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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
27章 魔人と神人

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「なぁ、エンオウって言ったか?さっきのどうやったんだ?術式を使って無かっただろう?」


 中身が霊体だと勘違いされているシュロスは炎王に興味津々で聞いてきた。シュロスの中では、空間収納には膨大な術式が必用だと理解している。炎王が使っている空間収納が気になったようだ。


「俺は魔術創造があるから、全てそれで術を使っている。だから、細かいことを聞かれても答えられない」


 そう、炎王はチートな魔術創造が白き神から与えられていた。これはシェリーのスキル創造に匹敵するものとも言える。いや、シェリーがよく炎王の所為でスキルが作れないと言っていることから、シェリーよりも上位の力となると思われた。


「へぇー。俺と似てるなぁ。俺は『創造の具現化』だ」

「「「……」」」


 その言葉を聞いて三人の視線が突き刺さる。


「え?そんなものどこにあるの?陽子さんからは見えないよ」

「俺からも見えないってことは、隠しスキルか?」

「なんて危険なものを与えたのだ」


 一人、オリバーはシュロスの答えに、何もない空間を見ていた。まるで、そこには何かがいるかのように文句を口にしている。


「でもさぁ、いつも佐々木さんが直ぐにグサグサと作ったヤツを否定してくるんだよなぁ」

「いつも?」


 シュロスの言葉に陽子から疑問が出てきた。いつもということは、出会ったのは最近ということではない。

 しかし、何かとシェリーと話をしている陽子がおかしいと首を傾げている。


「ささっちから、君の話は聞いたことないけど、いつ出会ったの?」

「ん……最初にであったのが、二十歳(はたち)のときだったか?それで、最後に会ったのが、神さんに会ったときだから、五百歳ぐらい?」

「ないわ!ささっちは今年で十八だからね!」

「え?聖女だからだろう?」


 陽子とシュロスの間ではかなりの乖離が起きている。陽子は現実的に十八歳のシェリーが二十歳から五百歳のシュロスに会い、それから幾年たったかわからない霊体になった存在がここにいるのだ。現実問題として矛盾してると言う。

 だが、シュロスの中では、NPCノンプレイヤーキャラクターの聖女だから、可能だろうという認識だ。そう、何故ならシュロスの中では『聖女佐々木』はサポーターなのだから。


「ささっち!この鎧おかしい!」


 話が噛み合わないと陽子はシェリーに助けを求める。するとそこに、一人分のカレーをトレイに乗せているシェリーがやってきた。

 室内はなんとも言えないスパイスの香りで満たされる。


 そのトレイをオリバーの前に置いた。その頃にはオリバーはちゃっかりと取っていたメモ用紙をしまって、食べる気満々になっている。


「だから、鎧を壊していいと言ったではないですか」


 シェリーは呆れたように言って、再びキッチンに入っていった。


 そして入れ替わるようにカイルがトレイを二つ持ってテーブルの方に置いていく。


「ヨーコさん。食べたかったカレーできたよ。炎王はどこに座る?」

「う……うん。ありがとう竜の兄ちゃん……私が食べたいというより、凍死しないために言ったのだけどね」


 陽子はカイルをシェリーと一緒のキッチンに閉じ込めるために、シェリーにカレーを作って欲しいと言ったのだ。いや、そこにはオリバーをここに引き止めるという意味も含まれていた。

 あの状況下で冷静に考え、己の状況改善に必要な一言を陽子は口にしたのだった。


「いや、俺はもう帰るよ。宴の中を抜け出してきたからな」


 炎国では年明けの宴がまだ続いていたようだ。その席を抜けて炎王は突然連絡をとった陽子に応えてくれた。必死になってスパイスが欲しいと言う要望に。


「エンエン。この状況で帰るとかありえないよね。ささっちが、アレを変革者だって言っていたよ」


 帰ろうとする炎王を陽子は着物の袖をガシリと掴んで引き止める。勝手に帰っていかないようにだ。


 引き止められてしまった炎王は金色の瞳を、白い甲冑に向けた。疑心暗鬼の目を向けたのだ。


「いや、アリス以上におかしい奴ってやばくないか?」


 そもそも黒のエルフのアリスを基準にするのもおかしなものだが、それほどシュロスの言動は逸脱していると、感じているのだろう。


「だから、こんなところに陽子さんを一人置いてくなんて、エンエンは薄情じゃない?」


 そう言いながら、陽子はオリバーの向かい側の席に炎王を座らす。その横に陽子は腰を下ろし逃がすまいとしていた。


 そこに再びシェリーとカイルがカレーを乗せたトレイを持って戻ってくる。


「何故、シュロス王が座っているのですか?」


 シェリーはクソ虫でも見るような視線で、カレーを既に食べ始めているオリバーの横に着席しているシュロスに尋ねた。甲冑のクセに、カレーを食べる気なのかと言わんばかりの、視線を向けているのだった。




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