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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
27章 魔人と神人

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 ロビンとしては護るべき存在に手出しできない状況に、色々もどかしい気持ちになったのだろう。どう見てもロビンに頭を撫ぜられて嬉しそうにしているラフテリアに、生活能力があるとは思えない。


 カイルはロビンの言葉を聞いて、隣に座っているシェリーの左手を強く握る。全く持ってそのとおりだという意志の現れだろう。


「シェリーちゃんは、シェリーちゃんのことを大切に思っている人たちがいることを自覚することから、始めることかなって思ったんだよ。エリザベートにも教えて上げたのだけど、ほらそんな感じだったしね」


 黒ずんだテーブルの一角をロビンは指し示す。


「ちょっと取り返しがつかないほど、こじれちゃったあとだったみたいでね」

「私は悪くないよ。私を殺そうとしたエリーが悪いんだからね」


 この呪いの言葉の原因にラフテリアが関わっているようだが、そのラフテリアは悪くないと否定している。


「ああ、話の続きだね。生き返ったエリザベートはラース公国の大公の死に頭に血が上って、ラフテリアに向かっていったそうなんだよ。ちょうどその時、あのムカつく教皇がリアを転移でこの大陸に送り返そうとしたところだったんだよ」


 この教皇の行動が、これ以降に現れた魔人を大陸送りするきっかけとなった。初代聖女であり初代魔人の名をつけられたラフテリア大陸に魔人を隔離するという行動だ。


「その転移にエリザベートが巻き込まれ、大陸に着いた瞬間、敵と認識したリアに殺されたんだよ」


 これが二度死んだ大魔女エリザベートの経緯だった。しかし、これだと二度目に蘇るきっかけがないと思われる。


「それはラフテリア様に殺されて、ラフテリア様の力で蘇ったということですか?」


 ラフテリアは魔人化したものの聖女である。聖女としての力を奮えば、人を生き返らせることはできる。だが、敵として認識していたラフテリアが生き返らせるとは考えにくい。


「そうだよ。赤の神様に言われてね」


 どうやら女神ナディアが口添えをしたようだ。愛し子であるエリザベートを生き返らせて欲しいと。

 神という存在を絶対だと考えているラフテリアからすれば、女神ナディアの言葉に従わない理由は存在しない。そう、生き返らせるという選択肢しかないのだ。


「でもさぁ。一年経っても生き返るなんて不思議だったね。白い神様は死んでも直ぐだったら生き返るよって言っていたのにね」


「え?」


 ラフテリアの言葉にシェリーは驚きを顕にした。それはラフテリアに殺されてから一年は放置されていたということだ。そして、恐らく場所的に野ざらしにされていた可能性が高い。


「でも、それで感覚的にわかったんだぁ。死んだ人の魂ってヤツを身体にくっつければ、生き返るってこと」


 これはカウサ神教国の民を終わりなき死に導いたきっかけだったのではないのだろうか。死してもその魂と身体を結び付ければ、聖女の力で蘇ると。


「生き返ったエリザベートに、一年経ったことを告げると凄く慌てていたね。どうも一年後に婚約者と結婚式を挙げるんだったんだって。慌てているエリザベートに気が向いたら僕に魔術を教えて欲しいって言ったら、律儀にその一年後に来てくれたよ。かなり荒れていたけどね」


 話の流れからすると、女神ナディアの神的な感覚では結婚式が予定されている日に合わせて生き返らせたのだろう。しかし、エリザベートの呪いの言葉からは、婚約者と袂を分かったと予想できた。

 しかし、生き返ってから一年はラフテリアとロビンの前に現れなかったということは、ラース公国に滞在して婚約者と話し合いでもしたのだろうか。


 ただ、気になるのがアレクという存在だ。シェリーはその名を別の者から聞いていた。


「グローリア国を築いたのはアレクオールディア・ラース。アレクという人物はラース公国の大公に立たなかった?おかしな話」


 そう、この名はオリバーから聞いていたのだ。グローリア国の祖は大魔女エリザベートだが、グローリア国を作ったのはアレクオールディア・ラースだと。

 普通であれば、愛し子の婚約者は大公に立ってもおかしくはない。


 しかし、これだとおかしな話だ。グローリア国が建国したのは4千年前。カウサ神教国が力を失い。その機に乗じてラース公国の北側に突如出現した国だ。

 そして、大魔女エリザベートがグローリア国の祖として言われるようになったのは、千五百年前のこと。数十年グローリア国に住処を構えた大魔女エリザベートはその生命を終えた。

 二人の間に接点がないように思える。


「そうかな?僕はおかしくはないと思うよ」


 ロビンはシェリーの言葉を否定した。


「そうだね。おかしくはないかな?」


 シェリーの隣のカイルもロビンに同意する。この二人の共通点は、番という存在を感じながらも、その番に手が届かないもどかしさを知っている二人だった。



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