表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
25章-3 冬期休暇-火種は既に落とされていた

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

489/861

480


「はぁ、下手をすると死ぬとは言いましたよ」


 ため息混じりで、シェリーは答えた。シェリー自身は説明したと。魔眼を使うことにより不具合が起こるであろうと。


「え?いや、それもなんだけど、魔眼にはランクがあるという話」


「私の魔眼は大公閣下と同等の評価だと言いました」


 そう、シェリーはその事も説明はしていたのだ。それでも使って欲しいと言ったのはリオンの方だ。


「あー。普通は人族以外の種族にラースの魔眼を使用することを禁じているということは?」


 シェリーは確か炎王に幾度となく魔眼を使用していなかっただろうか。


「····そんなことも言われましたね」


 指摘されて思い出したかのように、シェリーは呟いた。


「リオン。普通は魔眼の抵抗力を上げる為にラースの魔眼以外の魔眼持ちにお願いするのが一番いいやり方だと俺は教えてもらった。討伐戦時はそんな悠長なことを言っていられないから仕方がなかったとオーウィルディア様が言っていたけど、そうじゃないのなら、他の魔眼持ちにお願いすることだ」



 グレイはリオンが行ったやり方は普通のやり方ではないと指摘したのだ。しかし、この言葉はリオンが魔眼に対して抵抗力を持とうとしたのだろうとグレイが勘違いして出た言葉に過ぎなかった。


「いや、俺はラースの魔眼が最大限の力を引き出してくれると聞いたから、使って欲しいと言ったのだ」


「何だそれ!!俺にも使って欲しい!」


 食事の手を止めて、カイルの膝の上に座っているシェリーの方を向き、目を輝かせたオルクスがシェリーの手を握って懇願してきた。

 シェリーが考えていた通り、若干1名がリオンの言葉に反応したのだった。


 そのオルクスの手をカイルがはたき落とす。


「カイル!戻ってからもシェリーを独り占めしているクセにこれぐらいで目くじら立てるな!」


 手をはたき落とされたオルクスは、フーッという威嚇音を交えながら、カイルに文句を言う。しかし、独り占めと言っても昼間はカイル以外シェリーの側にいる者はおらず、必然的にカイルだけがシェリーの側にいることになっているだけだった。


「オルクス。それは悪手だ。最も最悪な選択だ」


 カイルに噛み付くように文句を言っているオルクスに対して、グレイは若干青ざめた顔色をして諌めた。そして、横目でリオンを見ている。本当にそんな理由でシェリーに魔眼を使って欲しいと言ったのかと、視線で訴えているようだ。


「はぁ、それはリオンが悪い。最悪だ。よく言われた言葉があるんだ。女神ナディアは己の血族以外には厳しいと」


 確かに女神ナディアの中で一番優先するべきことは夫であるラースであろう。その次となるとその血を受け継ぐ子孫となることは容易に理解できる。


「リオンが言っていたようにラースの魔眼は最大限の力を引き出してくれると聞いている。だけど、リオンに起こった状態に対してシェリーもカイルも説明してくれなかった。説明をしたくなかったんだろう?内側から肉体を破壊されながらも剣を振るい続けるリオンの姿なんて」


 グレイはその場で見ていたかのようにリオンの身体に起こった状態を正確に言い当てたのだ。


「一度、幼い頃に父から見せられたんだ。確か罪人の獣人でいい機会だから魔眼というものはどのような物か知っていおくようにと。彼は普通の獅子獣人だった。だが、父が魔眼を使った途端、獣化したんだ。だけど、そのまま身体が膨れ上がって、最後には爆ぜて絶命した。父は女神の魔眼によって強制的に力を引き出されたが、身体が内側からの力に耐えきれなくなったといっていた」


 ミゲルロディアは魔眼の恐ろしさを教える為に、行ったようだが、それはトラウマになるレベルではないのだろうか。


「これは肉体を変化させる種族によく起こることだと。人族はその変化を持つ種族ではない、だから使うとすれば人族に限ると説明してくれたが、それ以来父の魔眼が恐ろしくてな。なるべく父の視界に入らないようになってしまった」


 完璧にトラウマになっていた。普通のラースの一族は人族なのだ。その中でただ一人の獣人であるグレイ。そんなグレイに獣人は身体の変化によって爆発するような印象を与えたのだ。それはミゲルロディアの視界には絶対に入りたくはないだろう。


「その所為で、魔眼の耐性を得るまでにはならなかったんだけどな」


 グレイは苦笑いを浮かべて自笑した。


「女神ナディアの加護があるから大丈夫だと言われてもな。自分もあんなふうに爆ぜるのは勘弁というのが本心だ」


 そこで、きっと血族以外には女神ナディアは厳しいという話になったのだろう。グレイから聞いた話に、もしかしたらその様になっていたかもしれないリオンの態度は変わりはなかった。


「それはその者が弱かっただけだろう?俺はこうして何事もなくここにいる」


 弱かった。確かにそう言えるかもしれない。シェリーが聖女であり、リオンを何事もなかったかのように元の状態に戻してしまった為に、リオン自身は大丈夫だったという判断をしたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ