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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
27章 魔人と神人

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「陽子さん。シュロス王は飛べるので、その辺りは無頓着なのではないのですか?」


 空島という超上空で暮らしていれば、足元に地面がないことなど当たり前であり、住んでいる場所のみ地面があるのだ。そして、アーク族は地上に降り立たない限り、空の自由の権利を白き神から与えられている。


 足場があるか無いかなど、彼らにとって些細なことなのだろう。


「え?陽子さん。どう対応していいのかわからないよ」


 シェリーの屋敷がある第二層から第一層内を地下道を通ってきた半刻(1時間)ほどで、すでに陽子はシュロスにさじを投げていた。


 だが、ここで陽子に逃げられると、問題行動の塊であるシュロスを監視することができなくなる。

 もし、ここでシュロスが何かふとしたことで、空島に戻り、アーク族と接触すれば、それはややこしいことに、なりかねないからだ。


「陽子さん。私はこれから色々動いていかないといけません。そうすると、今までのように陽子さんのダンジョンにダンジョンポイントの加算という貢献ができなくなります」

「はっ!ささっちが居ないとなると、大魔導師様ほどではないけど、竜の兄ちゃんからのポイントが入らないってこと!」

「……まぁ、そうですね」


 シェリーはシェリー自身として、陽子のダンジョンに貢献できないことを言ったのだが、陽子としてはオリバーと同格のカイルからダンジョンポイントを得られないことが、問題だったようだ。


「その代わりのシュロス王です。一度死んだオリバーでも問題ないということなら、シュロス王でも問題ないでしょう」

「くぅぅぅぅー……ささっちに指摘されたら、そうなのだけど……ここ一時間程のポイントが跳ね上がっている。以前、しれっと横取りされた分に匹敵するぐらい」


 横取りされたというのは、アーク族が悪魔化するのに使用したポイントのことだ。

 陽子としてはポイントだが、相手からすれば世界の力だ。それはダンジョンのことなど考えもなしに奪っていくだろう。


「逆に考えれば、一気にダンジョン化するいい機会!ささっち。陽子さん、あの馬鹿をちょっと殴ってくるよ」


 陽子はそう言って、暗闇の中に身を投じた。恐らく本気でダンジョンを広げていっているのだろう。

 いつもは徘徊する魔物の怪しい鳴き声ぐらいしか聞こえないが、ダンジョン自身が動いているかのようにミシミシと鳴っている。


「佐々木さん。さっきの話、俺の存在がないように言っていたよな」


 シェリーの背後からそんな声が聞こえてきた。炎王である。


 炎王も超越者の一人に数えられる。その超越者が、陽子のダンジョンの中に居るのだ。


 現在、ダンジョンに影響を与える超越者は五人。未だかつてない程の人数の超越者がこの国の中枢にいるのだ。

 それは陽子のダンジョンにも多大なる影響を与えているだろう。


 五人?

 数が合わない。


 大魔導師オリバー。銀爪のカイル。初代炎王。そしてアーク族の王シュロス。他に誰がいるというのだろう。いや、ただ一人シェリーが感知できない存在がいる。


「こんな地下で何をしておるのかのぅ」


 シュピンネ族のイスラ・ヴィエントである。


 その声にその場にいた者たちが一斉に声の主に視線を向けた。


「怖いのぅ。そんなに殺気立たなくてもよかろう」


 そこには右手で杖をついた老人が立っていた。漆黒の髪は闇に溶け込むように、その姿を目立ちにくくしている。が、それを拒かのように柘榴のような赤い瞳が光を宿していた。


 その姿を見た炎王はすぐさま殺気を押さえる。


「シュピンネ族か。佐々木さん。この国にもシュピンネ族がいるじゃないか」


 イスラをシュピンネ族と認識し敵意を持つものではないと判断したのだ。

 そして、シェリーが炎王に人材が欲しいと以前に言っていた種族がこの国にも存在しているではないかと、シェリーに向かって言う。


「断られましたよ」


 シェリーはクロードを餌にしてイスラを釣ったにも関わらず、いい返事がもらえなかったのだ。


「閣下。このような地下にどのようなご用件で来られたのですか?」


 そもそもこの地下は地上とつながっているのはシェリーの屋敷の場所しかなく、あとはダンジョンしかない。

 ならば、この老人はどうやってこの場におり、どのような用件があるというのだろうか。


「なに。ちょっとした散歩じゃ。ちょっと離れていただけで、王都の下には道が出来ており、見たことがない生き物が住み着いておる。面白いのぅ」


 そう言ってイスラはカッカッカッと笑い出す。


「しかし、この国を一人でもひっくり返せる者たちが集まって、コソコソしているとなれば、何の悪巧みをしておるか気になるではないか」


 超越者の存在は一人でもいれば、その名だけでも、国の防衛にもなるという者だ。そんな脅威的な存在が固まって地下を移動しているとなれば、これは何か悪巧みをしているのではと、勘違いされてもおかしくはないことだった。



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