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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
27章 魔人と神人

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 シェリーは浄化した青い玉を、腰に付けている鞄の中にしまった。そして、骨と鎧を遺跡に埋葬されている遺骨の姿に再現した、カイルとモルテ王に向って、言葉少なく言う。


「敵襲です」


 このような場所で、攻撃をされれば土の中に埋もれてしまうのは馬鹿でもわかるというもの。いや、上空を旋回しているということは、その者と鉢合わせば、必然的に戦闘になるだろう。

 なぜなら、空を飛ぶ存在はこの世界では多くなく、状況的に種族が絞れてしまう。


「今の私では、完全体の悪魔には敵いません。必要なモノは手に入ったので、さっさと逃げます」


 そう、上空を飛ぶ種族は、白き神に地上と天空の間に存在することを許されたアーク族か、若しくはアーク族が世界の力を得て変異した完全体の悪魔かどちらかだ。

 ただ、状況的にアーク族の可能性は低い。彼らは地に落ちると、再び空に戻れなくなるからだ。


 となれば、上空にいるのは完全体の悪魔になるだろう。


 シェリーは、鞄からいつも転移で使っている魔石を取り出す。そして、床に落とした。

 だが、いつものように光を帯びた陣が展開されない。


「阻害されている?」


 転移の術が、何か阻害物質により発動できなくなっているようだ。


「多分、アレの所為だろう」


 モルテ王は上の方を指し示した。それは天井に描かれている複雑な紋様の陣だった。

 そう、モルテ王は天井にある陣を読み取るときに言っていた。『移動不可』『捕縛』と。


 シュロスが陣を刻んでから、気が遠くなるほどの年月が流れたというのに、未だに機能している。

 いや、シュロスが存在している限り機能し続けるのだろう。この神を降臨させ捕らえる陣は。


「シェリー。禍々しい気配が上から近づいてくるけど、このまま上に攻撃する?」


 カイルは上から降りてくる気配に向けて、ここから攻撃を仕掛けようかと言うが、シェリーは発動しなかった魔石に視線を落としたまま動かない。


「5体の悪魔を相手にするには、分が悪いと思います」


 そう、シェリーは初めから逃げると言っていた。それは、シェリーのスキルで見た上空に旋回している印が、5つあったからだ。

 その一つがカイルの気配探知に引っかかっただけで、更に上空には4体の悪魔が控えている。


「ちっ!スキル構築の制限が厳しい。移動手段がことごとく潰されていく」


 シェリーは下を向いて、何をしているのかと思えば、転移で移動ができないのであれば、スキルで移動手段を構築しようと模索していた。

 しかし、白き神から与えられたスキルの構築の条件は、魔術には存在しないものという極めて範囲が狭い条件なのだ。


 以前言っていたが、シェリーのスキル構築で一番阻害しているのが、炎王が白き神から与えられた魔術創造だ。


 そのシェリーの行動に否定する言葉が聞こえてくる。


「なぜ、逃げる必要がある」


 モルテ王だ。アーク族に何かしらの因縁があり、攻撃すれば、呪いを掛けられてしまった王。


「魔眼の耐性がなければ、そもそも戦えません。それに、私のレベルでは完全体の悪魔の皮膚を傷つけるだけで精一杯です」


 以前、死の神モルテ神のはからいで、完全体の悪魔の複製体と戦う機会があった。あの時、カイルは魔眼の力に操られなかったものの、抵抗するまでに時間を要した。


 そして、モルテ王に魔眼に対しての耐性力があるかは不明だ。


 ここで悪魔5体とカイルとモルテ王の相手をシェリーが一人で行うなど、無理というもの。

 これがシェリーが逃げるという選択肢をした原因だ。


「魔眼か。それはラースの魔眼よりも強力なのか?」


 その昔は敵対していたラース公国とカウサ神教国。カウサ神教国の王太子であった者としては、そこが一番気になるのだろう。


「魔王討伐戦を戦った者が言うには、ラースの魔眼の方が強力だったと言っていた」


 カイルは同じ竜人であるディスタが、その身で体験したことを口にした。神の目より強い魔眼など存在しないと。


「だったら、問題ない。だが、悪魔という存在がどういうモノか気になるな。黒の聖女よ。隠れてやり過ごすではどうだ?」

「隠れるですか?この場に隠れるところなどないですよね」


 モルテ王はシェリーの言葉にニヤリと笑う。

 だが、この場は青い壁と床と天井に囲まれており、仕切りすら存在しない。強いて言うなら、中央にある円状に存在する土の地面を掘って隠れるぐらいしかできないだろう。


「闇は俺の領分だ。先程のように浄化の光で、闇が存在しない状態にならないかぎり、隠れられる」


 それは闇の神オスクリダー神から創られた存在であるモルテ王だからこそ、言える言葉であった。



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