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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
27章 魔人と神人

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 シュロスはこの世界を『神の箱庭』と答えた。その答えが出てきたということは、シュロス自身、この世界が別の世界だと認識しているということだ。

 にも関わらず、シェリーのことをNPCと言葉にした。これはシュロス自身の中ではどう折り合いをつけていて、このような答えを出したのだろうか?


「シュロス王。貴方はまだPlayerですか?」

「おぅ?何?その選択肢?ここでログアウトする選択肢が出てくるのか?しかし、俺の身体はもう無いだろう?ってことはだ。ここでログアウトすれば、戻る身体がなくて死ぬってことか……」


 違った。シェリーの未だにプレイヤー気分でこの世界で生きるつもりなのかという質問に対して、シュロスの中では死ぬか生きるかの選択肢になっていた。


 己の身体は死んでいることは認識しているものの、この世界には精神体だけで存在し、ゲームのプレイヤーとしていると思い込んでいる。

 流石、ゲーム脳のシュロスと言えばいいのだろうか。ということは、前世の名を名乗ろうとしたのは、シェリーの『佐々木』と名乗っていることに、合わせようとしただけなのかも知れない。


 そこでシェリーは別の質問をした。


「この世界での死の概念は何ですか?」

「またまた難しい質問だなぁ。佐々木さん」


 シュロスは、腕を組んで少し考えるように、首をかしげながら答える。中身が怪しいモヤが詰まった甲冑に、脳などないだろうに、人としての行動パターンを再現している。


「肉体の死と精神の死は違う。肉体は朽ちても、また新たな身体を得れば、再び生を得られる」

「輪廻転生の概念ですか?」

「そうだけど、神さんには会ったことがあるから、存在するのはわかるが、地獄があるかはわからないなぁ」


 神には会ったことがあると、何気なく口にしているシュロス。その神を殺し続けてきたという罪悪感は皆無のようだ。


「では精神の死とは何ですか?」

「無かな?でもさぁ、心ってそんな簡単に無くならないよな。たぶん、形がなくても在り続けるんだろうなって思う。強い奴の精神は勿論、個として存在しているぞ」


 そこまで聞いたシェリーはカイルの腕から飛び降りて、シュロスの膝関節に回し蹴りを入れた。


「いきなりなんだ?佐々木さん!関節は弱いって言っているだろう!」

「青い核を壊されるのと、どちらがいいですか?」

「壊すのはやめてくれ」


 シュロスはそう言って、胸に露出している青い魂の容れ物を白い怪しい金属の中に隠した。それも機械的な動作ではなく、金属の中に沈み込むように、隠したのだ。


「なんです?それ?液体金属ですか?」

「カッコいいだろう?変形自由なんだぜ!」


 シュロスは手を突き出して、そのまま振るうと、肘から先が剣のような細く長い剣身になっていた。


「はぁ、どうでもいいです」

「酷い。佐々木さんが冷たい。いつもだけど」


 会うたびにシェリーに白い目を向けられているシュロスは、己の新しい身体を自慢したかったようだが、毎回向けられている冷たい視線に、うなだれている。

 そして、シュロスの言葉に反応したカイルはスッとシェリーを抱き寄せた。シュロスが言った『いつも』という言葉が気に入らなかったのだろう。


「佐々木さんの彼氏。心が狭すぎないか?」

「それは、無視でいいです」

「え?佐々木さん。彼氏にも塩対応なのか?それはちょっと可哀想」

「シュロス王。黙らないとその魂を浄化しますよ。未練も想いも残らず綺麗さっぱり魂すらも残らないほどに」


 すると、うだうだと言っていた甲冑はピタリと動きを止め、直立不動の鎧標本のようになった。

 先ほどの魂の昇華を目の前で見たのだ。シェリーが自称聖女ではないと理解したシュロスはシェリーがやると言ったらやると直感的にわかったのだろう。


「ちっ!やっぱり全ての元凶だった。これを本人に別の認識を埋め込ませたら、世界の概念はかわりますか?」

『え?もう世界に定着しているから、無理だよ』


 そう、悪心という人の想いがとどまり続ける理由も、シェリーが喚び出す英雄クラスの過去の人物たちも、ゲーム脳のシュロスがそうだろうという思い込みが、生み出したものだった。


 いや、シュロスが己の肉体の限界を感じた時点で、精神体だけでも世界に留まるシステムを構築してしまったのが、全ての原因だった。


 そして、白き神はシュロスが世界を変革させたため、世界の概念を変えることはできないと言葉にした。


「あ!神さん!」

「黙れ!」

「違う!神さんに文句を言わせてくれ!俺は永遠の命を願ったのに!叶えられていないじゃないか!」


 しかし、シュロスの言葉に白き神は答えなかった。その己の姿が答えだと言わんばかりに。


「だから、私は言ったではないですか。神に願ってはならないと」


 呆れていうシェリーは、カイルにガシリと捕獲されていたのだった。




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― 新着の感想 ―
[一言] そちらも面白そうなので読ませていただきますね。小説版。ええ、凄いですね。番とは〜や、聖痕の〜も書籍化しますかね?したら良いですね、布教します。取り敢えず。
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