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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
27章 魔人と神人

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「さっきここに来る前にルティーに連絡を入れておいたのよ。私が渡した資料を持ってきてって」


 その言葉にシェリーは頭が痛いというふうにこめかみを押さえだす。あの死の王を使いっ走りのように使うのは、きっとエリザベートぐらいだろう。


 そして、エリザベートは死の王が存在していることを疑っていないようだ。エリザベートが死してから死の王に何かあったとは考えていなかったようだ。


「エリザベート様。私はモルテ王に何を託したのかわかりませんが、貴女が死んでからアーク族に喧嘩を売って、呪いを掛けられていましたよ」


「あら?そんなことをしていたの?でもアーク族がムカつくのには変わらないから、私は喧嘩することには反対しないわよ。でも呪いね。まぁ、あり得るでしょうね。アーク族ですもの」


 エリザベートは簡単にそんなこともあるだろうという感じだった。それもアーク族だからという理由で全てを片付けている。


「はぁ……疑問に思っていたのですが、グローリア国の魔女の家とは、こことは違うのですか?」


 シェリーはアーク族で全てを片付けられてしまったら、これ以上言うことはないとため息を吐きながら、別のことを聞いた。白き神はグローリア国の魔女の家が残っていたら別だっただろうと言っていたのだ。そこには確かに何かが残されていたはずだ。


「ああ、あそこは弟子の家よ」


「は?弟子の魔女の家ですか?」


 シェリーの言葉にエリザベートは首を縦に振って答えた。


「そう、弟子の家。普通の子でもわかる物しか残っていないわよ。だって空島の薬草を使った薬なんて、資料が残っていても作れないでしょう?あの時代は既に自ら人は飛ぶことを諦めたもの。勿論、古い術式は残っているから魔導を極めた者は飛べたわよ」


 空島の資料は残されてはいなかったということだ。ならば、白き神は戯言を言ったということだろうか。


「でも空島の脅威は知ってもらわないといけないから、あなた達はむやみに手を出さないようにという、書物は残したわよ」


 危険性を示した資料はあったようだ。ということは、そこに何かしらのことが書かれていた可能性があるが、今は家ごと消滅していた。


「では、ラフテリア様のところにあった家は違うのですか?」


 どうみてもエリザベートが住んでいたという痕跡があった。そこに何も残されていないということはあるのだろうか。


「あの家?誰の家か知らないけど、借りていた家ね。何年かは住んでいたわ。まぁ、結界の中心にするための空樹を植えたから、ラフテリアとロビンに会いに行くときに泊まるところとしか使ってはいなかったわね」


「空樹?」


「空島にある木の一つね。木自体に魔力があるから、結界を張り続けるのには便利な木なのよ」 


 あのエリザベートの家を呑み込むように生えていた大木のことだろう。あの木があるかぎり、ラフテリアとロビンの平穏が守られるということだ。


 そして、そこに壊れるかと思うほどの勢いで扉を叩く音が聞こえてきた。その音にシェリーとカイルに緊張が走る。扉越しに異様な気配が感じられるのだ。


「あら?思ったより早かったわね」


 そう言って、エリザベートは叩き続けられている扉の方に向かっていく。


「いらっしゃい」


 扉を開けたエリザベートの前には肩で息をしている黒髪の男が立っていた。髪も目もまとっている衣服も黒い男がいる。ただその男が放つ気配が目の前の男が人外だと示していた。


「何故……何故生きている……いや、生きていたのであれば、会いに来てくれても……」


 見下ろしている男の視線は、迷子の子供のように戸惑いと悲しみと不安の色に満ちていた。


「あら?最後に会いにいった時に言ったわよ。もう会うことはないと思うわって……でもまた会えたわね。それで、私が頼んだ物を持ってきてくれたかしら?」

「資料とはどれのことかさっぱりわからん。一度、俺の城に来い。皆も喜ぶだろう」


 男は自分の城にエリザベートをまねこうとするも、エリザベートはゆるく首を横に振る。


「駄目よ。私がここに存在しているのは、世界に許されたことだからよ。私利私欲に行動すれば、すぐに介入してくるでしょう。世界は私達を覗き見ているのよ」


 エリザベートは神を嫌っているが、大魔女と言われただけあって世界の理を理解していた。

 エリザベートが今ここに存在していることを許されているのは、シェリーにエリザベートの知を与えるための時間しかないのだと。 



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