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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
27章 魔人と神人

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 シュロスがどこかわからないところを見ながら、怪しい言葉を言い始めたので、シェリーは現実に戻す為に、目の前で両手を叩く。

 パチンっという音にシュロスは目をまばたきをして、シェリーに視線を向けた。


「ここからが、大事です。レベル100を超えると神からの加護が技に反映してきます。すると肉体の変化が起こります。それは老化を遅くしますが、死というものから逃れることはできません」


 長く生きる種族もいれば、短命な種族もいる。しかし同じ獣人でも差が出ている。


 例えば黒狼クロード。彼は孫のクスト曰くかなりの老人だった。そう彼と同年代と思えるシュピンネ族のイスラだ。あの者は正に老人の姿であったが、まだ健在している。

 だが、クロードとイスラと同じ時を生きた者は生き残っているかと言えば、居ないだろう。

 赤猿フラゴル……辺境の冒険者ギルドのマスターをしている者も、同じ時を生きた者とは言えるかもしれないが、統括師団長と統括副師団長という関係だったので、同じ時を生きたというには、少々物足りない。


 黒狼クロードとシュピンネ族イスラ。それ以外の者たちと何が違ったか。一番はレベルが違った。そして神の加護を多く得ていた。

 それを加護をただの加護として使わずに、術や技まで昇華させたことにより、肉体にまで変化が見られたということだ。

 だから彼らは長き時を生きていた。


 ただ、誰しも死の神モルテ神の祝福からは逃れることはできない。モルテ神からの祝福の拒否という物を得ている神に一番近いユールクス以外は。あとはモルテ神とオスクリダー神から創られたモルテ王ぐらいだろう。


 シェリーは長命を望んでも、死は訪れることをシュロスに言った。永遠などありはしないのだと、言葉にしたのだ。


「ミレニアム。かっこいいなぁ。超越者。まさに俺のようなヤツってことだな」


 だが、キラキラした目を向けられてしまった。

 全然理解していなかったのだ。

 たまにいる自分の良いように理解して、全く人の話を聞かない者。彼はそれに当たるようだ。


 きっと白き神はこのことを言っていたのだろう。シェリーに好きなようにしていいと言ったのは、結局シュロスという者は己が見たいものを見て、聞きたい言葉を改変して聞いてしまう人物なのだと。いや、すでに彼はまともでは無いのかもしれない。


 現実を現実として受け止められず、狂いながら生きているのかもしれない。


 シェリーは言葉を紡ぐのを止めた。きっと何を言っても無駄なのだと。彼はこのまま彼が思い描く道を進んで行くのだろうと。


「レベルを上げるだろう。神さんの加護を得るだろう。それで千年王国を作る!エンディングが見えてきた!」


 キラキラした目でシェリーに聞いてくるシュロスに、何も表情が浮かんでいない顔で聞き流している。


「で、どうやってレベルを上げるんだ?」


 そう、肝心のレベルがどうすれば上がるのか、その指標がわからない。魔物を倒せばレベルが上がるという、簡単に説明することができればいいのだが、シュロスのレベルがなぜ20まで上がっているのか、説明ができない。


 これだけの国を築き上げた貢献度が反映されているとしては少なすぎる。

 何がレベルを上げる要素になったのか、理解できなかった。ただ、レベルシステムを導入した白き神に問えば、答えがわかるだろうが、それすらもシェリーは面倒になっていた。


「無視!また無視なのか!佐々木さん、バグっているぞ!」


 何も反応を示さないシェリーの肩を揺さぶるシュロス。その手をシェリーは叩き落とした。


 そしてそのまま身体を傾け、空中に身を投げ出した。ここは空島の端のため、足を踏み外すだけで、空の上から地上に向かって落ちることになる。


「ささきさーん!」


 頭上で響く声にシェリーは苛立ちをあらわにする。


「ちっ!人の話はきちんと聞けー!」


 目の前で言っても更に苛立つだけなので、シェリーは姿が見えなくなってから、叫んだ。


「何がミレニアムだ!千年王国だ!元々この世界は争いが起こりにくいから、長命の国はたくさんある!」


 そうカウサ神教国が、エルフ神聖王国が、大陸を統一しようとしなければ、今まで存在していた国は、あり続けただろう。そして、世界を統一しようとする国がなくなれば、それからというもの、変革は行われていない。


「何がエンディングだ!そんなものは無いし!帰れないと言っている!たとえ帰れたとしても……」


 そこでシェリーは言葉を止めた。その先にはきっとこう続くのだろう。死人が家族の前に立てるはずもないと、佐々木の言葉が出てくるのだろう。


「はぁぁぁぁ。なぜ、私があんな馬鹿の相手をしないといけないのですか?」


 シェリーの愚痴に答える声はなく、背中に衝撃が走る。


 地上に落ちるには短すぎる落下時間に、シェリーはまたしても大きくため息を吐くが、そのため息が歓声にかき消えてしまった。



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