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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
25章-2 冬期休暇-旅行先の不穏な空気

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 人族、獣人、そして魔物に分類されるゴブリンやオーク、オーガなどが甲冑を身にまとい、様々な武器を手に持ち、ミイラの兵の大群と武器を交えて戦っている。

 さながら戦場の様相だ。しかし、問題はこの場に生きている者はたった二人しかいないと言うことだ。

 亡者対亡者。その間を縫うようにシェリーとカイルは駆けて行く。行く手を阻むモノがあれば敵味方構わず伏していっている。


 その戦場を半分ほど駆けてきたぐらいだろうか、空が陰り視線を上げると空を飛ぶ巨大な物の姿が目に入る。


「砂竜か」


 そう呟いたカイルが大剣を振るえば、首と胴体が切り離され、亡者の戦場に落ちて行く。瞬殺だ。相手にもならない。


 盲者の海に砂竜の襲撃、砂の中からのワームの強襲、砂狼の猛襲をものともせずに、黄金に輝く宮殿が奥に光っている場所までシェリーとカイルはたどり着いた。

 10キロメル()の距離を駆けてきたにも関わらず、二人は息一つ乱れてはいない。流石、裏ダンジョンを制覇した二人である。


 二人の前には巨大な門が立ちはだかっている。屍の王が治める死の街に入る外門だ。しかし、シェリーもカイルも歩みを止めることもなく、シェリーは拳を握り込み、左側の一枚岩で作られた外門の扉をぶち壊し、カイルは大剣で右側の扉を断ち切り進んでいく。


 二人の息はぴったりと言っていいほど合っていた。流石、何度か組んだことがある二人だと言えばいいのか。カイルがシェリーの意を汲んでいるのかわからないが、進むペースに乱れはなかった。


「『亡者(ドール)の強襲レベル10』」


 この場でもシェリーはスキルを使用した。地面から這い出てくる亡者たち、建物の隙間から列をなして向かってくる武装したミイラの兵。こころなしか、砂漠に現れたミイラの兵よりも質がいいように思える。


 亡者の海の中、王宮まで一直線に向かっていたシェリーとカイルが突然立ち止まり、武器を正面に向けて構えた。そこに何がいるのかと言えば、ただミイラの兵の集団が正面に壁のように立ちはだかっているだけだ。シェリーとカイルが警戒する程ではない。


 いや、そのミイラの兵の壁をかき分けて現れた存在がいた。


「フォッフォッフォ。正面から堂々と侵入してくるとはのぅ」


 ここの王宮を護る者の言動ではあるが、その姿は、異様であった。

 見た目は老人のように筋張って枯れ枝の様な体つきだが、肌は黒く、その黒い肌に這うように青い血管のような紋様が浮き出ている。


 悪魔だ。それも完全体の悪魔だ。


 肌を刺すような殺気。息を吸うのもままならない圧迫感。


「そんな者たちは互いに殺し合うが良い」


 枯れ枝の様な老人の黄金の目が不気味に輝く。シェリーとカイルに互いに殺し合うように魔眼を使い命じたのだ。


 しかし、シェリーはそんな魔眼の(めい)に従うことなく、悪魔に向かい黒刀を振るう。


「ほぅ」


 悪魔は己の魔眼に従わず向かってくるシェリーに感心したように声を漏らした。そして、右手を掲げシェリーの黒刀を受け止める。

 次元の悪魔を斬ったシェリーの黒刀を受け止めたのだ。


「ちっ!」


 シェリーは思わず舌打ちをし、距離をとる。


「『聖人の正拳』」


 スキル 

  聖人の正拳


 聖女が敵と認識したもの又は聖女に敵意をもったモノの基礎能力を読み取り、倍の力を身体に宿すことができる。ただし、敵を目視しなければならない。



 そして、再び黒刀を悪魔に向けて振り下ろすも半分ほど腕を斬りつけただけで、それ以上の刃が進む事はなかった。

 まただ。また、悪魔に対してはスキルが通じなかった。


「ほぅ。これはこれは」


 枯れ枝の様な老人はさもおかしなことだと、シェリーに向けて笑んだ。その異様な笑みにシェリーの肌は粟立ち、再び距離を取る。

 シェリーはこの目の前の存在に対してどうすれば活路を見出だせるか考えを巡らすのだった。



 その頃、カイルは己自身と格闘していた。周りは亡者たちが戦っている喧騒の中、シェリーを敵だと認識する己と、シェリーは番だと守るべき存在だと主張する己とだ。


 オーウィルディアに稽古をつけてもらった時には魔眼の力を受け流すことは出来ていたはずだが、所詮手加減されていたということなのだろう。


 カイルは右手に握っている大剣に力を込めた。




「さて次はこちらから行くとするかのぅ」


 枯れ枝の様な老人の悪魔はシェリーに向けて、拳を振るった。ただ振るっただけだった。しかし、シェリーは悪寒を感じ、その拳を大きく避ける。そこまで避ける事はないだろうと言うぐらい大きく距離を取ったのだ。


 その拳を振るった空間が歪み、空間が裂け、街の建物を破壊しながら衝撃波が貫いて行った。

 衝撃波の跡は何も存在しなかった。



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