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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
27章 魔人と神人

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 複雑に絡み合うように円状に光る魔術の陣が、むき出しになっている青い壁面全体に展開されている。


 すると中央から青い壁が何かに侵食されるようにじわじわと消えていっていた。

 崩れているのではなく、消えていっているのだ。


 確かに洞窟内となると、崩した土砂等が行く手を遮り、排出しなければならなくなるので、合理的だと言える。だが、シュロス王が作り出した壁を消していくとは、その魔術の力の大きさというものがわかるというもの。

 いや複数の魔術の陣を平面上に展開しているだけでも、普通とは言えなかった。


 そして、青い壁の先には暗闇の空洞が広がっている。土で満たされていないということは、ここが建物であった可能性が高い。

 それに、先が暗闇に満たされていることから、土神グラニート神の影響は受けていないとも言えた。


 洞窟と言っていい横穴の大きさまで青い壁が無くなったところで、モルテ王が先に進み出す。


「想像より広い空間だ」


 カイルが出した明かり取りの光は、カイルのやや前方を照らしているため、モルテ王が入った空間には光は届いてはいない。

 だが、モルテ王の目には青い壁に囲まれた空間が映し出されているのだろう。それは闇の神オスクリダー神の力の影響なのだろうか。


 モルテ王に続いて、シェリーを抱えたカイルが暗闇に満ちた空間に入って行く。そして建物の中と思われる空間を光で満たした。


 そこは青一色の空間だった。壁も天井も床も。ただ、天井には円状の線が描かれており、複雑な紋様がその円の中に描かれている。そして、その真下にはむき出しの土の床が円状に空いていた。まるで天井の陣から地面に向けて術を施すようにみえる。


「逆さになっている」


 シェリーがポツリと呟いた。その言葉はもちろんカイルの耳にもモルテ王の耳にも入っている。


「逆さ?」

「建物が逆さということか?しかしそれだと雨が防げぬではないか」


 地上の建物であれば、天井に大きな穴があいているなど、致命的な欠陥だ。しかし、この建物があった場所は上空1万メル(メートル)。それにシュロスが上空でも快適に過ごせるように結界が張ってあったはずだ。


「空島の雨は上から降るとはかぎりませんよ」


 多くの雲が空島の下にあるため、雨という概念があるかどうかも疑わしい。


 そして、ある一点をシェリーは凝視する。天井が階段状に低くなっている場所だ。


 そこはシェリーの記憶で、金色の玉座にシュロスが偉そうに座っていたところ。だが、玉座の残骸のようなものがあるのみ。


 シェリーはそこに向かおうと、身を捩りカイルの腕から逃れようとするものの、カイルから解放されない。


「カイルさん。いい加減に下ろしてください」

「何があるかわからないから、駄目だよ」


 そう言ってカイルはシェリーを抱えたまま、シェリーが気になっている方向に足を進める。

 いや、ただ広い空間の中で、何かの物があった痕跡があるのが、その場所だけだった。


「黒の聖女。もしかしてここが神殺しの場なのか?」


 モルテ王は天井に描かれた陣を見ながら、シェリーに声をかけてきた。


「そうです」

「確かに読み解けば、神という文字に引き寄せる。空間。転換。固定。移動不可。捕縛。なんとも言い難い陣だ」


 神の召喚というよりも、神を捕らえるものと言い換えたほうがよいだろう。その言葉にシェリーは苦虫を噛み潰したような表情をした。


「ここを出たあとに、神の召喚の陣の原型がわからなくなるぐらい、ここを破壊していいですか」


 神を殺す陣など必要ない。神を捕らえる陣など必要ない。そう言いたいのか、シェリーはこの場を破壊すると口にした。


「マルス帝国に、この陣の存在を知られるわけにはいきません」


 違った。これは失われた神の召喚の陣でもある。そして今現在神の降臨を行えるのが炎国にいる光の巫女のみと言われているのだ。

 この神の召喚の陣が現存していると知れば、マルス帝国は何がなんでも手に入れようとしてくるだろう。

 それはなんとしてでも避けたいと、シェリーは破壊を望んだのだ。


「別に構わない。アーク族の遺産を守る必要など、どこにもないのだからな」


 この地の主であるモルテ王から許可を得られれば、問題はないだろうと、天井に視線を向けてから、シェリーはため息を吐いたのだった。


 そして、床に何かしらの残骸が散らばっている場所にたどり着く。

 白っぽい金属か鉱石の棒状の物が、朽ちて原型を残さずに散らばっているとも見える。


 その散らばっている残骸を見てシェリーは口を開いた。


「モルテ王。これをかき集めて組み立てれば、モルテ神様の像が、できあがるのではないのですか?」

「いや、バラバラになって何かが混じっているが、これは普通の人骨だろう」


 人骨。そこにあるのは、生き物の白い骨と、鈍く金色に光を反射している素材が、入り混じって朽ちていたのだった。


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