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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
25章-3 冬期休暇-火種は既に落とされていた

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「知りませんよ」


 シェリーは帝国の思惑など知らないと一蹴する。わかれば、あれやこれやと思案することも無かったはずだ。


「ただ、そこにはサウザール公爵個人の思惑があるのではないのですか?」


「思惑だと?」


「そうですね。きっとモルテ王と出会い、破壊されたグローリア国の瓦礫の下から見つけ出したものに、魅了されたのでしょうね」


「それは何だ?」


「神の威というものですかね」


 女神ナディアの機嫌を損ねる行為を避けた、ただそれだけだろうとシェリーは考えた。白き神が示した言葉。そして、モルテ王の有り様。大量殺戮から逃げた可哀想な兄妹の姿。

 そこから行き着いたサウザール公爵の願い。愚かしくも人の身で在るが故に、行き着いた願いであるのだろう。


「は?ちょっと意味がわからないが、もしかして女神ナディアのご機嫌取りのために、次元の悪魔を向かわせていないと言っているのか」


「そうだと思いますよ」


 シェリーの言葉にクストは本当に意味がわからないと首を横に振った。だがその言葉にユーフィアが反応したのだ。


「もしかして、若返りとか女神様にお願いしているのでしょうか?」


「え?違うと思いますよ?」


 ユーフィアの斜め上の意見にシェリーは否定の言葉を口にする。だが、ユーフィアは『でも』と話を続ける。


「でも、ナディア様って美と愛の女神様ですよね。一度若返りの薬を作れと言われたのですが、薬は専門ではないので断ったのです。女神様ならお願いを聞いてくれるのではと思ったのですが、違ったのでしょうか?」


「····違うと思いますよ?基本的にナディア様はラース様にしか興味ありませんから」


 シェリーの言葉は女神に対して酷い言いようだ。夫であるラースにしか興味がないのは本当のことかもしれないが、もう少し言いようというものがあるだろう。


「まぁ、私もこの20年外見が変わらないので、知り合いの人が『いつまでも若くていいわね。私も女神ナディア様に供物を捧げてお願いすればいいのかしら?』と、聞いてくるものですから、女神様に願えば叶えれくれるのでしょうかと思ったのですが違ったのですね」


 確かにユーフィアは獣人でも英雄クラスのクストの番だ。人族とは違う時の流れで生きることになったことは周知の事実。


「ユーフィアさん。それ嫌味が混じっていることに気がついています?」


「え?」


「女神ナディア様は先程言ったようにラース様しか興味がありません。そのナディア様にどれほどの供物を捧げて、その美を保っているのかと言われたのではないのですか?確かにナディア様の神殿はいつも供物に満たされておりますし、ラースの一族は普通の人族より長命で老いも緩やかだと言われていますから、否定することではないですが」


 シェリーの言葉に思ってもみなかったという表情をするユーフィア。供物にどのような物があるかの噂を女神ナディア自身から面白おかしく聞かされたシェリーとしては、その内容には触れないでいたが、ナディアの赤から、若い娘の血を捧げればいいだとか、赤子を供物として捧げればいいだとか、グロい噂もあるのだった。誰に言われたかは知らないが、人族であるユーフィアが老いないことへの嫉妬から出た言葉だったのだろう。

 そして、シェリーとユーフィアが話している内容を聞いて、機嫌の悪い者たち(・・)がいる。


 ユーフィアが嫌味を言われていることをたった今知ったクストと、なんだかんだと言って番同士の羨ましい関係を見せつけられたカイルとグレイだ。そう、ユーフィアとクストは『番の儀式』を行い種族の壁を超え、共に過ごす時を合わせたのだ。

 一度カイルはシェリーに対して望んだ。『番の儀式をして欲しい』と。しかし、シェリーはその言葉を笑殺(しょうさつ)したのだ。それになんの意味があるのかと。


「ユーフィア。ユーフィアにその話をしたのは誰だ?」


「え?誰だったかしら?」


 ユーフィアはクストが機嫌が悪いことを察してとぼけるような言葉を言った。その向かい側では、カイルがシェリーの手を取って囁いていた。


「シェリー。「しませんよ」」


 しかし、カイルが何かを言う前にシェリーの否定の言葉がかぶさってきた。


「でも、シェリー」


 今度はグレイが声をかけてきた。しかし、シェリーはグレイを睨んで一言ですます。


「却下です」


 何も言っていないにも関わらず、シェリーは否定の言葉を口にした。


 二組の番同士の姿にこの場に控えいていた狐獣人のセーラはワクワクとした感じで観察しており、金狼獣人のマリアはクストと同じくユーフィアに対して悪意を持つ言葉を言った者は誰だとイライラしていた。


 なんとも言えない空気になったところに地響きが屋敷を揺らし、緊張感が一気に高まったのだった。


 その地響きにマリアが『ここでお待ち下さい』と言葉を残したまま応接室を出ていき、セーラは窓の外を見ていた。


「旦那様!地下牢がある建物が崩壊しております!」


 地下牢。恐らく今回問題を起こしたエルフの女性を閉じ込めていたのではないのだろうか。そこが上の建物ごと崩壊したというのだ。いったい何が起こったというのだろうか。



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