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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
27章 魔人と神人

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「内容的にはマルス帝国というよりも、グローリア国の調査内容ですね」


 シェリーはここまで来たのに、全く以て必要のない資料だったことに落胆をしている。

 確かに討伐戦時代となると、マルス帝国よりも第二王子が魔王であった、グローリア国の内部調査をするのは当たり前なのかもしれない。


「ササっち、マルス帝国のことはほぼコルバートの魔女っていう人のことだね。魔武器云々って……フィアちゃんかぁ」


 討伐戦時代のマルス帝国の要注意人物はやはり、ユーフィアだったようだ。その攻撃性に特化した魔武器は獣人の国でも脅威に捉えられたのだろう。


 束になった資料の一部を陽子が見て納得している。


「ふむ。内容的には勇者が参戦する前後ぐらいかのぅ。まぁ、勇者という者を中心として、北側の三国が挙兵したから、この辺りまでしかないのは、必然的じゃな」


 気配を感じさせないイスラも、しれっと資料を見ている。

 この中では唯一討伐戦の戦況を知っている人物だ。


 この話からいけば、勇者が討伐戦に参戦してから、第零師団も討伐戦の兵士として戦いに赴いたということなのだろう。


「はぁ、クロードさんが居た時代の、もっと古い資料が欲しいのですが、この分だと塵になっていそうですね」


 約三十年前の資料でも、触れば瓦解する感じなのだ。クロードが現役時代となると、形すら留めていないと思われる。


 そこでふとシェリーは思った。


「クロードさんのことですから、この室内に時間加速が施されているぐらいわかっていたと思うのです。もしかして、ワザとここに資料を置いて、朽ちさせていた可能性がありますね」


 クロードは戦場に向かうときに、己の痕跡を消すがごとく、全てを処分してから死地に向かっていった。ならば、表に出せない資料はワザとここに置いていて、朽ちさせ、塵になったところで、外に出せば情報漏洩にはならない。

 シュレッダーというものがないため、この部屋に放置するという選択をした可能性がある。


「取り敢えず、地下で密談をするには、いい場所だということがわかりました。それでシュロス王」

「なんだ?流石に塵になったものは戻せないぞ」


 チート過ぎるシュロスでも、散り散りになったものは原状復帰はできないとシェリーに言う。だが、シェリーはそうではないと、ため息を大きく吐いた。


「はぁ、違います。ここの出入りは限られた者しかできないと思うのですが、黒いカードの再発行は可能ですか?」

「それならコレだろう?」


 シュロスは何もない空間から黒いカードを引っ張り出すように、シェリーに見せつけた。それもドヤ顔でだ。


「登録の仕方はどのような感じですか?」

「え?どこから出したかぐらい聞いてくれないのか?」

「それ、別に意味はないですよね」

「佐々木さん、ノリが悪い」

「予備を含めて三枚ほど創ってください。それぐらいできますよね」

「そして、人使いが荒い」


 シュロスは肩を落としながら、シェリーに黒いカード型の鍵を渡そうと一歩踏み出したところで、大きく後方に飛び退いた。


「佐々木さんの彼氏、絶対に俺をヤる気だろう!ここで普通大剣を抜くか!」


 シェリーの横ではシュロスを威嚇するように、カイルは背負っていた大剣を抜き、振り切った姿で居た。そう大剣を振り切っているのだ。


「うわぁ、これは流石の陽子さんも真似できないよ。竜の兄ちゃんの衝撃波を壁が呑み込んでいったよ。あれ、どうなっているの?」


 陽子は興味津々に、体育館の何も変哲がない壁を見ている。それはシュロスから少し横にズレた壁だ。


「うーん。元々ここで修行する想定だから、内装が壊れないように設計されているんじゃないのか?ユールクスの創るガーデンに似ているけど、ちょっと違う気がするな」


 炎王はここは修行をする場所であるから、それぐらいは想定されているのだろうと納得している。


「ちょっと聞いてくる!」


 陽子は何かとダンジョンを破壊されているので、今の現象がどうやって起こったのか気になったようだ。『佐々木さんの彼氏、心狭すぎ!』と叫んでいるシュロスの元に駆けて行く陽子。


「一つお尋ねしてよろしいか?」


 陽子の背中を見送っている炎王にイスラが声を掛けてきた。


「シュピンネ族の御仁。如何なされた?」

「初代炎王からすれば、我は若輩者であるゆえ、そこの者たちと同様にタメ口でお願い致す」


 姿からすれば、イスラの方が年上に見える。だが、千年も生きている炎王と比べれば、殆どの者たちは若輩者になってしまうだろう。

 超越者になろうとも種族の壁は高いということだ。


「我の友である黒狼クロードに生きる道は無かったのであろうか?」


 ずっとイスラの心の中に引っかかっていたこと。黒のエルフに予言されたからと言って、本当にクロードは死すべきだったのか。

 己がここに生きているように、生きる道はあったのではないのか。


 クロードに刀という武器を与えた炎王にイスラは問いたかったのだろう。


 貴方は知っていたのなら、別の道を示すこともできたのではと。



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