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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
27章 魔人と神人

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「俺からすれば、変わらないと思うけどなぁ。ほら、死の王は死そのものって感じだろう?正に死がこの世に化現したってやつだ」

「陽子さん会ったことないから、そんなこと言われても困る」


 モルテ王と比べれば、変わらないだろうというシュロスの同意を求める言葉に陽子は保留する。会ったこともない人物をどうこう言えるものではないと。


 そこに玄関の方から甲高く扉をノックする音が聞こえてきた。


「エンエンが来た!陽子さんが出るから、ささっちは出ていかなくていいよ!」


 陽子が呼び出した炎王が来たようだ。そして、陽子はキッチンから出なくていいとシェリーに伝える。普通であれば、陽子が客人を迎え入れるということはしない。

 だが、カイルのご機嫌とりのために、陽子が玄関の方に……いや、その場から消え去った。


「は?ヨウコさんが消えた!転移を使ってないよな。もしかしてヨウコって狐の妖狐ってことだったのか!」


 シュロスは陽子がダンジョンの中を自由に移動している姿を見て、魔術ではなく妖術の(たぐい)かと疑った。


 だが、直ぐに廊下を駆ける音が聞こえてきて、壊れて扉がないダイニングの外から叫んだ。


「陽子さんの名前は、太陽のヨウに子供のコ!」


 これは陽子がダンジョンマスターという固有種であることを否定し、人としてあろうとしている叫びでもあった。


「陽子さん。佐々木さんみたいに、俺を掴んで引っ張らないでくれるか?」


 その背後から呆れたような声が聞こえてきた。炎王である。

 黒髪の長身の男性が着流しのような衣服の上に羽織を着ていた。


 陽子と並んでいると日本人のように思えてしまうが、龍族特有の二本の角が頭から生えているのと、光を帯びたような金色の瞳がそれを否定していた。


「エンエンは直ぐに帰ろうとするから、陽子さんもささっちを見習ってみたよ」

「はぁ。で、あれはなんだ?」


 炎王はため息を吐いたあと、シュロスに視線を向けて尋ねる。見慣れない者だと言いたいのだろう。


「陽子さんにはわからないよ。わかるのはステータスがない。でも自分で超越者とか言っている変なヤツ。あと、何故動いているのか不明」


 ダンジョンマスターである陽子がシュロスのステータスを見れないというのは、死んだ者だからか。そして、陽子は甲冑の中身が空だとわかっているが、オリバーが施したような鎧を動かす動力源が見当たらないと、首を傾げている。


「マジでステータスがない。そんなのダンジョンマスターぐらいしか存在しないと思っていた」


 炎王も陽子の言葉を受けて確認していた。ステータスが無い存在が他にいたのかと驚いている。


 だが、シェリーはシュロスのステータスはカイルよりもオリバーよりも低いと言っていたので、シェリーはステータスを見れていたはずだ。この違いは三人とも他人のステータスの見方が違うため起こったのだろうか。


「君たちは馬鹿かね?」


 そこに呆れたようなオリバーの声が聞こえてきた。そのオリバーに視線を向けると、古びた本を片手に、何かメモを取っていた。陽子と炎王の聞こえてくる話にため息を吐きながら。


「シェリーは動く鎧と言ったではないか。外装だけ見て何がわかると言うのかね?核は見えるところにはありはしないものだ」


 シェリーがシュロスのことを動く鎧と紹介したのは、オリバーがまだダイニングには来ていないときだった。やはり聞こえていたのだろう。


 だが、そこに陽子は居ても、炎王はいなかった。炎王には事前の情報がなかったのだから、陽子と同じ扱いにするのは違うはず。


「え?いくら鎧を着ていても、ステータスを見るのには関係なんてないのでは?」


 動く鎧が何たるかを知らない炎王は普通にあり得ないと返す。だが、陽子はその言葉の意味を理解して、再び白い甲冑を視て、悲鳴を上げた。


「ひぃぃぃぃ!呪われている!何がどうなって、そうなっているのか陽子さん理解できない。ささっち!いったい何を拾ってきたの!」


 陽子は叫びながらシェリーのいるキッチンに向かっていく。その陽子の言葉を受けて、今度はシュロスが首を傾げた。

 そして、本をめくりながらメモを取っているオリバーの隣に腰を下ろす。


「俺って呪われているのか?」


 最初に白き神から呪縛されていると言ったオリバーに確認するために声をかけた。

 シュロス自身は呪われている自覚はないようだ。そう、シュロスからすれば、白き神に己の願いを叶えてもらって、永遠の命を手に入れたのだから。


「己のステータスぐらい見れるだろう?」

「昔、佐々木さんに後出しのように言われて教えてもらったから、ばっちりだ」

「称号はいくつある?」

「称号?ああ……数え切れないなぁ。目を通すのも面倒なぐらい」

「白き神からの称号を除いた全てが、神々からの怨嗟のような呪いだ。よくもここまで至ったものだと逆に感心するものだ」


 白き神が与えた称号は永遠の命ということに繋がる物だろう。

 そして、その一つ以外ということは、シュロスが行ってきた神殺しに繋がる称号と予想ができる。


「ふーん。多分これだな『光陰の回旋』。白い神さんに会った後に出てきたヤツだ」


 光陰。普通に読み解けば光と陰となる。だが、その後に回る意味を持つ回旋があるということは、光陰とは時間を意味すると捉えられる。

 生と死の間で揺らいているとオリバーが言っていた言葉と合ってくるのだった。



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