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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
27章 魔人と神人

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 結局、ああでもないこうでもないと言って、モルテ王の城に昼まで滞在し、エリザベートの資料の内、魔術に関することが書かれているものをもらってきた。


 そして、シェリーは慌てて出かけたままの屋敷に戻ってきた。そう、ルークが出るはずだった剣術大会の一般予選の日に、女神ナディアが神託をしたために、必要になるかもしれない物を一式持ち出して、そのまま3日間戻ってこなかったのだ。


 リビングに転移で戻ってきてダイニングに入った瞬間に、シェリーは舌打ちをする。


「食べて、そのまま」


 ダイニングテーブルの上には、オリバーが食べたであろう食器の残骸が放置されていた。


「へぇ。佐々木さんの家って大きいんだな」


 そんなシェリーに構わず、シュロスは後について入ってきた部屋を見渡して言う。


「普通です。それから、屋敷内で騒ぐと不機嫌な人が起きてくるので、静かにしておいてください」


 昼夜が逆転しているオリバーは現在寝ていると思われるので、起こすようなことはするなとシェリーは忠告する。


「因みにシュロス王よりレベルは上ですからね」

「え?俺より?そんなすげぇヤツに会ってみてぇ!」

「うるさい!」


 シェリーは片付けようとしていた一枚の平皿をシュロスに投げつける。投げられた皿は器用にもシュロスが甲冑の指で受け止め、割れることはなかった。


「因みにカイルさんもシュロス王よりレベルが上ですから、既に会っています」

「佐々木さんの彼氏はもう少し、寛容になるべきだと思う」


 シュロスよりも強い存在に既に会っていると言ったシェリーに対して、シュロスは肩を落としながら別のことを言う。

 そのカイルはシェリーにさっさとキッチンに行くように促し、シュロスの視界には映らないようにしていた。


「しかし、ここって変なところだな。凄く違和感がある」


 シェリーがキッチンに消えて聞いていないだろうに、シュロスは空間を睨みつけながら言っている。


「なんだ?空間を切り取っているのか?それも別々の術式で二重になっている。頭がイカれてるんじゃないのか?」


 シュロスが言っているのは、一つはオリバーが施した結界のことだろう。そして、もう一つは陽子がこの場所まで侵食してきたダンジョンだ。

 シュロスの目には陽子のダンジョンも一種の術式に見えているようだ。


「頭はイカれていませんよ。別々の人が施行していますから」

「え?それだけここが重要施設だってことか?」


 シュロスの見解も間違いではない。シェリーにとって、ルークが住む家が重要なのだ。


「そうですね。その一人には会ってもらった方がいいですね。陽子さん。来てもらえますか?」


 キッチンから出てきたシェリーは何処ともなく声をかける。

 が、いつもなら直ぐに現れる陽子が来ない。声すらもかけてこない。


「陽子さん。変革者のシュロス王ですから、出てきても大丈夫ですよ」

「陽子さん。その怪しすぎる物体に拒否反応が出ているのだけど?」


 陽子は床の上に頭だけをだして応えた。黒髪にこの世界では見られない顔つきの女性。

 それもシュロスのことを人とは認識せずに、物として扱っている。いや、見た目が鎧という時点で拒否反応が出ているのだろう。


 普通であれば陽子の現れ方に、悲鳴に近い驚きの声を上げるものだが、シュロスからは別の声が出てきた。


「うぉぉぉぉ!日本人!」


 そう言って、キッチンの側にいるシェリーの足元に、頭だけを出している陽子に突撃するかのように、白い甲冑が駆け出した。

 が、シュロスの足は空を切り、直ぐ様後方に飛ばされる。


「シェリーに近づくなと言っているだろう!」


 威圧しながら言葉を発したのは勿論、カイルである。

 ただシュロスはシェリーに近づこうとしたわけではなく、シェリーの近くに現れた陽子の元に行こうとしただけだ。決して、シェリーに用があったわけではない。


「佐々木さんの彼氏。ミジンコ並みの心の狭さだな」


 飛ばされた反動で床に転がってしまったシュロスは、カイルの愚痴を言いながら立ち上がる。


「ささっち、何を拾ってきたの?気味が悪すぎ。なんで喋っているのか意味わからないよ」


 陽子の目にはシュロスがどう映っているのか不明だが、生物とは捉えていないようだ。そして、白い甲冑が駆け出してきた時点で、陽子はシェリーを盾にするように、背に隠れてしまっている。


「陽子さん。アレは全ての原因をつくった虫けら以下のシュロス王です」

「ささっち、全然説明になってない」

「佐々木さん。虫けら以下って酷くないか?彼氏を悪く言った意趣返しか?」


 シェリーの言葉に突っ込みを入れている二人に対して、カイルの機嫌はますます悪くなっていっている。


「シュロス王、虫けら以下だと自覚がなかったのですか?」


 そう、シェリー自身が気がついていないことに、カイルは気がついてしまった。


「佐々木さんが酷すぎる」

「ささっちはいつも通りだよ。で?もう少し陽子さんに説明して欲しいな。でないと排除するよ」

「動く鎧です」

「そのままだよ!」

「そのとおりだ!」


 陽子や炎王と話すように、シュロスに対しても言葉を楽しんでいるような話し方をしていることに……。


「やっぱり、気に食わない」



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