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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
27章 魔人と神人

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「意識ですか?」


 そう言われてみれば、おかしなことにシェリーは気がついた。シェリーが喚び出した者たちは大抵前回喚び出したときの記憶を持っていたのだ。ただの世界の記憶から構築した存在でしか無い彼らにだ。


 そして、エリザベートは白き神が顕れたことで、意識が飛んだと言った。ということは世界の記憶の中でも、個として存在していると言うことなのだろうか。


「そう確認されても、死んだ私に意識というものがあるのか、わからないことね。意思があるのかと言えば、ここで貴女と話をしている時点で、証明しているけれど」


 そうだ。シェリーが世界の記憶から構築した彼らは、彼らの意思を持ってその場に存在していた。

 あのエルフ族の猛将プラエフェクト将軍とシェリーの戦いを見てみればわかったこと。彼は彼の意思でシェリーとの戦いを望んだのだ。そこに他の者の意思は関与していなかった。


 ならば、目の前にいる大魔女エリザベートはどの様な存在なのだろうか。このエリザベートの出現には世界の力が影響していることは理解できる。

 何故なら、アマツは白き神の関与で、シェリーのスキルの負荷を増やして、出現する時間を短縮させられた。


 予想できるのは、アマツという存在はギラン共和国で神聖視されているところがあるので、存在そのものを考慮した可能性がある。

 死人を祀り上げ、神と崇めるようになれば、そこに人神が顕れることになるのだ。


「まぁ。わからないことを考えても無駄なことね。それで、私は何故再び貴女と顔を合わすことになっているのかしら?」


 大魔女エリザベートは己の存在など、死した事実以外どうでもいいと言わんばかりに、シェリーに再び喚び出した理由を聞いてきた。


「一つはこの家の中で空島のことを書かれた書物は残されているのかと、もう一つは空島の残骸から何を探していたのか知りたいのです。欲を言えば、古い魔術の術式が記された物とかあれば、欲しいです」


 シェリーとしてはこの地上にはない空島の情報があまりにも無く、唯一空島と関わりがあるエリザベートからその情報を得たいというのが、一番優先することだ。

 そして、今は使われなくなった術式の知識を、目の前の大魔女は持っているはず。ラース公国の地下に設置してあった重力を変える術式など、今は存在しない。

 それをエリザベートが作り出したというのであれば、他にも多くの知を持っていると予想できる。


 そうエリザベートは女神ナディアから愛し子の称号を与えられ、ラース公国を支える魔導士としての才を与えられたのだ。


 これからの戦いはその知識も必要となるだろうと、シェリーは感じていた。


 スキルだけでは賄えきれない局面まで来てしまったのだ。今までのスキルに頼り切った戦いから、刀とスキルと魔術を併用する戦い方に変えていかなければならないと考えていた。


 ここで問題になるのが魔術。聖女のみが使える癒やしの魔術や死者を生き返させる魔術など、特有の魔術は必要になるだろうと、すぐに発動できるまでに修練してはいる。しかし、他の魔術となるとスキルの方が使い勝手が良いと、そこまで極めてはいない。

 そして、魔導術となると、オリバーからセンスがないと言われるほど使えなかった。いや、異世界の知識が邪魔をして、術の構築ができなかったのだ。


「そうねぇ……」


 エリザベートは考えるように首を傾げている。そして、空中に陣を描き始めた。血のような赤い光を纏う陣は複雑に絡み合い、立体に展開していく。

 その美しい陣にシェリーは思わず呟いた。


「立体陣形。初めて見た」


 シェリーの異界の知識としては陣が平面状だけではないことは、知っていた。いや、知っていたと言っても物語の話の上でのことだ。

 ただ、初めて見たということは、オリバーでさえも、使うことができないということだ。


「あら?初めてみたと言うには、これが立体陣形って認識できるのね。人によったら、形になってない陣に見えるそうよ」


 形が維持できずに崩れた陣。そう言われたことがある。その意味はエリザベートが生きた三千年間でも主流の陣形ではなく、使える者が限られていたということだ。


 エリザベートはそう言いながら、その陣に手を入れ、何かを引きずり出す。手で掴んだところは何かの取ってのようだ。次いで本体が出てくる。赤い革生地に覆われた四角い箱状の物。

 エリザベートがいつも持ち歩いていたという赤い旅行鞄だ。


「いつもお持ちになっている鞄ですね」


 今回は顕れるときには持っていなかったが、これは別空間にずっと入れていたということなのだろう。シェリーは鞄に亜空間収納の機能を持たせているのを所持しているが、これは炎王と同じ空間自体を収納としているのだろう。


「そうよ。この中には私の全てが入っているの。私の魔女の家も庭も本も魔道具も」


「え?」


 エリザベートの言葉にシェリーは思わず疑問の声がでてしまった。


 ()の魔女の家。


 ということは、この家は何なのだろう?そして、グローリア国にあったという魔女の家は何なのだろう?



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