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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
26章 建国祭

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「殿下こそ、どうされたのですか?」


 風竜ディスタはこの場にカイルがいることを不思議に思っているようだ。


「オーウィルディア殿から救助要請が来たのでな。とはいっても、ディスタと大公閣下がほとんど倒したようだが」


「いいえ、流石に閣下と二人で20体の次元の悪魔を相手にするには骨が折れますよ。公都の外に飛ばしたのは自分ですが、その範囲を二人ではカバーできません。ウィルも以前ほど戦えるかといえば、そうではありませんからね」


 ディスタは視線を北の方に向けて言った。被害を最小限に抑えるために、公都の中に落ちてきそうな次元の悪魔を公都外に叩き出したものの、被害が全くなかったかと言えばそうではない。先程のラースの一族の者のように、足止めするだけでも傷を負うものたちがいる。

 それにオーウィルディアだ。秋の頃にあった次元の悪魔の出現時にオーウィルディアは苦戦を強いられていた。いくら普通の人とは違うラースの血族だろうが、老いというものには敵わない。40歳という身体では全盛期ほどの力は出せないのだ。


「では、この辺りは倒し終わったので、自分は北側に行ってきます」


 ディスタはカイルの姿を見かけたので、声を掛けて挨拶をしただけだったのだろう。本来の目的である次元の悪魔を倒す為に、ディスタは背中から一対の青みがかった翼を生やし、北側に飛んでいった。


「シェリー、北側はディスタが向かったから、行かなくてもよくなったね。南側はグレイたちに任せればいいだろう。これからどうする?」


 カイルは、やるべきことは終わったと言わんばかりだ。しかし、シェリーはカイルの言葉に反応せずに先程からずっと西側を見ている。ディスタがカイルに話かけていたときも、シェリーは公都がある方向である西側を見ていたのだ。


 その西側から土埃を立てながら近づいてくる存在がいることに遠目から確認できた。その速さからは常人ではないことが伺える。


 カイルはその者に警戒し、シェリーの前に立って相手を見定めようとするが、黒い外套を羽織っているようで、その姿を見ることができない。


「カイルさん。警戒する必要はありません」


 シェリーは近づいてくる者から視線を外さずに、カイルの行動を諫める。土埃を立てながら近づいている存在は魔人ミゲルロディアだ。それは常人ではない速さでシェリーにの元に向かってくるだろう。


「シェリーミディア。来てくれて助かった」


 ミゲルロディアは黒い外套のフードをはずして、その姿を顕にした。黒髪の20歳程の青年だが、やはり黒くタールを流し込んだような目に視線が釘付けになってしまう。


「大公閣下。息災で何よりです。あれから何も問題は無かったでしょうか?」


 魔人であるミゲルロディアに息災という言葉はどうかと思うが、ラースの一族から受け入れられているという意味も含まれているのだろう。


「勇者が怒りを顕にして公都を出ていった意外は何も問題はない」


 やはり勇者ナオフミは公都であった出来事に怒っているようだ。それにより元いた自分たちの隔離された世界に戻り、音信不通になったのだろう。


「はぁ、そうですか。この国の護りの為に居てくれるように頼みましたのに」


 シェリーはため息を吐いて、ナオフミが住処としている隠れ家がある東側に視線を向ける。結局、己が行った後始末をしないまま、再びその姿を消してしまった。


「それで閣下。私はいつでもいいですが、一度で済ませられるのであれば、それに越したことはありません」


 シェリーはミゲルロディアが何か頼み事をするために、ここまで来たことを理解していた。シェリーが呼ばれた本当の理由は、次元の悪魔を倒すことではない。


「ああ、それだが一族の者には北側と南側の公都の外門前に集めるように指示をしている」


「わかりました」


 そう答えたシェリーは南側に向かって足を進める。やるべきことは理解していると。


「移動しながら、少し良いか?」


 歩き始めたシェリーの右側にカイルがいるが、その反対側にミゲルロディアが付いてきていた。


「何でしょうか?」


「今回の襲撃はあまりにも不可解なのだ。何者かの意志を感じるような次元の悪魔の襲撃。魔王が存在していると思わざるえない。そなたはどう考える」


 ミゲルロディアはシェリーの意見を聞いてきた。しかし、ミゲルロディアの立場は大公であり姪であるシェリーに意見を聞くのはおかしいと思うことだ。

 いや、ミゲルロディアの中では次の大公と成るものを見定めているのかもしれない。


「その質問に答える前に、閣下は魔王という存在。次元の悪魔という存在。完全体の悪魔という存在がどういう者かご存知でしょうか?」


 シェリーは討伐戦時代から今まで一国を治めてきたミゲルロディアに、表には出されていない、真実を知っているのかとい問いかける。オリバーがその真実にたどり着いたのであれば、各国の首脳には報告されている可能性があった。


 先程のミゲルロディアの言葉にシェリーは引っかかったのだ。シェリーは今まで魔王が復活すると言い続けていた。それはシェリーの思い込みで魔王とはこの世にただ唯一と考えていたからだ。

 だが、先程のミゲルロディアの言葉は魔王が存在していると言った。“復活”ではなく“存在”。些細な言葉の違いだが、シェリーはそれが引っかかったのだった。



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