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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
27章 魔人と神人

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「ささっち!こっち!こっち!」


 シェリーは淡く光る空間を最小の盾を足場にして、駆け下りているところで、陽子の声が聞こえてきた。

 その声はかなり上の方から聞こえてくる。


 視線を上げてみれば、ライトのような光源が左右に揺れているのが見えた。それもシェリーの位置からすると五階建ての建物の上から光を掲げられているような感覚がする。


「え?入ってきたところより、上じゃないか」


 シェリーの直ぐ側で炎王の声がした。あれから直ぐに下に降りたので、空中を飛べる炎王は足場を作っているシェリーに追いついたのだ。


「恐らく、この穴は別の入口がないか、探した痕跡なのかもしれませんね」


 シェリーが予想を言うも、穴を掘ったというには、とても広い空間が四方八方に広がっている。いや、陽子がダンジョンに縦穴を作られて怒ったぐらいだ。

 過去にこの国の中枢にいた英雄たちなら、これぐらいは簡単なことだったのかもしれない。


 そして、上に向かおうとすると、横から手が出てきて、シェリーは横向きに抱えられてしまった。


「カイルさん。これぐらい自分で登れますが?」


 今までシェリーが身の丈程の階段を飛び降りるように落ちていた横で、カイルはその側で付き添うように白い翼を広げて飛んでいた。

 だが、流石に建物の五階分を上るとなれば、手を出してしまったのだろう。


「俺が抱えたほうが早いよね」

「早いかもしれませんが、これぐらいの距離なら駆け上れます」


 空中戦を見込んでいるシェリーからすれば、十五メル(メートル)程の高さであれば、許容範囲だという。


 が、そう言っている間に、目の前には陽子の姿があった。

 確かに翼がある者の方が空中では有利だろう。だが、カイルに抱えられているシェリーは何処となく、不機嫌な雰囲気をまとっていた。


「はぁ、いつも言っていますが、上空から落ちることも、上空を駆け上がることも、私の中では想定内ですので、手出し無用です」


 シェリーに構いすぎるカイルに釘を刺した。シェリー自身、できるできないの範囲は理解していると。


「俺がそうしたいだけだから、シェリーは気にしなくていいよ」

「はぁぁぁぁぁぁ」


 番の儀式をしてからというもの、シェリーが思うように動けないことが多く、思わず盛大なため息が出てしまったようだ。


「佐々木さん。まだ一人だから大丈夫だ。多くなると身動きが取れなくなるぞ」


 シェリーとカイルのやり取りを側で見ていた炎王は、シェリーの肩を持つ言い方をする。それも遠い目をしてだ。


「エンエン。昔はモテたんだねぇ」


 そんな炎王に陽子がケラケラと笑いながらいう。


「さっきから、俺を年寄り扱いしていないか?」

「そんなことは無いよ」

「龍族の平均年齢を知らないのでなんとも言えませんが、一万年ぐらい生きそうではないですか」

「そうだな。竜族の中でも千年ってまだ若い方だな」


 言われたい放題の炎王は、カイルの言葉を聞いて、竜族と同じにしないで欲しいと呟く。


 そこでふと、一番長生きをしている者の声が聞こえず、シェリーは辺りを見渡した。今、シェリー達が立っている場所は橋のように空中に道が浮いている場所にいる。ただシェリーの後方は暗すぎて何も視界に収めることができない。

 これは陽子がまだダンジョン化していないからだろう。


 そして目の前には円柱状の柱のような物がある。これはラフテリア大陸で見た中央にそびえ立つ柱と同様の物だった。


「あ、エレベーター」


 その円柱状の柱には三角の下に行くボタンがある。


「で、それは何です?」


 その下に行くボタンに繋がる鎖の塊がある。たとえて言うのであれば、下行きのボタンを押そうとした人を鎖でぐるぐる巻にして、動けないようにしている感じだ。いや、人の形をしているので、人と言っていいだろう。


「え?あの馬鹿が自分だけさっさと進もうとしていたから、陽子さんがお仕置きしているところだよ」


 やはりシュロスだったようだ。しかし、鎖に巻かれていると言っても、びくとも動かないのは気味の悪さを感じてしまう。


「そう言えばエンエン。昔モテていたっていうなら、ささっちに対処法を教えてあげれば?ささっち、色々大変そうだし」


 ダンジョンマスターである故か、どこか人ごとの陽子は、番にまとわりつかれない対処法を教えてあげればいいと言う。確かに、炎王の番であるリリーナは、あっちこっちに顔を出している炎王について回るということはしていない。


 陽子の言葉に炎王の目のハイライトが消えた。

 これはまるで過去にとんでもないことが起こったと言わんばかりだ。


「……いや、俺に言えることはない。強いていうのであれば、食べ物でご機嫌とりをして、物でご機嫌取りをするしかなかっただけだ」

「まぁ、それは炎国に行ったときにそうだろうなと思いましたよ。簡単に異世界の物が出せるからと言って、与えすぎていると」

「それ、なんでもかんでも要求してくる陽子さんに言ってくれないか」

「てへっ!」


 シェリーが精霊に何かとアイスを与えていることを炎王に言えば、それがそのまま陽子に向かって行った。

 はにかんだ笑みを浮かべる陽子に視線を向ければ、見た目はカバだけど妖精というキャラ物のTシャツを着て、ジーパンを履いている姿が目に入る。


 いつも同じような服装だが、同じ服を着ているところを見たことがないと、ある意味シェリーは納得したのだった。



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