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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
25章-3 冬期休暇-火種は既に落とされていた

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「え?人工魔眼がどんな感じですか?」


 翌朝、朝食を食べているルークにグレイが聞いたのだ。魔眼の耐性をつけるのに使った人工魔眼とはどういうものなのかと。


「楽しかったですよ」


 ルークはニコニコと笑顔を浮かべ答えた。そう、シェリーとは真逆の表情をして答えたのだ。


「もう少し具体的に教えてくれないか」


「んー。ルールを決められたゲームに逆らう感じですかね」


 言葉としては耐性を得る行動としての理を捉えていた。強制される行動に対して抵抗する。それをルークはルールを決められたゲームに逆らうと表現したのだ。

 恐らくオリバーは子供にも受け入れやすいように、調整したのだろう。しかし、それぐらいであれば、シェリーが嫌そうな顔をすることも無いはずだ。


「あ!もう行かないと」


 そう言ってルークは席を立つ。剣の師であるライターの元に向かうためだ。


「姉さん。いってきます」


 その言葉を聞いたシェリーが、キッチンから慌てて出てくる。


「ルーちゃん。気をつけて行くのよ。知らない人には付いて行っては駄目よ。ライターさんにいじめられたら奥様に告げ口をすればいいからね。それから、お弁当と水筒ね」


 シェリーは肩掛けの鞄をルークに差し出した。一部おかしな言葉が混じっていたが、シェリーの言葉は母親が子供を送り出しているようにしか聞こえない。


「うん。ありがとう」


 シェリーのおかしな言葉もルークにとってはいつものことなので、スルー(りょく)は鍛えられていた。


 ルークは肩掛けの鞄を受け取ってダイニングを出ていく、その後ろからスーウェンが付いて行っていたが、そのスーウェンの腕を掴んでグレイが引き止めたのだ。


「なんです?」


 スーウェンはライターの元で剣術とまではいかないが、基礎体力を上げる訓練を受けているのだ。だから、ルークと共に屋敷を出ていくのが、ここ数日のスーウェンの行動だった。なのに、グレイがスーウェンを引き止めたのだ。


「今日はちょっと付き合ってくれないか?」


 グレイが真剣な目をしてスーウェンに今日の予定を変更して欲しいと言う。


「はぁ、すみません。ルーク君。ライターさんに今日は行きませんと言ってもらえますか?」


 スーウェンが一緒に行けないことをルークに言うとルークは頷いて、そのまま扉の向こうに消えていった。そして、グレイはダイニングテーブルに向かって行き、頭を下げて願い出る。


「人工魔眼を使わせてもらえないでしょうか?」


 朝食という名の夜食を取っていたオリバーに頭を下げたのだ。そう、ここにオリバーは居たのだ。一日の内一度は家族で食事を取るというシェリーとの約束を律儀に守っていたのだ。

 本人がいるのであれば、本人に聞けばいいものを····いや、シェリーの嫌そうな顔を見て、本人に聞く勇気がなかっただけだった。


 陽子のダンジョンに押し込められたSクラス級の人工生物しかり、英雄級の中身がない鎧しかり、普通という概念を何処かに投げ捨ててしまったかのような、逸脱したモノを作っているオリバーのことだ。人工魔眼もろくなものではないと考えても仕方がないことかもしれない。


「構わないが、1〜5のどれがよい?」


 今日は機嫌がいいのか、使って良い許可は出たものの、何かわからない選択肢を迫られてしまった。これはどういうことだと、グレイはシェリーの姿を探すも、シェリーはキッチンの奥に姿を消してしまったため、当てにできそうにない。


「因みにその数字の意味はなんでしょうか?」


 グレイは恐る恐る聞いてみると、オリバーは珈琲を飲みながら端的に答えた。


「力の強さだね。1が弱く5が強い。ただそれだけだ」


 思っていたより普通の答えだった。シェリーと息子のルークに使わせるために作ったのであれば、そんなに変な物は作らなかったのだろう。


「1でお願いします」


 グレイはオリバーが力が弱いと言った『1』を選択した。まぁ、初めてというのであれば、無難な選択肢だ。



 そして、裏庭にシェリーとシェリーのツガイの5人がいた。オリバーは就寝時間のため、シェリーに任せると言って地下に戻っていったのだ。

 任せられたシェリーの手の上にはスズメに似た鳥の様なモノが一羽いた。スズメに似た鳥。これは外見がスズメのようだという意味だ。

 茶色の斑模様の背中と翼。お腹は白く手のひらに乗るサイズ。ここまではいい。ただ、頭部の殆どが眼球だった。くちばしも無ければ、黒い頬もないのだ。


 その鳥と言っていいかわからない物体を持つシェリーの表情は凄く嫌そうだった。頭部が眼球だと言っていい物体を手に持つのは忌避感が半端ないのかもしれない。


「始めます」


 シェリーがそう言えば、スズメもどきは『チュンチュン』と鳴いた。くちばしが無いのにも関わらず鳴いたのだ。すると地面に座り込む者たちがいた。


「え?何をしているの?」


 カイルは目の前で起こっていることに、戸惑いを見せた。


「なぁ、シェリー。これって草むしりをしているようにしか見えないのだけど?」


 グレイが困惑をしながらシェリーに聞いてきた。シェリーはスズメもどきを手に乗せたまま答える。


「この裏庭の草が無くなるまで、草むしりを続けます。因みにこの命令は一番最初から変わりませんので、私がして欲しいと思っての行動ではありません」


 そう、オルクスとスーウェンとリオンはしゃがみ込んで庭に生えている草を抜いていた。

 恐らくスーウェンとリオンは立場的にそのような事は人生で一度もしたことがないだろうという行動だった。だから、敢えてシェリーは自分の意思が組み込まれたものではないと否定したのだった。




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