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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
25章-2 冬期休暇-旅行先の不穏な空気

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「え?姉さん戻ったら、直ぐに炎国に行くの?」


 ダンジョンから出て、首都ミレーテの観光を数日掛けて楽しみ、そろそろ家が心配だとルークが言ったので、戻った後の予定を話していたのだ。


 ルークが家が心配だと言った理由はもちろん父親のオリバーを心配してのことではない。家の中に蔓延る偶発的産物が我が物顔で、のさばっているだろうという懸念のことだ。


 ルークは戻ったらライターのところで、もう一度基礎から学び直したいと言い出したのだ。ダンジョンでスイからいろんな魔物と戦うように言われ、ライターが以前言っていた意味が今なら理解出来そうな気がするとルークは感じたからだ。 


 その事を姉であるシェリーに言えば、シェリーはこの後に炎国に行くと告げたのだ。


「炎国。僕も一度は行ってみたいな。千年前に出来た国で変わった物が沢山あるって聞いたんだ」


 ルークのその言葉にシェリーは思わずルークの手を取る。


「ルーちゃん。炎国に入るには許可がいるの。それに、今は特に入国制限がかかっているからルーちゃんが炎国に行くのは厳しいの」


「シェリー。別にシェリーの···」


 リオンがシェリーの言葉に対して、口出しをしてこようとしたが、シェリーが無言の圧力をかけ、リオンを黙らせた。いや、リオンとしてはルークを見たままの笑顔をシェリーに視線を向けられて、あまりにもシェリーの笑顔の衝撃に動揺してしまったからに過ぎない。


「そうなんだ」


 ルークは残念そうな顔をする。ルークの中ではシェリーの番に鬼族が居るから入国する許可が出るのだろうと納得していた。以前カイルに言われた炎国の初代炎王と知り合いだという言葉はルークの中では完全に忘れ去られていた。

 ここ数日の出来ことがあまりにも非日常的すぎて、頭から抜けていたのだった。まさか、この非日常的な事が姉であるシェリーの日常だとは思いもよらなかった。


「あのー。私もそのライターという御仁に会いに行ってもいいですか?」


 突然スーウェンが、シェリーとルークの話に割り込んできた。


「あ、別に剣術が使えるわけではないのですが、ヨーコが口うるさく言うものですから。それに、こう体力の差を毎回見せつけられますと···」


 スーウェンは最後の方の言葉を濁したが、種族的にも獣人よりエルフ族の方が体力が劣るのは歴然だ。その代わり膨大な魔力を保有している。種族という壁は越えることのできない差だ。


「じゃ、俺とグレイは嵐牙の青狼に許可を取ってくる」


 オルクスがスーウェンが別行動を取るなら、自分たちもと声を上げた、しかし、それをグレイが止める。


「ちょっと待て、それだと炎国にいる間、シェリーの祝福の影響が出てしまう」


 そのグレイの言葉にスーウェンもオルクスもハッとなり、シェリーを見る。その横にいるルークは何の事だと首を傾げていた。


「それは、大丈夫になりました」


 シェリーは本当に祝福の影響が出ないか確認をしていないにも関わらず、大丈夫だと言い切った。


「「「「え?どういう事?」」」です?」


 4人が一斉にシェリーに詰め寄る。


「オスクリダー様がステルラ様の祝福の光を抑えてくださいましたから」


「それって、いつのこと!」

「シェリー!またあいつに会ったのか!」

「ご主人様。また、神々が訪れたのですか?」

「オスクリダーって誰だ?」


 4人がそれぞれの言葉を言って更にシェリーに詰め寄った。その4人の言葉にシェリーはため息を吐く。


 グレイとスーウェンはまた自分たちが居ない時に神が訪れたことに対して、不快感を顕にしているようだ。

 オルクスの言っているあいつとは白き神のことだろう。

 リオンはそもそも闇の神の名を知らなかった。


「君たちがダンジョンの中を移動している時のことだ」


 彼らの言葉にカイルが答える。そのカイルはシェリーの横に陣取って苦笑いを浮かべていた。結局、彼らがいようが、神の前では(こうべ)を垂れる矮小な存在であることを突きつけられるだけだと、あの時の自分自身を思い出して苦笑いを浮かべたのだ。


「君たちが居ても、神の前では何も出来ないことを再認識するだけだ」


 カイルのその言葉に4人はハッとなる。所詮白き神の前で立っていられたのは、白き神から称号を与えられた者達だけだったと思いだしたのだ。


 聖女ラフテリア

 剣聖ロビン

 そして、『異界の聖女の守護者』の祝福を持つオリバーだけだった。


「モルテ王の事でシェリーに感謝していると。それで、シェリーの強すぎる祝福の一部を抑えてくれた」


「一部?」


 グレイがカイルの言葉に疑問を呈する。


「恐らくですが、黒髪でいることが強制されているのでしょう」


 オクスリダー神は言っていた。ステルラの願いはそのままにという言葉。シェリーと同じ黒髪を持つ女神ステルラの人々の黒色に対する認識を改めるようにという願いは残すとシェリーはオスクリダーの言葉の意を汲んだのだ。

 しかし、カイルはシェリーの言葉を否定した。


「シェリー。女神ステルラは人々からシェリーを守ると言ってくれたんだよね?だったら、女神ステルラの願いはシェリーの心を守ることだったんじゃないのかな?」


 そう、女神ステルラは言っていた。


『恐れる事は何もありません。貴女は貴女のまま、すべきことを成せばよいのです。わたくしはこの美しい世界を人々を愛しています。

 どんなに愚かな者でも全ての者に道を示すのがわたくしの使命。そのわたくしが貴女に祝福を贈りましょう。

 夜の闇は全ての者達に安らぎを与え、愛を包み込むように、穏やかな心を与えます。人の心が貴女を傷つけることはもうありません。星の女神ステルラより貴女に祝福を』




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― 新着の感想 ―
[良い点] カイル、ナイス指摘(๑•̀ㅂ•́)و✧他の彼らもだんだんいい感じに成長しそうな雰囲気になってますね(^-^) ルーク君が素直で可愛いです♪反抗期な歳頃だと、ずるい、とか正当な理由があって…
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