が吹き荒れ、更に術式を上空に押し上げる。空は暗転し術式の光が空に浮かびあがった。


 だが、そのことに人々が気づいている様子もなく、部屋の外が騒がしくなることはなかった。


 これも神々の力が加わっているからだろうか。人々に降り注ぐ光の雨は、誰にも気づかれることなく世界を満たしていったのだった。




 いや、気づいている者もいた。


「ロビン。夜に星じゃないのが空にある。綺麗だねぇ」


 世界の理から外れた者たちの目には映っていた。


「シェリーちゃんが何かしてるのかな?これエリザベートの術式だね」

「エリーの?そうだったね。六番目がエリーの物が欲しいって言っていたよね」


 ラフテリアとロビンである。

 夏の夜空を見ながらラフテリアははしゃぎ、ロビンは術式を読み解こうとしていた。



 そして異変を感じて飛び起きて、地下室からでてきたオリバーだ。


「女神ナディアの力を感じる。ということは嫌われているシュロスではあるまい。ならば、施行者は誰だね?これほどの術式を発動できるものなど、この世にはおらぬはずだが……」


 オリバーとしては誰が術を発動したかが気になるようだった。




「うぉ!なんか空が怪しいことになっている!」

「エン様?どうかされましたか?」


 変革者である炎王が、空が突然暗くなったので何事かと窓から見上げている。


「これはなんだ?ヤバくないか?」

「あの……どうかされましたか?」

「いや、これが見えないのか?え?ルーチェ様」


 炎王は怪しい術が展開されている夜空から室内に目を向けると、金色の光を視界の端に捉えた。

 それは暗闇の中でも淡く光をまとっている光の女神ルーチェだった。


『あの者の存在は絶対に許せぬ!妾は反対した!あのようなことが、許されることではない』


 思いっきり炎王に八つ当たりをしている。そのルーチェの姿を見て、炎王は片手で頭を押さえていた。


「さっきまで一緒にいたのに、何をやらかしたんだ佐々木さんは?」


 いつもはにこやかに微笑んでいる女神ルーチェとはかけ離れた姿に、原因がシェリーであることを炎王は決めつけていたのだった。



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