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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
27章 魔人と神人

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「閣下。それはおかしいですね。地下道は以前からあったはずです」


 シェリーが言うように、王都メイルーンの第一層と第二層の地下には、以前から地下道があったはずだ。その元々あった地下道を陽子がダンジョンを広げるために、血管のように用いたに過ぎない。

 それもまだ一部のみだ。


「フォッフォッフォッ。なんじゃ。知っておったのか。しかし、なんとも言えぬ生き物は住み着いておらなんだぞ。普通は金属に命は宿らぬものぞ」


 イスラは嘘を言っていた。

 何かを企んでいそうな者たちに、カマをかけたのだろう。この地下道にしては微妙に明るく、生き物と言っていいモノが徘徊し、魔物というには物騒なモノも徘徊しているのは、お前たちの所為ではないのかと。


「それで、お主たちは何の悪さをしようとしておるのじゃ?」


 イスラは若造と言っていい者たちが何か悪いことをしようとしていると決めつけている。しかし、それも仕方が無いことだ。普通は超越者同士で馴れ合うことなど、無いと言っていい。


 何故なら、個というものが際立っていることが理由に上げられる。それは超越者に至るまでの過程が他を拒むからだ。

 これはシュロスのように個人で成し遂げた者の話だ。


 だが、ここにいる者たちはそうではない。何かを背負い、何かを成し遂げるために力を得てきたのだ。そこが違う。


「悪さとは心外ですね。閣下。第0師団を復活させようと動いていることは、ご存知のはず」


 老獪な笑みを浮かべているイスラとは対照的に、シェリーは無表情のまま淡々と答える。


「地下の施設のことは黒狼クロードから聞いてますよ。そこに何があるかは存じませんが、そこに行くことが必要だと思ったので、ここにいるのです」

「さて?そこに行くための鍵はわしが持っておるのじゃがのぅ」


 そう言ったイスラは、すっと手を掲げた。その手には黒い色をした薄い板状の物を持っていた。クロードが当時の第三師団長に託したと言っていた地下施設に入るための鍵に見える。


 だが、その見せられたものにもシェリーは眉一つ動かさなかった。


「ええ、持っているとすれば、閣下か当時統括副師団長をしていた赤猿と思っていましたよ」


 シェリーはクロードが第三師団長に託したと言ったにも関わらず、現在の第三師団に存在していない時点で予想はしていたのだろう。


 人族の生は短い。ならば、討伐戦に参加しなかったイスラか、討伐戦を生き残れそうなフラゴルに託したのではと。


「しかし、私ごときが鍵が欲しいと言っても、いただけない方々であることには変わりありません。ですから、鍵を用いずに入ることにしたのです。そのために少々、大人数になっていますが、それは仕方が無いことです」


 鍵を用いずに入る。それはシュロスに開けてもらうということなのだが、そのシュロスの制御に人がいるとシェリーは言っている。

 だがイスラには違う意味に捉えられたようだ。


「それは力技で、こじ開けようと言うのかのぅ」


 開かずの扉を数人がかりで、強引に開けようとしているように、勘違いされた。


 そして、愚か者を蔑むような目でシェリーたちに向けて言う。


「そんなことでは、扉は開かぬよ」


 いや、既に過去に実践済みだったようだ。

 この言い方だと、クロードとイスラとで強引に開けようとしたのかもしれない。


 この先に暗闇が広がり、足場になる土がない理由が、そこにあるのかもしれない。強引に開けようとしたところで、周りにある土が吹っ飛ぶだけで、中央にある施設には傷一つつけられなかったと。

 だから、鍵となる物がどこかにあると考え、探し出した流れになったと。


「ええ。そうでしょうね。アーク族の王の産物ですから。だから、創った本人を連れてきたのですよ。ご心配されずとも、超越者が二人もいれば、上の王城に被害が及ばないように、することは可能です」


 シェリーはそう言って、背後にある闇に身を投じた。そのシェリーの行動に慌てて、カイルが続いていく。


「あー。シュピンネ族の御仁は、この国に雇われているのか?騒がしくして悪いが、俺も巻き込まれた側なんだよ。これが終われば国に帰るから、長居はするつもりはない」


 炎王は自分はこの国に長居するつもりはないと、シュピンネ族のイスラに一言もらして、暗闇の中に消えていった。


 それはシュピンネ族とは敵対しないとアピールしただけに過ぎない。炎王にそのような行動をとらすほど、シュピンネ族とは厄介な種族ということなのだろう。


「炎国を千年もの間、治めてきた王を誰も敵だとは思っておりませぬよ。最後のエルフの王の結末を若王に辿らせるわけには行かぬのでな。わしが警戒しておったのは、なんとも言えぬ気配を放つモノじゃ。そうかあれがアーク族の王。納得できるものではあるのぅ」


 誰も居なくなった空間で、イスラの声だけが響いてきた。そう、イスラ自身の姿も既にその場には無かったのだった。


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