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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
27章 魔人と神人

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 少し時は戻り、モルテ王の完全体の悪魔というものを知りたいという要望で、この場に留まることが決まったころ。


 逃げの一点だったシェリーは、機嫌が悪かった。


「本当に魔眼に操られないと信じて良いのですよね」


 もし、見つかった場合、一番被害を受けるのはシェリーだ。


「操られたら本気で私の魔眼を解放しますから」


 シェリーはモルテ王を脅すように言った。

 シェリーの本気の魔眼の解放とは、一度しか起きていない。それはカイルとスーウェンが殺し合い、イーリスクロムが己の部下である第二師団長のアンディウムを半殺しにした事件のことだ。


「まぁ、そうなった場合は仕方がない。だが、ラース公国は一番の敵国だったがゆえ、魔眼の耐性はある」


 その昔、カウサ神教国の王太子だった頃に、ラース対策として、魔眼の耐性は最低限のものだったのだろう。一国の王となる者が、魔眼に操られるという醜態をさらすことなどあってはならない。


「そういうことでしたら」


 シェリーは納得することにしたようだ。どこまで本当のことを言っているかわからないが、いざとなれば、シェリーは己の身を護るために、大いに魔眼の力を奮うことだろう。

 お前たちで殺し合えと。


「ここで待ち構えるとなると、これを持ち出されるのは、少し危険ですね」


 シェリーは、ボロボロでこんな形だっただろうという感じに並べられた、遺跡の中の朽ちた装飾品のような物に視線を向ける。

 シェリーは危険と言うが、ボロボロ過ぎて危険も何も、使用することすらできない、甲冑だ。


「危険?これがか?」


 カイルと共に暇つぶしに元の形だった風に並べたモルテ王が、バカにしたように言う。何も使うことなどできはしないと。


「復元と修復の魔術で元通りにはなりますよね。いくつか動く鎧を知っているので、おそらく元に戻せば、これも動くと思います」

「何だ?動く鎧とは?それは人がまとっているという意味ではなく、魔術で命じてうごかしているという意味か?」


 モルテ王の中には空から落ちてくる魔道兵の存在があるのだろう。所構わず敵と見なした存在を攻撃する鎧のことかと。


「少し違います」


 シェリーは否定の言葉を言う。命令で動いていると言われればそうなのだが、ただの鎧かと問われると違うだろう。


 動く鎧はシェリーが知る限り、二種類存在している。

 一つはオリバーが創った、魂の模造を定着させた鎧だ。これは現在、陽子のダンジョンの見回りに使われている。

 そしてもう一つが、鍛冶師ファブロが黒竜の力を最大限に引き出して作った鎧だ。これは呪の産物と言って良いほどのモノだったが、これもオリバーが調整して陽子のダンジョンに放り込まれている。


「これはおそらく、先程回収した魂の容れ物を甲冑にはめ込むことで、魂の定着が起こり肉体と同様に動く仕様なのだと思います。骨は鎧を支える支柱の役目ぐらいでしょう」


 魔道兵を見た限り、鎧の中には骨は存在したが、鎧の中には半透明なモヤが満たされていた。

 それが鎧を固定する肉体の役目があると思われ、中にあった骨は直接鎧を支えているかと言えばそうではなく、神経のような線が鎧に繋がり電気信号のように光を帯びていた。


 ここで重要なのは魂の定着する部分と、鎧を満たし固定化する何か。そして、鎧を動かす伝達経路。

 あの魔道兵は魂の定着している部分が外側からはわからなかったので、骨がその役割を担っていたとするならば、魂の容れ物に入ったシュロスの場合、骨は必要ではないと考察できる。


「この甲冑は他の者でも使えてしまうと、恐ろしいことが起こりそうなので、このまま消滅させるか、シュロス王の依代にするかどちらかにしたほうがいいと思います」

「そうだね。ヨーコさんが管理している鎧たちは、死という概念がないから、これが敵となるならちょっと厄介だね」


 中身が、空の動く鎧たちを知っているカイルは、この朽ちた甲冑を危険視する。勝てない相手ではないが、死がないということは、相手を見て引くということをせずに、我武者羅に突っ込んでくるだろう。


「本当にそんなモノがあるのか?国に引きこもっていると、知らないことが多すぎるな」


 モルテ王は引きこもっていると言っているが、千年間も自我を失っていれば仕方がないところもある。


 しかし、その動く鎧が存在しているのは、シェリーと陽子の所為なので、知らない者の方が多いいだろう。いや、外には出せない話だった。


「色々興味深い」


 モルテ王は本来、知識欲に強欲のようだ。いや、大魔女エリザベートの遺産を受け取って、管理してるのだ。元々魔術や魔道具に興味があったということなのだろう。


「今から復元修復して魂の定着を行いますが、シュロス王の戯言は基本的に無視でお願いします。おかしな言葉を使う存在だと認識してください」


 カイルとモルテ王に、シュロスを無視するように言う。普通ではあり得ないが、ここで時間を取られるわけにはいかないと、シェリーは二人からの返事を待たずに、魔術を唱えた。


「『復元(ヴァスクタシス)』」


 ボロボロに崩れていた甲冑が、元の形だったであろう鎧の形になり、潰れていた鎧が立体的になった。


「『修復(リカバリー)』」


 そして、元の姿の白く光を反射する甲冑の姿がそこにはあった。




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