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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
25章-3 冬期休暇-火種は既に落とされていた

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「私はシェリーさんから話を聞かされたとき、可哀想だと思ったのです」


 ユーフィアは渡された木の板の魔道具の話ではないことを話しだした。シェリーから聞かされた話とはどのことを言っているのだろう。


「きっと私のように脅されて悪意あるモノを作らされているのでしょうと。私は僅かでも抵抗を試みて、解除する方法を陣の中に織り込んで見たものです。ですが、あの奴隷の制御石にしても、この魔道具にしても揺らぎというものが一切見られないのです」


 ユーフィアはそう言って、木の表側に当たる2つの陣を指し示した。


「まだ、不出来ではありますが、制御石に支配された者がこの上に立てば、この上から離れられないとなっています。ここに命令を完了すれば解除されるという文言すらないのです。そして、一定時間が立てば、制御石をエネルギー源として自爆する。しかし、自爆の術式が陣に歪みを与えているので、発動はしませんが、これはもう、悪意しか見られません」


 ユーフィアは人の心の良心というものが、作られた魔道具の中には見ることができないと言っているのだ。使用者に対してほんの少しでも気遣いというものが見られないと。

 灰色の制御石は解除されても精神の奥深くに入り込んだ楔を普通では取り除くことができなかった。

 己を慕っているエルフ族の女性を固定型の転移門の扱いをしている。今は生かされているが、本来ならその場で始末されてもおかしくはなかったのだ。

 そして、今回シェリーが持ってきた魔道具は炎国とギラン共和国を行き来する船を強襲するために、奴隷を単独で船から海上に飛ばし相手の船に侵入させ自爆させる。人の命などゴミクズと同じだと言わんばかりの所業だ。


「私は一度、その方と話をしなければと思ったのです。これは貴方の意志ですかと。こんな私が言うのもなんですが、魔道具は人々を笑顔にさせるために在る物だと考えています。貴方にとって魔道具とはなんでしょうかと」


 その言葉の中には同情心を持っていたものの、苦悩も焦心も後悔も見受けることができず、ただ善がりと狂気と驕りの鱗片しか見いだせない物にユーフィアは己の在り方を彼の者に問いたいのだろう。


「それをユーフィアさんが決めらたのであれば、私が言うことは何もありません。それで、その特攻物に乗った方々がユーフィアさんが作った結界を通ると制御石から解放されたそうですが、そうであれば、説明書に書いていただいた方が助かったと思うのです。ザックさんが大変困惑しておられました」


 するとユーフィアはああと思い出したかのように両手を叩いた。


「それも仕込んでおりました。忘れていましたわ。船には沢山の奴隷の方々がいらっしゃるので運が良ければ解除出来るように仕込んでおきましたの」


 本当に忘れていたようだ。恐らくどう攻撃力を『アルテリカの火』に持たせて、力を増大させるかに力を入れたために忘れさられていたのだろう。


「まぁ、ザックさんはお困りでしたが、お陰様でわかってきたことがありましたので、師団長さんに報告をしておこうと思ったのです」


「なんだ?」


 クストは言葉はいつもどおり不機嫌そうではあるが、ユーフィアを抱き寄せて尻尾を大いに振っていた。とても機嫌がいいようだ。


「今回騒動があったエルフの女性が関わっていたモルディールの辺境都市で行われていた大規模実験で使われていた灰色の制御石の現状の使われ方です」


 クストはエルフの女性という言葉にピクリと反応した。それに対しシェリーは直ぐに言葉を紡いた。


「例のエルフの女性をどうするかはナヴァル公爵様にその采配をお任せします。思っていたより帝国の内情が悪いようで」


 シェリーは珍しくクストの事をナヴァル公爵と呼んだ。師団長としてではなく、公爵家の当主としての対応を求めたのだ。これはナヴァル家の中で起こった事件だと。それにどんな意味が込められているのか。


「帝国の内情ってなんだ?そんな情報が入ってきたのか?」


「いいえ。以前お話をしていた件です。ギラン共和国に次元の悪魔が現れたという話です」


「あ?それは帝国と全く関係ないだろう?」


 このように聞けば次元の悪魔と帝国は全く関係がない。それはそうだ。悪魔を統率出来るのは魔の王の存在のみだからだ。


「ギラン共和国に現れた次元の悪魔はマルス帝国に隣接する北の国境から侵入していたのです。そして、その数が尋常でなかったのです」


「ちょっとまってくれ、それはおかしな話だ」


 クストはシェリーの話を遮って止めるがシェリーはクストに対して右手を上げて、手のひらをクストに向けて言葉を止める。


「最後まで聞いてください。いいえ、見てもらったほうがいいですね。少し情景を変えますが驚かないでください『夢の残像』」


 シェリーはそう言って『夢の残像』のスキルを発動した。それは過去の映像だった。

 室内だった場所はいつの間にか荒野の大地が広がり、頭上にはどこまでも続く蒼天が広がっていた。突然の変化にクストは立ち上がって周りを見渡しているが、ユーフィアはキラキラした目でその風景を見ていたのだった。



章編成を少々変更しましたが、内容に変更はありません。

もう少しで区切りは付きそうなのですが、あまりにも25章が終わらな過ぎて、もう少し細かく分けました。

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