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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
27章 魔人と神人

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「それで説明してくれるかしら?」


 騎士団本部の会議室に通されたシェリーは、大きな円卓の席に座るように促され、近くに座ったサリーから質問を再びされた。


「先ほどクソ狐を連れて来るように頼んだのは、第四師団の顧問の方です……ウロウロしない!」


 シェリーは名を言わず回りくどい言い方をしながらサリーの質問に答え、その後に声を張り上げて言った。もちろんシュロスにである。


 大きな円卓に占領された室内を物珍しそうにウロウロしていたシュロスは、シェリーの言葉に何かの紋様が描かれたタペストリーを背にした席に腰を下ろした。


「ただのシュロスさんが座る席ではないですよ!」

「え?どこでも同じじゃないか」


 違うことを説明すべきなのだが、大人しく座ってるのであれば、そのまま放置した方がいい。そう判断したシェリーはため息を吐きながら、続きを話し出す。


「イスラ・ヴィエント閣下です」

「え?一度もお会いしないと思っていたら、見えない種族だったなんて」

「違います。認識できないだけです」

「シュピンネ族は恐ろしいと聞いていたけど、理解出来たわ。見えないなんて」


 サリーは初めて出会ったシュピンネ族に噂と違わぬ存在だったと納得している。

 しかしそれは姿が見えないからと思っているようだ。


「違いますが、まぁいいです。それで本題なのですが、聖女お披露目パーティーに招待する方を、オーウィルディア様からミゲルロディア大公閣下に変更して欲しいのです」

「あら?そうなの?それぐらいいいわよ」


 サリーには、ラース公国の不穏な噂は耳に入っていないのか、普通に了承した。ラース公国の大公を招待することに何も問題はないと。


「それから……今日は早いですね」


 更に話を続けようとしていたシェリーは、背後の扉に向かって言った。するとスッと両開きの扉が開く。

 そこには苦虫でも噛み潰したかのような表情をしたイーリスクロムが立っていた。珍しいことだ。


 シェリーをそんなに待たせずに現れたこともそうだが、なんとも言えない顔をしていることもだ。


「早い?会議中に、引っ張り出されたのだよ?」

「それは、ありがとうございます」

「君のためじゃない。イスラ閣下がその姿を見せて、来るように言われて逆らうことができる者が、この国にいると思っているのかな?」


 この国を長きに渡って支えてきたクロード・ナヴァルと同列視される人物に、何かを言えるものはこの国の王でさえできない。

 獣人の国は強さが全てだ。


 ヒューレクレト第五師団長がイーリスクロムの言葉よりも、黒狼クロードの言葉を優先させたように、イスラ・ヴィエントに顔をかせと言われて、今は会議中だからという言い訳如きでは断れないというのだ。


 この国の歪さが見て取れる。


 だからシェリーは何度も命令系統を1本化しろと言っているのだろう。


「さぁ、私から見れば現役を引退した老兵にしか見えません。空いている席に座ってくださいますか?」


 シェリーの言葉にイーリスクロムはため息を吐きながら、会議室の中に一歩踏み入れる。勇者の血筋のシェリーの言葉に従っていることに、イーリスクロムの勇者への畏怖が見て取れるというものだ。


 そして一歩踏み出したままイーリスクロムは固まってしまった。いや、今までそこまで気にならなかった九本の尾が逆立っている。

 そのイーリスクロムの視線は、部屋の奥にかかっている大きなタペストリーに向けられていた。いや、その前の席に座ってイーリスクロムを見ているシュロスに固定されている。


「あ……あれは……なに?」


 イーリスクロムは、喉に何かが詰まっているのか言葉をつまらせていた。


「ただのバカですので気にしないでください」

「それで済まされるようなモノではないよね!」


 シェリーの言葉にツッコミを入れるイーリスクロム。そこに慌ただしく廊下を駆けてくる音が重なった。

 側仕えが出入りする用なのか、会議室の端にある片開きの扉がぶっ飛んだ。


「さっきユーフィアと連絡をとって何を言っていた!」


 第六師団長のクストが会議室に入ってきた。どうやらシェリーがユーフィアに連絡を取っていたときに側にいたようだ。


「今日は休みだったのですか?第六師団長さん」

「昼休みに戻って……お……お前今度は何を拾ってきた!」


 クストは時間が出来たので、番であるユーフィアに会いに屋敷に戻っていたようだ。その時に丁度シェリーから連絡が入ったのだろう。


「第六師団長さん。私が連絡をとったときは七半刻(14時)でしたよ。昼休みにはちょっと長いのではないのですか?」

「俺はいいんだよ!それよりもアレはなんだ!人のように見えるが絶対に人族じゃないだろう!」


 クストからすれば、ユーフィアに会いに帰ることは正当化されているようだ。このようなことが積み重なり、侍女の金狼マリアと喧嘩に発展するのが予想できたのだった。



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